桐谷健太、ボロッカスになるまで言われたことも、すべて必然「出会ってきた全員が俺を変えてくれたと思ってます」

桐谷健太 撮影:有坂政晴 ヘアメイク:岩下倫之(Leinwand)スタイリスト:岡井雄介

2002年に俳優デビューを果たした桐谷健太。ドラマ『ROOKIES』の平塚役で知名度を上げ、2015年から始まったauのTVCMソングで歌手デビューも果たした彼は、今年で俳優生活22年を迎える。その彼が、芸能界のトップを目指す中でCHANGEとなった出来事を聞くーー【第3回/全5回】

3月3日から放送・配信スタートのWOWOWドラマ「連続ドラマW 坂の上の赤い屋根」で、女子高生両親殺害事件を追う中で黒い感情に巻き込まれていく編集者を演じている桐谷健太さん。2002年に俳優デビューを果たした桐谷さんは、40歳を超えてから主演作が絶えず、同性も憧れる男気溢れる役どころを魅力たっぷりに演じる実力派俳優として活躍している。

20年以上俳優としてのキャリアを築いてきた桐谷健太さん。上京してから俳優として食べていけるようになったのは20代後半になってからだったという。

「役者一本でやっていけるようになったのは、20代後半くらいですかね。その頃は人気の野球マンガをドラマ化した『ROOKIES』を撮影していました。僕が演じた平塚平は、スーパーポジティブな性格で、とにかくぶっ飛んでる癖の強いキャラクター(笑)。その頃くらいから街でもありがたいことに、“あ! ひらっちだ!”とか、役名や名前で声をかけてもらえることがたくさん増えてきた時期でもありました」

『ROOKIES』でブレイク後、桐谷さんは『流星の絆』のナルシスト役、『JIN-仁-』の江戸時代に生きる若き医師役、『BECK』バンドのボーカル&ラッパー役、『アウトレイジ ビヨンド』のチンピラ役、『インフォーマ』の裏社会に通じる情報屋役など幅広いキャラクターを数多く演じてきた。出演作を通して出会った共演者や監督など、特に大きな影響を受けた人物はいたのだろうか?

「出会ってきた全員が俺を変えてくれたと思っています。お世話になった方や感謝できる人もおれば、ボロッカスに言われて嫌な思いをさせられた人も含めて、すべて必要な出会いだったんじゃないかなと。なぜなら、良いことも悪いことも経験してきたからこそ今の俺があるから。一人一人名前を挙げてエピソードを語りたいぐらいですけど、短い時間じゃ無理だから、今度飲み屋でゆっくり話させてください(笑)」

直感を大切に演じていくようになった

桐谷さんは、現在放送・配信中のWOWOWドラマ「連続ドラマW 坂の上の赤い屋根」で、出版社勤務の副編集長・橋本を演じている。橋本は「女子高生両親殺害事件」をモチーフとした小説の企画を持ち込んだ新人作家と事件の真相を追っていく……。さらに、過去にはその事件の主犯格とされる男の自叙伝の編集も手がけた過去を持ち、どこか内面や本心が見えにくいキャラクター。この役とどう向き合ったのかを明かしてくれた。

「橋本は、見る人によって、一見普通の人に見えたり、どこかミステリアスで何を考えているのかわからない怖い人に見えたりする。そういう人物にしたくて、彼の過去や経験を染み込ませていく中で、通常であれば痩せていてシュッとした見た目の方がハマったりするかもなんですが、橋本に関しては体が大きくてムチッとした体型のほうが不気味さが出るというか、内面とのアンバランスさが奇妙に見えていいかもしれないというその直感を信じて、体重を増やして撮影に挑みました」

あらゆる役で芝居のスキルを培ってきたからこそ、“直感”を大事にすることができたのではないだろうか。

「これまで経験したことが無意識に表現方法として出てしまうことはあると思います。台本を読んで、“この役はこうだ”と直感的に閃く時もあれば、衣裳合わせで衣裳を着た瞬間に“これだ!”とわかることもあって。
ある作品の時なんて、“この役はトカゲっぽいな”と、もはや人間ではないイメージが浮かぶこともある(笑)。なので、作品によってアプローチの仕方は変わるのですが、それは経験や想像、出会った人や景色、昨日何気なく見たニュース、生まれる前から持ってるもの、様々なことが影響しているんでしょうね。そういうのも含めて、自分の直感や感覚を大事に演じていきたいなと思っています」

役との向き合い方やアプローチの仕方を明かしてくれた桐谷さん。真っ直ぐな眼差しと力強い言葉から、俳優という仕事に対する真摯な姿勢と自信が感じられた。

インタビュー:奥村百恵

桐谷健太(きりたに・けんた)
1980年生まれ、大阪府出身。02年俳優デビュー。07年、『GROW愚郎』で映画初主演。20年、ドラマ「ケイジとケンジ~所轄と地検の24時~」で民放ドラマ初主演。近年の出演作に、映画『ラーゲリより愛を込めて』(22年)、『アナログ』(23年)、ドラマ「インフォーマ」(23年)、「院内警察」(24年)などがある。

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