【インタビュー】lecca、「全てを認めてあげられる自分が残ってる」

leccaが約7年ぶりとなるニューアルバム『LIBERTY ERA』(ヨミ:リバティーエラ)をリリースした。

本作は再び“自分の人生に夢中になる”という想いを込めた作品。人生讃歌の「素晴らしい人生」や「GAME」「灯」などリスナーに寄り添って勇気づけるポジティブな曲が並び、読売ジャイアンツ阿部慎之助監督へ選手引退の際に書き下ろした「少年」他、パワフルな歌が冴え渡るパーティー・チューン「ohayo-gozaimasu」を始め、“自分の人生は自分の意志で変えていける”ということを感じさせる新曲「start up」「マクアケ」など新曲8曲を含む全13曲を収録。

そのどれもが、人々に勇気を与える、誠実でまっすぐな応援歌。本アルバムを聴けば、自然と“自分の在り方”を見直せるのではないかと感じる。4年間の都議会議員経験を経て、再びアーティスト活動を再開したleccaは、本作にどのような思いを込めているのだろうか。BARKSでは7年ぶりとなるインタビューを実施し、ひとつひとつの楽曲について話を聴いてきた。

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◼️自分を取り戻してもらえるきっかけに

──久しぶりのインタビューということで、まずはleccaさんのここ数年の動きを振り返っての話を聞かせてください。4年間議員生活を経て2022年に音楽活動を再開されたときに、どんなことを感じましたか。

lecca:政治の世界ではいろんなことを学んだんですけど、その中でも何が光って残ったかというと、一生懸命切磋琢磨してる一般の人たちのがんばりや輝きなんです。そこを見ながら、自分も含めてですけど、どうしたらひとりひとりがもっと自分に自信を持ったり、自分のことを幸せな人間だと思って生きていくことができるのかが、いま私が音楽をやってる中で最大のテーマになってるんです。

──人間の幸せな在り方に改めて目が向いたと。

leccaそうですね。見た目は幸せそうでも、幸せじゃない人とかいっぱいいるなっていうのも感じるんですよ。私が好きなレゲエやヒップホップは心を強くする音楽。見た目を着飾るとかじゃなく、今あるものの中でどうしたら私たちが最大限にハッピーになれるかを常に訴えてくれる音楽ということですね。その思いが、自分の音楽を通じて聴いてくれる方に届けばいいなと思っているところがあります。

──おととし昨年と、久々にライブを通じてお客さんに会えたときはどう感じましたか。

lecca:復帰した2022年はまだコロナ禍の影響もあって、声を出しちゃいけない状態ではあったんですが、去年からは本来のライブの姿が戻ってきて、ほんとにエネルギーの交換の場になってるなって感じています。お客さんが人生背負って来てるんで、いい意味で圧がすごくて。私はライブをやるとげっそり痩せて帰る、みたいな感じなんです(笑)。しかも、その日のライブの感想をお客さんからSNSのDMでいただけるっていうのは、時代が変わったなと思いました。それを見ながら、私は自分の伝えたいメッセージを洗い直したりもします。

──歳月を経て、作るものが変わってきた感覚も?

lecca:それはありますね。一番は自分の年齢が大きいとは思います。歳を重ねて、いい意味で「自分はこうあるべきだ」「こういう自分でなければいけない」とか思うことがなくなりました。むしろ、いろんな失敗とか過ちとか全部を受け入れた上で「でも、生きてるからよくない?」ってところに行き着いちゃうくらい、最終的に全てを認めてあげられる自分が残ってる気がします。

──いい意味で、自分のエゴがなくなったということですね。

lecca:はい。ただ、問題は野心もなくなったってところなんですよ(笑)。そんな自分に対して、理想とか夢をまた持ちたいなと思えるように書いたのが、『LIBERTY ERA』の曲たちでもあるんです。正直ないんですよ、ここでライブしたいとか、売れたいとか、1位取りたいとかが。でも、せっかくこういう場で音楽をやらせていただいてるのに、それじゃあもったいないよなと思えるようにはなってはいるんです。……実は、ここ2〜3年くらいの間に、音楽辞めてもいいんじゃないかなくらいの自分の中で苦しい気持ちがありまして。

