日銀、3月会合で政策修正の是非議論 連合集計など踏まえ

Takahiko Wada

[東京 13日 ロイター] - 日銀は3月18─19日の決定会合でマイナス金利解除を含む政策修正の是非を議論する。鍵となる春闘は13日の集中回答日に満額回答の企業が相次ぎ、賃金と物価の好循環へ手応えを感じさせる結果となった。15日に連合が示す1次集計なども踏まえ、物価目標実現の確度が十分に高まったと判断すれば政策修正を決定する見通しだ。ただ、中小企業の賃上げを見極めたいとの声や国内消費への懸念もあり、政策修正の判断を4月以降に持ち越す可能性もある。

<春闘の受け止め> 春闘の集中回答では満額回答が相次ぎ、けん引役のトヨタ自動車は1999年以降で最高水準となった。日本製鉄は増額率が10%を超えた。 日銀ではこれまでも、好調な企業収益や物価高、人手不足を背景に昨年を上回る賃上げ実現に期待感が高かったが、今回の結果を受け、期待が一段と高まっている。 植田和男総裁は13日の参院予算委員会で、経営側からこの日も含めて多くの回答が表明されていくとした上で、「それ(多くの回答)とその他のデータ、ヒアリング情報を総合的に点検した上で適切に判断したい」と述べた。 日銀では、15日の連合の1次集計や同日に予定されている連合の記者会見に注目が向かっている。これらを通じ、企業の賃上げに対する前向きな姿勢が確認されれば、賃金・物価の好循環が自律的に回り始めていると判断することが可能で、政策修正が可能になるとの見方が出ている。

<政策修正ならYCCも同時解除か> 日銀が物価目標の実現が見通せる状況になったと判断した場合、大規模緩和の修正を検討する見通しだ。修正する場合、マイナス金利とイールドカーブ・コントロール(YCC)は同時に解除する可能性が高い。 短期の政策金利は当座預金3層構造の政策金利残高への付利から、無担保コール翌日物金利に戻した上で、ゼロ―プラス0.1%で推移するように誘導する案が有力。3層構造を廃止し、超過準備にプラス0.1%の付利を実施することで、無担保コールレートがゼロ―プラス0.1%の範囲で推移するように市場調節を行うことになる。 10年金利の誘導目標ゼロ%は廃止し、政策金利を短期金利に一元化する見通し。10年金利の形成は基本的に市場に委ねることになるが、急激な金利変動を招かないように当面は現行6兆円程度の国債買い入れを目安として継続する案が出ている。 現行の10年金利の上限1%目途については、引き続き示せばYCCの事実上の継続になるとして、消極的な意見が多い。ただ、市場調節の観点から何らかの金利ガイダンスが残る可能性はある。

<ETF買い入れとFG> 内田真一副総裁は2月の講演で、大規模緩和を修正する場合は上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)の買い入れをやめるのが自然と述べた。日銀では、物価目標の実現が見通せた場合にはETFやREITの買い入れをやめるべきだとの意見が強まっている。 ただ、日経平均株価が足元で下げ基調を強めていることなどを踏まえ、ETF買い入れを残すべきだとの声も出ている。 YCCの継続期間やマネタリーベースの拡大方針など、声明文に明記してきた金融政策の先行き指針(フォワードガイダンス)については、あくまで緩和政策の継続を市場に織り込ませるためのツールの1つとの認識がある。正常化の際は、具体的な経済状況や時期に紐づけたフォワードガイダンスは示さず、「当面は緩和的な金融環境が続く可能性が高い」といった文言が盛り込まれる可能性がある。 市場ではマイナス金利解除後の政策金利の道筋への関心が高いが、日銀では経済・物価の不確実性が高いもとで、政策金利の道筋を公表すべきではないとの意見が多い。

<修正見送りも、中小企業の賃上げ見極め> 日銀では3―4月のいずれかにマイナス金利解除を含む政策修正に踏み切るべきだとの声が増えているが、物価目標実現を見極める上で十分にデータがそろっていないと判断すれば、3月会合の政策修正が見送られる可能性がある。 春闘の集中回答や連合の集計値は大企業が中心であり、中小企業の賃上げについてはもう少し見極めが必要との判断に傾くシナリオも想定しうる。日銀では個人消費の弱さを警戒する声も根強く、早期の政策修正に慎重な向きもみられる。

(和田崇彦)

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