【独自】「後日装備」の海自もがみ型護衛艦搭載VLS、来年度に最初の2隻分が三菱重工から防衛省に納入へ

By Kosuke Takahashi

海上自衛隊のもがみ型護衛艦1番艦(FFM1)の「もがみ」(三菱重工業)

「後日装備」となっている海上自衛隊のもがみ型護衛艦(FFM)搭載の垂直ミサイル発射システム(VLS)の納入時期の全容が明らかになった。もがみ型護衛艦12隻のうち、最初の2隻分のVLSが令和6(2024)年度に三菱重工業から防衛省に納入されることが分かった。防衛装備庁が13日、筆者の取材に回答した。

防衛省は令和3(2021)年度補正予算で、もがみ型護衛艦搭載VLS MK41の2隻分の取得費として84億円を計上した。防衛装備庁によると、この2隻分のVLSが来年度に防衛省に納入される。具体的には令和3年度計画艦の7番艦(FFM-7)「によど」と8番艦(FFM-8)「ゆうべつ」搭載向けのVLSとなる。

防衛省資料の「防衛力強化加速パッケージ-令和3年度補正予算の概要-」の該当部分を筆者がキャプチャー

筆者が11日に既報した通り、防衛省は令和5(2023)年度予算でも残りのもがみ型10隻分のVLS MK41などの整備費用として787億円を計上した。これら10隻分のVLSは令和7(2025)年度に3隻分、令和9(2027)年度に4隻分、令和10(2028)年度に3隻分がそれぞれ防衛省に納入される予定だ。

防衛省が2023年11月16日に公表した海自のもがみ型護衛艦搭載用の垂直発射装置(VLS)の長期契約に関する資料を筆者がキャプチャー

三菱重工業は日本企業としては唯一、アメリカ政府の認可の下、MK41の製造メーカーの米ロッキード・マーチンと技術援助契約を締結、さらに武器等製造法に基づくライセンス生産の許可を受けている。

もがみ型護衛艦は令和5年度計画艦までの計12隻で建造を終える。2022年4月に就役した1番艦もがみから、昨年11月に進水した8番艦ゆうべつにいたるまで、これまですべての艦のVLSが「後日装備」となってきた。このため、その対空能力や防空能力を疑問視する声が内外で上がっていた。

とりわけオーストラリア政府が2月、同国海軍の次期汎用フリゲートの候補として、ドイツのMEKO A-200型、日本のもがみ型護衛艦、韓国の大邱級フリゲートBatchIIとBatchIII、スペインのナバンティア ALFA3000の4つを挙げた中、もがみ型護衛艦の対空能力を内外にアピールするためにはVLSの早期装備が望まれる。

なお、防衛省は令和6年度から令和10年度までのわずか5年間でもがみ型の能力向上型となる新型FFMを計12隻調達する計画だ。新型FFMには12式地対艦誘導弾能力向上型(艦発型)や新艦対空誘導弾といった長射程ミサイルが搭載される。対潜戦能力も強化される。各種海上作戦能力が向上する。対空戦能力と捜索能力が向上した新型FFMは簡易ミサイル・フリゲート(FFG)化すると言える。オーストラリア海軍が今後、もがみ型よりも新型FFMを次期フリゲートの検討候補として関心を寄せていく可能性もある。

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© 高橋浩祐