受刑者が「選挙権」求めた裁判、二審も敗訴 原告側「選挙の公正に傷がつくのか」と訴え

記者会見する代理人の加藤雄太郎弁護士(左)と吉田京子弁護士(3月13日、東京・霞が関の司法記者クラブで、弁護士ドットコムニュース撮影)

受刑者に選挙権がないのは違憲だとして、長野刑務所で服役中の男性(38)が国に対し、選挙で投票できる地位があることの確認などを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(木納敏和裁判長)は3月13日、訴えを棄却した。一審の東京地裁に続いて男性側の敗訴となった。

●刑務所で投票できず 一審は「制限は合理的」と判断

訴状などによると、男性は詐欺罪で2019年に懲役7年の実刑判決を受けた。

公職選挙法は第11条で、選挙権や被選挙権を持たない対象として「禁錮以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者」などを挙げており、男性は 2021年の衆議院議員選挙や翌2022年の参議院議員選挙で投票できなかったという。

そこで男性は2022年8月、受刑者が投票する権利を制限する公職選挙法は国民の選挙権を保障している憲法に反するなどとして提訴した。

東京地裁は2023年7月、「受刑者が自ら法秩序を著しく害した者である」点を踏まえて、受刑者の選挙権を制限する公職選挙法の規定は、選挙が公明かつ適正に実施されるために定められており、制限は服役中のみであることなどから合理性があって憲法に違反しないと判断した。

控訴審で男性は、「受刑者はみなそろって選挙の公正を害する者であるという考えは、何の根拠もないただの感情によった偏見で、不当な差別そのもの」「(一審の判決後)私のまわりの受刑者は全員が落胆しました。ある人は『やはり人として見られてないんだ』と言いました」などと意見陳述した。

●東京高裁「受刑者は選挙の公正を害した者等に含む」と判断

東京高裁はこの日の判決で、最高裁が2005年に示した「選挙の公正を害した者等は別として、選挙権やその行使を制限するにはやむを得ないと認められる事由がなければならない」という基準を踏まえた上で、受刑者は「選挙の公正を害した者等」の「等」に含まれるなどとして合憲と判断した。

男性の代理人を務める吉田京子弁護士は判決後に記者会見を開き、「結論自体は不当な判決」とした上で、「一審は2005年に最高裁が示した厳しい基準を使わなくて良いと判断したが、東京高裁はこの基準に従わなければならないと認めた。今後この判断を前提にして、受刑者が選挙に参加すると選挙の公正に傷がつくのかという部分を最高裁で議論し、正しい判決を導きたい」と話した。

控訴棄却を受けて、男性は「非常に残念。全ての受刑者のために最後まで闘う」とのコメントを出した。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

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