「塾代の格差」は「教育格差」? 年間どのくらい負担すれば「普通」なのでしょうか?

学校外活動費=塾代ではありません!

学校外での教育活動にどれくらいのお金をかけるのかは、家庭の考え方により異なります。では、平均的な金額はいくらになるのでしょうか。文部科学省の「令和3年度 子供の学習費調査」によると、学校外活動費の年額は以下の結果となりました。

__幼稚園(公立/私立):9万555円/14万4157円
小学校(公立/私立):24万7582円/66万797円
中学校(公立/私立):36万8780円/36万7776円
高等学校(公立/私立):20万3710円/30万4082円__

公立小学校では月あたり約2万円、公立中学校では月あたり約3万円を支出していることが分かります。しかし、学校外活動費に含まれるのは塾の月謝だけではありません。

学校外活動費の内訳とは?

学校外活動費には、家庭学習で使用する学習机や参考書の購入費も含まれます。このほか、スポーツや英会話、芸術鑑賞といった習い事や教養活動にかかる経費も学校外活動費の一種です。先の金額は全学年での平均値なので、受験生はそれ以上の教育費がかかることが予想されます。

学校外活動費の平均値と各家庭での考え方

前述した調査結果では、私立小学校の学校外活動費が約66万円ともっとも高い数値を示しました。私立小学校の学費を支払う余裕のある家庭が中心なので、学校外活動費にも多額のお金をかける結果になったと考えられます。

ただし、文部科学省の「令和5年度 学校基本統計(学校基本調査の結果)」より、私立小学校の在学率は約1.3%と低いことが分かるため、例外ケースとみなしてよいでしょう。

このことから、大部分の家庭において教育費が増大するのは、中学受験もしくは高校受験以降のタイミングと判断できます。では、中学進学以降の学校教育費を見ていきましょう。「令和3年度 子供の学習費調査」によると、中学校・高等学校の学習費総額は以下の通りです。

__中学校(公立/私立):13万2349円/106万1350円
高等学校(公立/私立):30万9261円/75万362円__

公立は学費を安く抑えられますが、勉強に力を入れるなら塾代が発生する可能性があります。それに対して、私立は学費が高くなるものの「塾いらず」をうたう学校も珍しくありません。そこで、塾の月謝にかかる予算を学費に回して私立へ進学する考え方もあります。

塾代が教育格差につながるのか?

公立の小中学校は入学試験がないので、在籍する生徒間の学力差は大きくなりやすいです。学力の高い生徒と低い生徒を同じ環境下で指導するのは難しく、学校のレベルから外れた生徒は塾に頼らざるを得ない場面もあるでしょう。

しかし、自費で私立や塾に通えなくても、教育格差を埋める方法はあります。そこで、公立や自治体がおこなっている取り組みを見ていきましょう。

AIドリルを活用した自主学習

公立でも少人数クラス編成による指導や、ICT機器を活用した習熟度別の学習が活発におこなわれています。

例えば、東京都世田谷区では全小中学校にAIドリル(Qubena)を導入し学習の個別最適化を実現しました。自由に戻り・先取り学習できるため、塾に通えない生徒でも自分の学力に合ったレベルで学習を進められます。

無料学習塾・スタディクーポン

無料学習塾やスタディクーポン(塾や習い事代に使えるクーポン)など、自治体が主導する教育格差解消の取り組みがあります。

例えば、東京都足立区では成績上位にありながら家庭の事情で塾に通えない中高生を対象とした無料学習塾(足立はばたき塾・足立ミライゼミ)を開催しています。難関校への合格実績もあり、普通の塾と遜色ない学習サポートを受けられるのが特徴です。

こういった自治体が提供する支援事業を活用すれば、学校外活動費にお金をかけられなくても適切な学習環境を得ることが可能です。

まとめ

塾代や私立の学費を支払えるかどうかが、子どもの教育格差につながる側面は否定できません。しかし、公立でも生徒の学力向上につながるさまざまな取り組みをおこなっています。塾代が負担に感じられるときには、まずは通学先や自治体でおこなわれている支援の有無を確認してみましょう。

出典

文部科学省 令和3年度 子供の学習費調査
文部科学省の 令和5年度 学校基本統計(学校基本調査の結果)
世田谷区 (仮称)世田谷区教育の情報化推進計画
足立区 足立はばたき塾
足立区 難関大学合格を目指す「足立ミライゼミ」

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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