内藤剛志が『ブギウギ』の空気を一変 切ない感情をもたらす愛子と一の友情関係

『ブギウギ』(NHK総合)第114話では、スズ子(趣里)のもとに愛子(このか)を誘拐するという電話がかかってくる。電話の主は「警察に言ったら、む……娘、どうなるか分からないぞ!」とスズ子を脅迫した。愛子が学校にもいないことを知り、スズ子は取り乱す。スズ子と大野(木野花)は警察に相談する。

花田家に3人の刑事が駆けつけた。世田谷署のベテラン刑事・高橋を演じるのは、数多くの刑事ドラマでお馴染みの俳優・内藤剛志だ。内藤の登場で『ブギウギ』の雰囲気が一気に刑事ドラマになったのが面白い。

SNS上でも「ブギウギが一気に刑事ドラマに」「内藤剛志さんの刑事役が安定すぎる」「内藤剛志が出てくるだけで、朝ドラが刑事ドラマにしか見えなくなる」「一瞬何観てるのか、混乱しました 」と話題になっていた。内藤が演じることもあってかベテラン刑事の高橋は頼もしく見える。また高橋は、芸能人であり我が子の安否を願う母親であるスズ子やまだ幼い愛子を気遣う。部下の言葉を落ち着いた声色でたしなめ、愛子を怖がらせないよう目の高さを合わせて優しく話しかける姿が印象に残る。

誘拐犯を名乗る男(水澤紳吾)からの電話を受け、スズ子が落ち着いていられない状況にいる中、愛子は一(井上一輝)という男の子と仲良くなる。愛子の誕生日パーティーに行ったというその少年は「いいなあ、あんな母ちゃんがいて」と愛子を羨むが、愛子は「よくない。あんなマミー、嫌や」と心の内を明かした。愛子と一は異なる境遇にあるが、お互いに素直な気持ちを伝え合ったことで距離が縮まり、友情が芽生えた。

このかと井上一輝の自然体な演技は見ていて心があたたまる。一から「じゃあ、明日もここで遊ぶか?」と言われ、「いいの? 遊んでくれるん?」とパッと表情を明るくする愛子も、去り際に愛子から「ありがとう」と言われ、照れくさそうに手を挙げながら去っていく一の姿もかわいらしい。

しかし第114話の終わりはなんとも切ないものだった。スズ子と愛子の心はすれ違ったままだ。そのうえ、愛子が仲良くなった一の父親こそ、誘拐犯を名乗る男であることが明らかになった。一の父親は「もうすぐまともな暮らしができるようになるからな。そしたら服も買って……もう一をバカにさせねえぞ。マンガだって、新しいの100冊ぐらい買ってやんぞ」と微笑む。父の言葉に心の底から嬉しそうな笑顔を浮かべる一の表情が切ない。

(文=片山香帆)

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