市区町村の核廃棄物最終処分文献調査 全国知事「賛成」なし 反対5人 7割、態度示さず 国に理解促進求める声

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生13年に合わせ、福島民報社が福島県を除く都道府県知事46人を対象に実施したアンケートで、全国各地の原発で出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定について、自らの都道府県内の市区町村が初期段階の文献調査の実施を検討した場合の賛否を聞いたところ、「賛成」はゼロだった。5人が「反対」し、7割にあたる33人は「どちらともいえない」「その他」のいずれかで態度を明確にしなかった。北海道の寿都町と神恵内村で文献調査が進む一方、「国民的な議論に発展していない」との見方が多く、政府に理解促進を求める声が上がった。「仮定の質問には回答できない」との慎重な意見も目立った。

 最終処分場選定の流れは【図】の通り。文献調査、概要調査、精密調査の3段階で、計20年程度かけて地盤や火山活動の有無などを調べる。初期段階の文献調査から概要調査に移行するには知事と地元首長の同意が必要になる。

 各都道府県知事の回答は【表】の通り。具体的な手続きが決まっていない中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)の除染廃棄物の福島県外最終処分と異なり、既に選定手順が示されている高レベル放射性廃棄物の最終処分場だが、初期段階の検討であっても賛意を示す知事はいなかった。

 「どちらともいえない」と答えた宮崎県の河野俊嗣知事は「調査の実施を検討する市町村の意向に加え、他の市町村や県議会、県民の意見を聞いた上で判断すべきと考えており、現時点での判断は難しい」とした。

 2町村で文献調査が行われている北海道の鈴木直道知事は受け入れに一貫して反対の立場で、アンケートは「その他」と回答した。道には高レベル放射性廃棄物を「受け入れ難い」とする条例があるとし、「寿都町と神恵内村が仮に概要調査に移行しようとする場合には条例を踏まえ、現時点では反対の意見を述べる考えだ」と明示。政府が候補地を絞り込み、自治体や住民に丁寧に説明するといった選定プロセスへの見直しを提案した。

 調査受け入れの動きがみられた長崎県の大石賢吾知事も「その他」を選んだ。同県では昨年9月、対馬市議会が受け入れに意欲を示したが、市長が調査に応募しないと表明した経緯がある。大石知事は「現時点では具体的な判断を行う段階にはないと認識している」と訴え、「政府の責任で慎重に進めてほしい」と求めた。

 「反対」と回答したのは岩手、山形、徳島、香川、鹿児島5県の知事。香川県の池田豊人知事は「広範囲で被害が予想される南海トラフ巨大地震などのリスクがあり、安全性の確保に懸念がある」と説明した。

 最終処分場の選定に向けて政府が講じるべき施策を自由記述で尋ねた。全国知事会長を務める宮城県の村井嘉浩知事は「国民的な議論が必要な問題だ。国が主体となって丁寧な説明を行い、国民や地域の理解を得るために必要な施策を講じるべきだ」とした。

※高レベル放射性廃棄物 原発の使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出す再処理で出た廃液をガラスと混ぜて固めた廃棄物。極めて強い放射線を長期間発し、国は地下300メートルより深い岩盤に埋める地層処分で数万年以上、人間の生活環境から隔離する方針。原子力発電環境整備機構(NUMO)は2002年に最終処分場選定に向けた調査受け入れの公募を開始した。

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