聖地移住「全国に少なくとも200~300人」 研究者「ガルパン」「ラブライブ!」「けいおん!」など影響指摘

聖地移住を研究する千葉さん。後ろに写る鴨川は「有頂天家族」など数多くのアニメ作品の聖地として知られる(京都市左京区)

 聖地移住した人は全国に何人いるのか。京都文教大学地域協働研究教育センター連携研究員で、聖地移住を研究する千葉郁太郎さん(41)は、各地を調査した結果から「統計データはないが、全国に少なくとも200~300人いる」と推定する。

 千葉さんも、アニメ「有頂天家族」や京都アニメーション制作の「たまこまーけっと」への愛が高じて、舞台となった京都市に移り住んだ聖地移住者だ。

 千葉さんによると、「聖地移住」という言葉がツイッター(現X)に登場したのは2012年ごろで、移住者が目立ち始めたのは18年ごろから。人気アニメ「ガールズ&パンツァー(ガルパン)」の舞台で知られる茨城県大洗町や、「ラブライブ!サンシャイン!!」の聖地・静岡県沼津市には「それぞれ100人程度いるのでは」と推定する。

 千葉さんによると、聖地移住が増えた背景には、2000年代に盛んになった聖地巡礼によってファンのコミュニティーが形成され、情報交換が盛んになったことのほか、新型コロナウイルス禍によるリモートワークの普及もあるという。

 「聖地移住者はファンつながりで新たな人を移住させる呼び水となることも多い」と千葉さん。地域おこし協力隊員を経て起業を志す人から熊本さんのように自然体で交流する人まで、地元とのつながりを大事にする移住者も多いという。

 千葉さんは「『よそ者』の視点で地域の魅力を再発見し、地元民のシビックプライド(地域への誇りと愛着)を高める役割も担っている」と、地方創生の観点からも聖地移住の有効性を話す。

 聖地移住は、巡礼に比べ、経済効果も大きい。聖地でイベントを開き、仮に100人の巡礼者が宿泊したとしても、効果は1人最大5万円程度で、100人でも計500万円ほど。交通費など地域に落ちないカネも多い。一方、移住の場合、移住者の年収が300万円としても、地域内で主に消費するため、大半が地元に落ち、毎年続く。「移住者が2年住むだけで、巡礼者100人分を匹敵する」(千葉さん)。

 沼津市では、移住者が移住希望者の相談に乗るグループや居場所を作っている。宇治市に本社を置き、「たまこまーけっと」「けいおん!」など京都府・滋賀県を舞台やモデルにした作品を数多くヒットさせてきた京都アニメーションなど、地方を拠点にしたアニメ制作会社もあり、千葉さんは「アニメをきっかけにした移住者は近畿などでさらに増える。巡礼のイベントを開く際に会場に移住相談コーナーを設けるなど、自治体は聖地移住を後押しすべき」と提言する。

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