災害時の大量ごみどう処理すれば… 京都府・丹波地域の風水害で見えた課題とは

2013年9月の水害後、仮置き場に積み上がった災害ごみ(南丹市園部町黒田)=船井郡衛生管理組合提供

 能登半島地震の被災地で課題となっている倒壊家屋やがれきなど大量の廃棄物処理。京都府の丹波地域でも、2013年や18年の台風で同様の事態に直面した。水に漬かり、地域に積み上がった泥まみれの家財をどう片付けるのか。当時を知る住民の証言や行政の処理計画からは、災害ごみが抱える「迅速な処理」と「分別」のジレンマが見えてきた。

 「3軒に1軒が浸水や半壊。家財一式がだめになって、みんな途方に暮れた」。南丹市園部町横田の松本健さん(74)は振り返る。13年9月の台風18号で園部川が氾濫し、同地区では180軒が被害を受けた。

 住民らはぬれた布団や畳、家電を自宅前にまとめた。同市や船井郡衛生管理組合が災害ごみの仮置き場を園部町だけで5カ所に設けたが、原則は自己搬入だ。軽トラックのある世帯は少ない上、多くは水没。横田区でトラック1台を借りたが「時間がかかりすぎる」と困り果てた。

 だが数日中に、市と協定を結ぶ市建設業協会のダンプカーが「毎日5、6台来てくれた」。それでも作業をほぼ終えるまでに2週間かかったという。

 仮置き場の運営も困難を極めた。国指針は「積極的な分別」を掲げるが、中には真っ黒なヘドロの塊も持ち込まれることもあった。同組合は「日常を早く取り戻したい住民の心情を踏まえれば拒みがたい」と実情を語る。

 迅速な受け入れを重視すれば、チェック体制が犠牲になる。水害と無関係な家庭の粗大ごみや、業者の持ち込む解体ごみにより「本来の1.5倍~2倍に膨れ上がった」。職員総出で分別し、通常の2カ月分に当たる1500トンを処理した。

 亀岡市も、18年の台風21号で600トンが生じた。被災直後に各地域で一時的な集積所が自然発生したが、可燃、腐敗性のごみも混ざり、緊急車両も通りづらくなった。迅速な搬出が求められ、市の設けた仮置き場に移されると、分別を可燃、不燃、粗大、家電などとし、通常の18分類より緩めて対応した。

 それでも、市資源循環推進課は「分別した搬入に協力いただき助かった」とする。混在していると、受け入れ先の業者が仕分けるため「処理が追いつかず、仮置き場での受け入れが止まりうる。普段から分別を習慣づけることが、災害時にもつながる」とする。

 ただ、同市の災害廃棄物処理計画では、市内の埴生断層が動く最大震度7の地震が起きれば、186万トンの排出を見込む。同市の年間処理量は2万3千トンで、81年分に相当する。「自治体や民間の応援がなければ収集、搬入は無理」とする。

 過去とは異なる課題もある。南丹市と京丹波町を所管する同衛生管理組合の職員が減少し、園部町の民間廃棄物処理会社も撤退。地域外への搬出が必要になっている。同組合は「当時より厳しい状況になっている。人員確保が必要だ」とする。

 住民側も備えを進める。南丹市のハザードマップによると、園部町横田区は2階が漬かる水害も想定される。同区防災委員長を務める松本さんは「13年も家を寝られる状態に片付けるのに精いっぱい。住民だけで分別までできない」と話す。

 当時は建設業者や市外のボランティアに加え、被災しなかった区民も復旧作業に尽しており、激甚災害では近隣の助け合いが重要とみられる。同区は新興住宅地が中心で、餅つきや農業体験など「仲良くなる催しを積極的にしてきた。それが災害対策にもなる」。

 

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