5億600万円繰り上げ償還へ…さいたま市立病院、企業債借り入れで「不適正処理」 引き継ぎや理解不足が要因

さいたま市役所=埼玉県さいたま市浦和区常盤

 埼玉県のさいたま市立病院が不適正な事務処理により2022年度企業債を金融機関から借り入れたことが判明し、約5億600万円を繰り上げ償還するよう総務省に指摘され、市は12日、同額の23年度病院事業会計補正予算案を発表した。13日に開会中の市議会2月定例会に提出する。

 同様の理由から、予定していた23年度企業債約12億2600万円の借り入れができないことも判明した。いずれも病院事業会計の内部留保から予算措置する。

 市立病院財務課によると、企業債を民間金融機関から借り入れる場合、総務省に届け出の必要がある。今回のミスは、繰り越し分の企業債の届け出を翌年度に実施していた。市財政課が今年2月に指摘して発覚した。

 届け出をせずに地方債を起こす行為で、総務省からは適正な手続きを経ていないとして、繰り上げ償還するよう指摘された。同様に23年度企業債の借り入れは不可となった。

 病院財務課内の引き継ぎが不十分な上に、制度の理解不足が要因としている。事務手続きのマニュアルを作成するなど再発防止を徹底する。企業債は市立病院の駐車場整備や周産期棟改修工事の事業費に充てる予定だった。内部留保で対応し、業者への支払いや工期の遅れはないという。

 市の予算措置を巡っては、市議会の議決を経ずに債務負担行為を設定していた地方自治法違反の問題が23年9月に発覚している。清水勇人市長は12日の定例会見で、「市民、議会の信頼を損なう結果となり、心からおわび申し上げます。組織的なチェック体制の強化を図り、強い決意を持って再発防止に取り組み、全力で信頼回復に努める」と述べた。

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