自信がないからこそ実践できるコミュニケーション法とは

【自信がない人にこそお勧めするコミュニケーション法・1】「お前はコミュニケーションが苦手だから、コミュニケーション研修を一人で企画し講師も全部一人でやれ」。昔、当時の師匠から突然いわれ、かなり狼狽した覚えがあります。あれから30年近く経ちましたが、今でも筆者はコミュニケーションに苦手意識があります。しかし、今は次のように思えるようになりました。「コミュニケーションに自信がなくて良かった」と。それは、なぜでしょうか。そこで、本連載では「自信がない人にこそお勧めするコミュニケーション法」について解説していきます。

「コミュニケーションに自信がない」方が良い

筆者は誰と会う場合も、その直前には必ず緊張します。「上手く会話ができるだろうか?」「良い人間関係を構築し、維持できるだろうか?」と不安になります。しかし、それで良いのです。それが良いのです。

もし、「私はコミュニケーションが得意だ」「私は誰とでも良い関係を構築する自信がある」と思っている人を発見したら、筆者は即座に今の仕事(人や組織をサポートさせていただく仕事)を辞めるでしょう。「コミュニケーションに自信がない」方が良いのです。

コミュニケーションに自信は必要?

「私は、コミュニケーションに自信があります」という人で、その通りに本当に良いコミュニケーションがとれている人と、ほとんど出会ったことがありません。大抵、独りよがりになっています。

つまり、本人は「上手くいっている」と思い込んでいます。ところが周りの人は決して、その人とのコミュニケーションに満足していません。

もともと人とは、「解釈」の生き物です。あらゆる物事(現実)を自分の解釈を通して見ています。解釈を「色眼鏡」と表現しても良いでしょう。

「色眼鏡を無意識にかけた私達」が会話をする、というのが人と人のコミュニケーションです。自分の色眼鏡と相手の色眼鏡、二重の色眼鏡を常に介していますので、言葉のやりとりで誤解や齟齬が生まれるのは当然でしょう。

コミュニケーションに自信のある人の多くは、「私は上手に人に説明ができる」「私には説得力がある」「私の言うことは皆が納得してくれる」という類の過信をしています。また、「私はちゃんと相手の話を聴けている」「相手を理解できている」「そのことを相手も喜んでいる」という過信をしている人もいます。

はっきりいいますが、そんなに上手くはやれていません。周囲の人には、多かれ少なかれ不満が渦巻いています。ひどい場合には、「この人は私に全く関心がない」「この人は、口先だけだ」「この人には何を言っても無駄だ」と、諦めモードになっています。

こういった気持ちの連続によって会社を辞める人は非常に多く、特に最近の若い世代(いわゆるZ世代)の人達は、このような気持ちに素直です。確かに以前は「社会人になってからのコミュニケーションは我慢するのが当然だ」という風潮の時代もありました。しかし今は、そういった我慢自体を拒絶する傾向にあります。

しかし筆者は、その傾向を「良いものだ」と受け止めています。なぜなら我慢をし過ぎないことで初めて、そこにあったさまざまな問題を顕在化できるからです。

これまで我慢しながら働くことが当然の風潮であった会社が、若い人がすぐに辞めてしまうことによって初めて、「何か問題があるのではないか?」という疑問符を持つ、というケースは増えています。実際、「私のコミュニケーションは、どこかおかしいのでしょうか?」という相談を、ここ数年、企業の社長から多くいただくようになりました。これは、良い傾向だと思います。

さて、今回の連載は、会社幹部や管理職向けのものというよりも、むしろZ世代を中心とする若者世代に読んでもらいたいと考えています。Z世代の皆さんは、コミュニケーションに対して苦手意識を持っている人が多いようです。しかし、コミュニケーションは「自信がない方が良い」と、ここでは断言します。「自信がないからこそ実践できるコミュニケーション法」があるのです。(ITSUDATSU・竹内直人)

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