プレーオフ出場の可能性が消滅したスパーズ。それでもウェンバンヤマは最後までプレー続行を明言「チームに対してそうする責任がある」<DUNKSHOOT>

昨年のドラフト1巡目全体1位でヴィクター・ウェンバンヤマを指名し、注目を浴びていたサンアントニオ・スパーズだが、3月11日(日本時間12日、日付は以下同)を終えた時点で今季のプレーオフ出場の可能性が消滅した。

5年連続でプレーオフを逃したチームは、12日にヒューストン・ロケッツに101-103で敗れ、14勝52敗(勝率21.2%)でウエスタン・カンファレンス最下位。現在のペースでは1996-97シーズンに記録した20勝62敗(勝率24.4%)のフランチャイズワースト成績を更新する可能性も出てきた。

ただ、チームの未来を悲観する者は皆無に等しい。ロスターには20歳のウェンバンヤマを中心に、同じく20歳のジェレミー・ソーハン、23歳のデビン・ヴァッセルとトレ・ジョーンズ、24歳のケルドン・ジョンソンといった若手が揃い、彼らが順調に成長していけば、上位浮上が期待できる。

なかでも期待の若手ウェンバンヤマがいることは、今後のFA(フリーエージェント)戦線でスパーズに大きなアドバンテージをもたらすことも考えられる。

チーム成績こそ伸び悩んでいるとはいえ、224㎝・95㎏のビッグマンは11日時点で平均20.8点、10.3リバウンド、3.4アシスト、1.3スティール、リーグトップの3.4ブロックをマーク。さらにオールスター後の8試合は平均22.6点、12.0リバウンド、4.8アシスト、2.1スティール、4.9ブロック、3ポイント成功率40.8%と圧巻の数字を残している。
コート内外で落ち着きを保つ大物ルーキーについて、スパーズのグレッグ・ポポビッチHC(ヘッドコーチ)は地元メディア『San Antonio Express-News』へこう話していた。

「彼はステップバックスリーを決める。でも初めて決めたように振る舞うことはないんだ。その点、大なり小なり、ティム・ダンカンの姿勢に似ている部分がある。彼はそういう人物なんだ」

240㎝のウイングスパンを誇る男は、ダブルチームを受けても1ドリブルで相手をかわしてダンクまで持ち込むなど、異質なプレーの数々で周囲を驚かせてきた。

レギュラーシーズンは終盤に差し掛かっている段階だが、ウェンバンヤマはチームのプレーオフ進出の道が途絶えようと、今後もプレーを続けると語っていた。

「間違いない。僕がどれだけそうしたいと思っているかわかるかい? 僕はシーズン中、ずっとプレーすることを望んできた。僕には自分のチームに対してそうする責任がある」

ウェンバンヤマにとってタフな経験となっているが、今季は近い将来に飛躍を遂げるための試練として受け止め、最後まで戦い抜いてほしいところだ。

文●秋山裕之(フリーライター)

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