日本映画の躍進

 五島市出身のアニメーション映画美術家で、昨年亡くなった山本二三(にぞう)さんはとりわけ自然の描写で名をはせた。「二三雲」のむくむくとした“質感”や空の美しさに心を奪われた人は少なくないだろう。「天空の城ラピュタ」「もののけ姫」といった名作アニメ作品の美術監督として背景を手がけた▲この2作品の監督は宮崎駿さんで、「風の谷のナウシカ」といい「魔女の宅急便」といい、宮崎アニメは空を飛ぶ場面がことの外、忘れがたい▲その人が制作に7年を費やしたという「君たちはどう生きるか」が、米映画界のアカデミー賞で長編アニメーション賞を受けた。戦時中の日本で少年が不思議な世界に迷い込むこの作品にも、サギが羽ばたく場面がある▲スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーはかつて、宮崎作品に流れる作者の心をこう語っている。「世界は生きるに値する所で、美しいものが必ずある所だ」。心の翼はいつだって持てる。思いは世界に届いたのだろう▲山崎貴監督による「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」は視覚効果賞を取り、日本映画の注目度はぐんと高まっている。巨費を投じなければ大作はできない-という常識を覆した点でも評価を得た▲アニメにCG。日本映画の躍進が次世代に心の翼を与えて、羽ばたく日がきっと来る。(徹)

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