【登山】エベレストの「デスゾーン」とは?標高8,000m以上が危険なワケ

世界最高峰として知られる標高8,848mのエベレストは、過去70年間で6,000人超が登頂したとされています。しかし、登山における標高8,000mを超えた地帯は「デスゾーン」と呼ばれ、人間が生存できない死の地帯が広がっています。今回は、そんなデスゾーンにフォーカス。どのような危険があるのかご紹介します。

エベレスト

地球上に8,000mを超える山は14座ある

K2

いわずと知れた世界最高峰「エベレスト」をはじめ、世界第2位の標高を誇る「K2」、ネパール東部とインド・シッキム州の国境に位置する「カンチェンジュンガ」など、8,000mを超える山、14座はすべてヒマラヤ山脈とカラコルム山脈にあります。世界で最も高い山々が連なっていることから、この山脈地帯は“世界の屋根”とも呼ばれています。

【標高1位】エベレスト(8,848m)

【標高2位】K2(8,611m)

【標高3位】カンチェンジュンガ(8,586m)

【標高4位】ローツェ(8,516m)

【標高5位】マカルー(8,463m)

【標高6位】チョー・オユー(8,201m)

【標高7位】ダウラギリ(8,167m)

【標高8位】マナスル(8,163m)

【標高9位】ナンガ・パルバット(8,126m)

【標高10位】アンナプルナ(8,091m)

【標高11位】ガッシャーブルム1峰(8,068m)

【標高12位】ブロード・ピーク(8,051m)

【標高13位】ガッシャーブルム2峰(8,034m)

【標高14位】シシャパンマ(8,027m)

8,000m以上がなぜ「デスゾーン」と呼ばれているのか?

前述した14座を登頂するためには、デスゾーンに突入するしかありません。デスゾーンとは、山の標高8,000m以上の地帯のこと。しかし、なぜ8,000m以上はデスゾーンと呼ばれているのでしょうか? ここからは、その主な理由を3つご紹介します。

年間を通して気温が低く、風が強い

8,000m地点の気温は1年を通して低く、0度を上回ることはほぼないといわれています。気象条件によっては、、−60度になることもあるとか。それに加え、これらの山々がある地帯は、緯度30度付近で吹く強い西風「亜熱帯ジェット気流」の通り道となっており、50m/s以上の風速を記録することもあるそうです。

50m/sの風速に、どのくらいの破壊力があるかといえば、老朽化した木造住宅が倒壊したり、多くの樹木が倒れたりするほどです。

気温と風速だけ考えてもデスゾーンだといわれる理由がわかりますよね。そのため、エベレストに登る場合は、亜熱帯ジェット気流が北側にずれるわずかな期間(5月・11月頃)を狙います。

空気の密度が3分の1になる

8,000mの地点は、気圧が平地の3分の1になります。それに比例して空気の密度も3分の1に! 空気に含まれる酸素の量も減るため、酸素ボンベはほぼ必須です。しかし、酸素ボンベも高山ゆえの装備の重量を考慮すると、ギリギリの数しか持っていけません。

そのため、酸素が欠乏して、高山病になる人も少なくありません。高山病になると意識が朦朧としたり、幻覚を見たりすることも。さらに重度になると命の危険もあります。

治療法は下山することですが、ヘリコプターの最大運用高度は6,000m前後といわれており、救助に向かうことも難しいです。ヘリコプターは空気が薄いと、揚力が得られず飛べないのです。

最大48時間しか活動できないとされている

デスゾーンは人が生きていける環境ではありません。訓練を積んだ登山家でも、最大48時間しか活動ができないといわれています。たとえば、エベレスト登頂を目指す日は、7,900m付近にある第4キャンプから体の負担を軽減するため、最低限の装備を身につけて頂上へと向かいます。

深夜に第4キャンプを出発し、午前中に登頂、日があるうちに下山して第4キャンプに戻ります。そうしなければ、人間の体は持ちません。登頂や下山する途中で、天候が悪化したら、事故が起こったら……と考えただけでゾッとしますよね。

[参考]

CASIO|8000m峰14座とは - アンバサダー - PRO TREK – 腕時計

疾患別解説|厚生労働省検疫所FORTH

Red Bull|【注意事項】エベレスト登山に潜む8つの危険

プロ登山家 竹内洋岳 公式サイト

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