王者ジョコビッチが世界123位にまさかの敗退! 相手に倍のウイナーを許し「僕のレベルは本当にひどかった」<SMASH>

現地3月11日に実施された男子テニスのマスターズ1000大会「BNPパリバ・オープン」(3月6日~17日/アメリカ・インディアンウェルズ/ハードコート)のシングルス3回戦で、世界王者のノバク・ジョコビッチ(セルビア/36歳)がラッキールーザー(予選敗者が繰り上がる措置)の世界123位、ルカ・ナルディ(イタリア/20歳)に4-6、6-3、3-6で敗れる波乱が起きた。

今シーズン最初の四大大会「全豪オープン」準決勝でヤニック・シナー(イタリア/現3位)に敗退して以降、休養のためツアーを離れていたジョコビッチ。インディアンウェルズは新型コロナウイルス・ワクチンの未接種によりアメリカへ入国できず欠場が続いていたため、今回が2019年以来5年ぶりの出場だった。

ジョコビッチにとっては過去5度(2008、11、14、15、16年)の優勝を誇る相性の良い大会。だが不安要素はあった。というのも17年以降はベスト8以上に進出できておらず、今大会初戦(2回戦)も格下のアレクサンダー・ブキッチ(オーストラリア/69位)に勝利はしたものの6-2、5-7、6-3と盤石のスコアではなかったからだ。

ナルディとの初対決では「僕のレベルは本当にひどかった」と振り返った通り、立ち上がりから王者らしい試合運びができなかった。両者共にキープが続いた中での第5ゲームでは40-15からミスを連発してブレークを喫し、そのままセットダウン。

第2セットでは2度のブレークを果たしてセットオールに持ち込むも、ファイナルセットではセカンドサービスでのポイント獲得率がナルディの57%に対して42%にとどまるなど精彩を欠き、第6ゲームで痛恨のサービスダウン。2時間20分でナルディに大金星を献上する格好となった。
この試合でジョコビッチが許したウイナーは自身の17本の倍となる34本。新鋭に屈したテニス界のレジェンドは試合後の会見で勝者を素直に称えつつ、敗戦の弁をこう述べた。

「ラッキールーザーとして出場した彼(ナルディ)には本当に失うものが何もなく、素晴らしいプレーをした。だから僕に勝ったのも当然のことだ。今日は2つのことが重なった。彼が素晴らしい1日を過ごした一方、僕は本当にひどい1日を過ごしたというわけだ。それが僕にマイナスの結果をもたらした」

「結果的に僕は彼が良いプレーができるよう手助けしてしまい、自分自身は全く助けられなかった。本当にひどいミスを幾つか犯してしまった。非常にディフェンシブなテニスをしてしまい、ファイナルセットもショットの感覚が良くなかった。それだけのことだ」

今季は未だツアー優勝がないジョコビッチ。自身でもそれを自覚しているようで、「今年はタイトルがない。それは僕が慣れていることではない。僕はキャリアのほとんどで四大大会(全豪)やドバイ(ATP500)、あるいはその他の大会で優勝してシーズンをスタートしていた」と過去を振り返る。

だが最後には「それもスポーツの一部。ただただそれを受け入れる必要がある。勝つこともあれば負けることもある。失うものだって出てくる。できればもう少し勝っていって、今後もプレーを続けていきたい」とコメント。気持ちを切り替えて巻き返しを図る意欲を示した。

文●中村光佑

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