──何があったんですか?

lecca:leccaの立ち上げから15年くらい一緒にやってきた、エイベックスのディレクターの柳(和実)さんが2年前に亡くなってしまったんです。闘病中も近くで見ていましたし覚悟はしていたんですが、いなくなってしまったってことが非常に大きかったんです。ほんとにパートナーみたいな存在だったので、“いなくなっても音楽を続けられるのか?”ってことを毎日自分に問いかける2年間でした。なのでこの2〜3年間は、私の音楽を聴きに来てくれる人やスタッフさん、一緒にやってくれてるミュージシャンとかのおかげでなんとか走ってきたってところがあるんです。それがなければ辞めてましたね。正直、曲を作るだけで思い出すんですよ。“あ、聴いてくれる人いないな”って。

──ある意味、自分の合わせ鏡みたいな存在であったと。

lecca:ほんとにそういう感じです。この2〜3年はトンネルみたいな時期を過ごしてきたなという感覚があります。

──それをちょっと抜けた感覚はありますか?

lecca:ここ数ヶ月ですけど、やっぱり去年ツアーをやらせていただいたことは大きかったですね。久しぶりに全国のみなさんと会えたり、昔から一緒にやってたラジオのパーソナリティーさんと話せたりして、自分も柳さんの不在というところから、ひと段階抜け始めた気がします。ここで辞めたら、柳さんが15年かけて作ってきたものを私が止めてしまうことになるので、それをしないためにも、“背負っていきますか!”って感覚になってきました。

──次の新しい旅に出るような感じですか?

lecca:そんな感覚ですね。leccaの第二章の旅みたいな感じですね。

──では、4年ぶりのアルバム『LIBERTY ERA』の話題に移りましょう。アルバムはどんな作品にしたかったのでしょうか。

lecca:最終的に選曲はスタッフの方にお願いをしたんですが、みんなが「これがいい」「これを完成させたい」って言ってくれたものを優先して作っていったんです。結果的に、すごく強気な曲というか、元気が出る曲を選んでもらえたなと思います。できあがりを見ると、私のインディー時代のメラメラ燃えてた『烈火』ってアルバムや、初期の『おたくgirlsの宴』とかの強気な自分、人の反応とか気にせずやりたいことをやる、みたいな感覚に近いアルバムになった気がします。

──意思の強さにプラスして、包み込んでくれるような感覚もありました。

lecca:「素晴らしい人生」とか「おつかれさん」とかは、自分が人に言われたい言葉を詰め込んだんですよ。最近、1日仕事すると、ほんと疲れちゃうんですよね(笑)。20代のときみたいにできないっていうのをわかりつつ、そんな自分を労ってくれるような自分がいて欲しいという気がするんです。やっぱり人間、いろんな自分がいていいと思うんですよね。それは私だけじゃなく、みなさんも含めて。今って、24時間に人間ができる以上のことを要求されてるのかなって感じたりすることがあって。でもレゲエやヒップホップは、そこに抗う側面もある気がしている。なので私は、人間らしく生きていきたいってところを残すための歌詞を書いているんです。そういう言葉が必要な人に届いて、自分を取り戻してもらえるきっかけになったらいいなと思ってます。

◼️この曲たちが、みんなの気持ちの支えになったり、みんなの人生のお供になったらいいな

──まずは、リード曲の「灯」について聞かせてもらえますか。

lecca:「何かひとつでも自分の心を晴らしてくれるもの、心を支えてくれるものがあるといいよね」「それがあることで、何もいいことがないのに笑えたりすることがあるよね」、そういうシンプルな思いを込めた曲ですし、映像がきれいなので、楽しんでもらえたらいいなと思います。

──では、leccaさん的に今回一番チャレンジした曲は?

