和歌山・串本町長「まさかこんな結果に」涙を浮かべる人も…ロケット爆発も開発企業は「失敗」と言わず

民間ロケット「カイロス」発射場近くの和歌山県串本町から中継です。(取材・報告=神田貴央記者)

公式の見学場では、当時地元の人や関係者の人が数多く集まっていましたが、カウントダウンの後もロケットは見えず、1.5キロ先、発射場のある方向から白煙が上がりますと、会場からは戸惑いの声があがりました。

カイロスは、午前11時1分の打ち上げ直後に空中分解しました。

その後、落下した破片が炎上し、消防が消火作業にあたりましたが、午後2時前に鎮火しました。破片はすべて発射台の敷地内に落ち、ケガ人や周辺への被害は確認されていないということです。

カイロスを開発したベンチャー企業の「スペースワン」は「発射の5秒後に自律飛行安全システムが作動し、飛行が中断された」と発表しました。

このシステムは、ロケット自身が何らかの異常を確認した場合に、大事故を避けるため自ら飛行を中止するもので、スペースワンは爆発についても「安全に飛行中断ができた」と強調しています。

ただ、どんな異常があったのかについては、「今後原因を究明したい」と述べるにとどめました。

(Q、スペースワンは記者会見で失敗とは言いませんでした。なぜか?)

神田記者

「スペースワンとしては、確かにに会見では『失敗』とは言いませんでした。といいますのも、今回は異常を確認して、ロケットが自ら爆発するまでのプロセスは想定通りに行われていて、ロケット打ち上げのアクシデントで最も懸念される人的被害などが起きなかったことから、前向きに捉えたいという気持ちがあるようです。ただ、今回は搭載した人工衛星を地球の周回軌道に乗せる計画で打ち上げを行いましたので、それが実現できなかったわけですから、一般的には今回の計画は失敗と言わざるを得ません。まずは企業側がこうした事実を正面から受け止め、原因究明と再発防止策を図ることが求められていると思います」

(Q、失敗で地元の落胆ぶりは?)

神田記者

「はい、カイロスのロケットは、当初2021年度中に打ち上げられる予定でした。しかし、ロシアのウクライナ侵攻などの影響で、部品が届かず、打ち上げ時期は4度延期されました。さらに、ようやく決まった4日前の打ち上げも安全上の理由で延期されました。地元の人にとって、やっとロケットを見ることができるという日だっただけに、落胆は大きく、見学場では涙を浮かべる大人も見られました。また、過疎化が進む串本町の活性化につなげようと意気込んでいた町長は打ち上げ後、この見学場で立ちすくんでいて、取材に対し『まさかこんな結果になるとは』と肩を落としていました」

今回こそ残念な結果となった打ち上げですが、地元の期待に応えるためにも、次の打ち上げこそは、なんとしても成功させてほしいと思います。

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