小説世界観にひたって 「火口に立つ。」に登場の食堂 日野 17日限定開店、著者が接客

「リバティ食堂」をPRする松本さん(前列右)と出版する会のメンバー=7日、日野町根雨の町文化センター

 日野町出身の翻訳家で批評家の生田長江(1882~1936年)を題材にした小説「火口に立つ。」に登場する「リバティ食堂」が17日、同町根雨で1日限定で開店する。接客は著者の松本薫さん=米子市富益町=が担当。小説の世界観にひたりながら、作者にも会えるユニークなイベントだ。

 作品は、離婚を機に日野町から上京した主人公の南原律が家政婦として生田の家で働きながら自身の自立を考えていく様子を描いた長編小説。生田は、男尊女卑が当たり前の時代に男女同権を訴え、平塚らいてうらに日本初の女性文芸誌「青鞜(せいとう)」の創刊を勧めた。

 生田の生き方に影響を受けながら、自立を目指した主人公・律がたどり着いたのが、多くの人に安くておいしい食事を提供できる食堂。身寄りのない少女、長岡イチとともに、ライスカレーとコロッケがメインの小さな洋食屋を営む。

 イベントは、読者と著者が小説について語り合える場になればと、小説「生田長江」を出版する会が企画。日野ボランティアネットワークのメンバーが協力し、カレーとコロッケのセット(500円)を50食限定で提供する。

 著者の松本さんは「地元の方たちが協力して食堂を出してくださるのがすごくうれしい」と感謝。出版する会事務局の松田暢子さんは「本を読んだときの情景を思いながら楽しんで食べてほしい」と話した。

 ◇「リバティ食堂」は17日午前11時~午後1時、日野町山村開発センター(同町根雨)で開店。同日午後1時半から町文化センター(同)で「小説『火口に立つ。』出版記念フォーラム」を開催。松本薫さんの講演や、米子市在住の歌手、まるやまかよこさんのミニライブなどがある。問い合わせは電話0859(72)1300、出版する会事務局(日野町図書館内)へ。

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