lecca:そもそも、人が作ったトラックに合わせるときはそれ自体がチャレンジではあるんですけど、「コペルニクス」はトラックだけでもかなり完成度が高かったんです。音に合わせて自分もブラッシュアップしたいと思って挑戦しました。「マクアケ」は、トラックメーカーのAILIがトラックのアレンジをしてくれたんですけど、最初、ある海外アーティストのアルバムの1曲目をリファレンスにして2人で作り始めたんです。それがすごく変わった曲で、サビがなくて、バースとかメロディもないんです。そういう曲を、自分たちでどこまでできるかを目指しながらやってたんです。でも自分はどうしてもメロディをのせたくなっちゃうので、この形になったんです。言葉の表現と音の表現のせめぎ合いを楽しめた曲かなと思います。

──「マクアケ」は、今から生まれなおすリボーン感のある歌詞も含め、まさにアルバムの1曲目って感じですね。「GAME」は立ち向かっていく思いが詰まった楽曲になっています。

lecca:「GAME」はトラック先行だったんですけど、自分がピッタリとハマれたような気がしてる曲です。これは、ちょっと変わったモチーフから歌詞を書いていったんです。“Vulnerability”(ヴァルネラビリティ)という英語があって、それについて講義をしてたりする女性の大学教授が書いた本があるんです。“Vulnerability”は脆弱性って意味なんですけど、その方は、自分の脆弱性に出会ったときにどう行動するかが大事だよねってお話をされてるんですよ。その本を読んだときに書いてあったことと自分の思いがリンクしたので、歌詞にしたいなと思ったんです。端的にいうと、不安について歌った曲なんです。

──勝手なイメージですが、leccaさんはあまり“不安”にならなさそうな……。

lecca:いやいや、私はライブの前に結構不安になるタイプなんです。特に昔はライブ前にずっと緊張してて、水が飛んできたらどうしよう、卵が飛んできたらどうしよう、お客さん全員帰っちゃったらどうしよう……とかいろんな不安が浮かぶタイプだったんですよ。“Vulnerability”について書いた教授の娘さんは、水泳大会に出るときに「全然出たくない」「なくなればいい」って言ってたそうなんです。でも結局その子は、大会でダントツビリで泳ぎ切って、次のレーンの選手が待ってるところで、「私やったよ! すごいでしょ!」って言ったって話があったんです。それを知ったときに、不安を乗り越えるのはもちろんかっこいいけど、不安を乗り越えないまま立ち向かうということもすごいことじゃないのかなって思って、それを歌にしたのがこの曲なんです。

──確かに、不安なまま「もうやるしかないな」って挑む場面は、生きてく間になんでも出会う場面ですね。

lecca:ほんと、誰にでもあると思うんです。テストとかプレゼンとか、「すごい心配で不安で行きたくない」って思ってる人の気持ちを支えられる曲になればいいなって気持ちがあります。しかもトラックがすごくかっこよくて、面白い曲になったなって思いますね。

──leccaさんは、自分だけでなく、聴いてる人たちを鼓舞していこうというのがアーティストとしてのスタンスとしてあるように感じます。人をサポートしたいという気持ちは、自分のどういう部分から来てると思いますか?

lecca:それはまさに、自分が不安を感じる人だからだと思いますね。私はメンタルは強いけど、不安は感じるし、自信のない自分もいる。怖いと感じることもたくさんあるんです。ただ、それを感じたときに自分はどうするかっていうのを自分も知りたいし、もし自分が何かいいアイディアを見つけたらみんなに共有したいって気持ちがあるんです。あと、私は中学高校時代に応援団をやってたんですよ。1年中勉強しないで、体育祭でみんなで歌う応援歌を作ってた(笑)。私の行ってた学校がちょっと変わってて、体育祭が学年対抗だったんです。それで、毎年自分の学年をみんなで応援するための応援歌を作ってたんです。やっぱり、応援歌って元気が出るんですよね。私は音楽を聴くときに、元気になりたくてそういう曲を選んで聴いちゃうんです。それもあって、自分が書く曲は応援歌が多いのかなって感じがします。

