2024年度、賃上げ実施85.5% ベア6割、人材確保へ 茨城県内企業調査

東京商工リサーチ水戸支店がまとめた「賃上げに関するアンケート」調査によると、2024年度の茨城県内企業の賃上げ実施予定率は85.5%で、「実施する」と回答した企業では、「ベースアップ」との積極的な回答が6割を超えた。理由は人員確保が中心だ。一方、各社とも賃上げには製品・サービスの値上げが必要としており、業績の好循環を生み出せるかが課題となりそうだ。

賃上げの内容はベースアップとの回答が68.7%で、23年8月の調査から18.7ポイント上昇した。同支店によると、物価高で実質賃金の目減りが続き、ベースアップで賃金底上げを図る企業が増えているという。

産業別では建設業の賃上げが100%だった。働き方改革関連法に基づく時間外労働(残業)の上限規制が適用される「2024年問題」を例に、対象の建設や物流業界で対応する動きが目立つ。

賃上げ率は、連合が24年の春闘方針として目標に掲げる「5%以上」の賃上げを回答したのは実施企業のうち25.6%で、前年度の41.1%から大幅に低下。賃上げの持続が難しい背景もある。

賃上げの予定がない企業のうち2割が「23年度の賃上げが負担となっている」と回答。そのうち7割が「価格転嫁できていない」と理由を挙げた。値上げで利益を確保し賃上げにつなげる好循環を生み出せない厳しい事情もうかがえる。

賃上げに向け、製品サービスの値上げや受注拡大が重要と回答し、特に値上げは約7割に及んだ。

食品物流の茨城乳配(水戸市千波町)は約3%賃上げする。吉川国之社長は「2024年問題への対応で4月以降、残業が減ることで社員の給料も下がる。その分を補塡(ほてん)し、これまでと変わらない額にするためだ」と状況を話した。段ボール製品製造の新井紙器(筑西市東榎生)は1.5~3%賃上げする。

新井康洋社長は理由について「人員の確保が一番。資金の余裕はないが、物価高の中、従業員に頑張って働いてもらうため」と見通しを語った。

調査はインターネットで行い、県内76社が回答した。東商リサーチ水戸支店は物価高や円安、人手不足のほかマイナス金利解除の可能性などを挙げ「企業を取り巻く環境は複雑化している。賃上げしても業績に与える影響を注視することが必要」と分析した。

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