元夫に居場所を知られずに「生活保護」を受給できますか?DVが原因で離婚しました…

「扶養照会」とは?

生活保護の受給要件の一つに「親族などから援助を受けられる場合は、援助を受ける」というものがあります。

生活保護法第四条では「親族など扶養義務者からの扶養は保護に優先して行われるもの」とされており、生活保護を申請する前に、親族などから援助を受けられないかどうかを確認するための「扶養照会」が行われます。

厚生労働省によると、生活保護の申請が行われた場合には、まずは申請者への聞き取りなどにより、扶養義務者の存否が確認され、存在が確認された扶養義務者については、扶養の可能性の調査が実施されるということです。

この可能性調査により「扶養義務の履行が期待できる」と判断された場合は、関係先などでの重点的な扶養調査が行われます。

離婚した相手が扶養照会の対象になることはあるのか?

民法第八百七十七条によると「扶養義務者」に該当するのは直系血族および兄弟姉妹であり、特別な事情があるときは、三親等内の親族にも扶養義務が生じるとされています。

つまり、離婚した元配偶者は扶養義務者に該当しないため、生活保護を申請しても、元配偶者のもとへ扶養照会の案内がいくことはないと考えてよいでしょう。

ただし、申請者の子どもにとっては、元配偶者は扶養義務者に該当するため、子どもを通じて居場所が知られてしまう可能性はあるでしょう。

そのため、DV(ドメスティック・バイオレンス)が原因で離婚した元配偶者に居場所を知られたくない場合は、扶養照会が行われないようにする必要があります。

扶養照会は拒否できるのか?

扶養照会の際には、申請した福祉事務所の所在地が扶養義務者に伝わります。元配偶者からDVを受けたことで離婚した場合には、扶養照会が行われることで居場所を知られてしまい、危険な目に遭うことも考えられます。

厚生労働省によると、このような事情がある場合は「扶養義務の履行が期待できない」と判断されて、扶養照会は行わないことがあるということです。生活保護申請時には、扶養照会を拒否したい旨を理由とともに伝えましょう。

事情によっては生活保護申請時の扶養照会が行われずに済む

生活保護を申請する際には「親族などから援助を受けられる場合は受ける」という条件があります。

そのため、扶養義務者に該当する親族などに扶養照会が行われることがありますが、「DVが原因で離婚したので、元配偶者に居場所を知られたくない」といった事情があるときは、扶養照会が行われずに済む可能性があります。

扶養照会を拒否したい場合は、福祉事務所の担当者に相談してみるとよいでしょう。

出典

厚生労働省
生活保護制度
[事務連絡 扶養義務履行が期待できない者の判断基準の留意点等について
2 扶養に関する調査の手順(2ページ)
3 扶養義務履行が期待できない者の判断基準(3ページ)
4 当該扶養義務者に対し扶養を求めることにより明らかに要保護者の自立を阻害することになると認められる場合の取扱い (4ページ)](https://www.mhlw.go.jp/content/000746078.pdf)

デジタル庁e-Gov法令検索
生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号) 本則 第一章 総則(保護の補足性)第四条第2項
民法(明治二十九年法律第八十九号) 本則 第四編 親族 第七章 扶養 (扶養義務者)第八百七十七条

特定非営利活動法人POSSE 生活保護Q&A 生活保護や福祉制度にまつわるよくある疑問にお答えします。 DVなどの事情により、親族に今の居所が知られてはいけない状況にある。福祉事務所が行う、親族への扶養照会を拒んだり、居住地を知らせないようにすることは可能か?

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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