はしか「ワクチン2回接種」していれば“心配なし”? UAE便感染者は「接種歴」確認できず

子どもの頃に定期接種を受けた人も多いが…(aijiro / PIXTA)

国内で「はしか」(麻しん)感染拡大の懸念が強まっていることを受け、不安に感じている人も多いのではないだろうか。

はしかは「麻しんウイルス」による感染症で、空気・飛沫・接触によってヒトからヒトへ感染する。潜伏期間は約10日で、発熱やせき、鼻水といった風邪のような症状が2〜3日続いた後、39℃以上の高熱と発疹が出現。先進国であっても、1000人に1人の割合で死亡すると言われている。

その他、脳炎を発症したり、「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」という難病を発症し、数年の潜伏期間を経て高度の認知症や植物状態となり、命を落としたりすることもあるという。

マスク、手洗いでは予防が難しい

はしかの感染対策について、厚労省の担当者は編集部の取材に対し「感染力が非常に強く、新型コロナウイルスのときのような公衆衛生やマスクの着用、手洗いなどで防ぐことは難しい。対策としては、予防接種を2回受けていただくことがもっとも有効です」と説明する。

免疫を持っていない人がはしかに感染すると「ほぼ100%」発症するというが、一度感染して発症した場合、その免疫は “一生持続する”と言われている。また感染・発症していなくても、予防接種によって約95%の人が免疫を獲得できるそうだ。

「免疫の獲得には個人差があるため100%とは言い切れませんが、それでも一般的に、2回接種していればかなり高い確率で感染を防ぐレベルの免疫が得られることが知られています。

仮に感染してしまったとしても、まったく免疫のない方に比べれば軽症に抑えられますし、他の人にうつす可能性も低くなることから、過去はしかに感染したことがなく、予防接種を一度も受けていない方、1回しか受けていない方は、今からでも受けることを検討いただきたいです」(同前)

UAE便、機内感染者の「接種歴」は…

日本は2015年、世界保健機関西太平洋地域事務局によってはしかの排除状態(※)にあることが認定された。これについて厚労省の担当者は「ウイルスが国内に土着しておらず、海外からの輸入例を除けばまん延している状況ではない」と説明し、「だからこそ、海外に行かれるような方には特に『ご自身が免疫を持っている状態なのか』注意してほしい」と続けた。

※ 排除達成の認定基準:適切なサーベイランス制度の下、土着株により麻しんの感染が三年間確認されないこと、又は遺伝子型の解析によりそのことが示唆されることを言います(厚労省平成27年3月27日報道発表資料より)

国内では、先月24日にアラブ首長国連邦(UAE)から関西国際空港に到着した航空機の乗客8人より相次いではしか感染者が確認され、帰国後に公共交通機関の利用などによって不特定の人と接触した可能性もあることから、不安が広がっている。

なお、はしか感染が確認された乗客らのうち、自治体が公表している情報から2回のワクチン接種歴が確認できた人は0人。1回接種は1人、接種歴なしは4人、あとの3人は不明だった。またUAE便搭乗者とは別に、12日に東京都が感染を発表した5歳未満の男児についても、ワクチン接種歴はないとのことだった。

これまで定期接種を逃してしまった人は、自治体の助成によって無料で予防接種を受けられることもある。いたずらに不安がる前に、まずは自身の接種状況と自治体の助成について確認するのが得策かもしれない。

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