──なるほど。まさにアルバム『LIBERTY ERA』は、あらゆる場面のいろんな感情に刺さる人間味のある作品です。leccaさん自身はアルバムができあがっての手応えをどう感じてますか。

lecca:私が入ってて欲しいなって曲がいっぱい入った作品で、しかも今の時代にCDでアルバムとして出させていただけるのがほんとにありがたいなと思いますね。この曲たちが、みんなの気持ちの支えになったり、みんなの人生のお供になったらいいなと思ってます。

──そして、leccaさんは5月から6月にかけて全5都市でZeppツアー<lecca LIVE TOUR 2024 "LIBERTY ERA">を開催しますが、こちらはどんなツアーになりそうですか?

lecca:アルバムのタイトルを冠したツアーが7年ぶりで、Zeppツアーも7年ぶりなんです。アルバム『LIBERTY ERA』の内容をしっかり表現して、みんなで共有できる空間にしたいなって気持ちはもちろんあります。それと同時に、過去曲も歌いたいなと思ってます。過去曲に対しては、自分の中でそのときどきで考えが変わるんですけど、今は積極的に歌いたいなって気持ちになってますね。ただ、曲がたくさんあるので選曲が大変そうだなっていうのは思ってますが(笑)。久しぶりにツアーに来てくださる方、長年応援してくれてる方も多いかなと想像できるので、7年前とは違う部分に驚いてるみんなの顔を楽しみに、準備をしていきたいと思ってます。

──ベーシックな話ですが、leccaさんのライブでのモットーは?

lecca:原曲のキーを絶対変えないこと。「変えるなら二度と歌うな」って柳さんから言われてたんです。あと口パクは絶対しない。「どの部分も自分で歌う」ってことです。それはモットーというか教えですね。それを覆したら柳さんに怒られちゃうので(笑)。

──恩師の教えを守り続けると。では、今の時点で今後やってみたいことはあったりしますか。

lecca:先ほどもお話しした通り、復帰してから音楽の面では夢がない状態なんです。なので、新しい夢を持つのが夢かな(笑)。音楽以外だと小さい夢はいっぱいあるんですけど。なので、そこをどう作っていくかが課題ですね。私の中からポンと出てくるものでもないと思うので、それを探しにいくのが次なる目標なのかなって。

──夢の旅人みたいな。

lecca:ほんと旅人ですよ(笑)。夢を探しつつ、まだまだ旅は続くって感じですね。

取材・文◎土屋恵介
写真◎野村雄治

『LIBERTY ERA』

発売日:2024年2月28日(水)
商品購入ページ:https://cuttingedge.lnk.to/lecca_libertyera
商品形態:
ファンクラブ限定盤【2CD+1Blu-ray】CTC1-96089~90/B ¥13,200(税抜¥12,000)
【CD+ Blu-ray Disc】CTCR-96087/B ¥8,778(税抜¥7,980)

【CD Only】CTCR-96088 ¥3,850(税抜¥3,500)

詳細:https://avex.jp/lecca/news/detail.php?id=1113230

<lecca LIVE TOUR 2024 "LIBERTY ERA">

[愛知]
日程:5月10日(金) 開場 18:00 開演 19:00
会場:Zepp Nagoya

[大阪]
日程:5月11日(土) 開場 15:30 開演 16:30
会場:Zepp Namba

[東京]
日程:5月18日(土) 開場 15:30 開演 16:30
会場:Zepp DiverCity (TOKYO)

[福岡]
日程:6月1日(土) 開場 15:30 開演 16:30
会場:Zepp Fukuoka

[北海道]
日程:6月8日(土) 開場 15:30 開演 16:30
会場:Zepp Sapporo

▼チケット情報
・FC会員限定:プレミアムチケット 12,000円(税込)※受付終了
・一般指定チケット 8,000円(税込)
・親子チケットA (2枚セット) 12,000円(税込) ※着席指定
・親子チケットB (3枚セット) 18,000円(税込) ※着席指定

▼チケット販売
・アルバム封入先行受付 (e+/先着)
受付URL:購入アルバム内の封入チラシ~のみ受付可能(初回盤のみ)
受付期間:2024年2月28日(水) 10:00 ~ 2024年3月24日(日) 23:59まで

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