岡山県庁舎 大規模改修21日完了 防災力強化 前川建築の魅力発信

21日に大規模改修が完了する見通しとなった岡山県庁舎=岡山市北区内山下

 岡山県は13日、戦後を代表する建築家・故前川国男(1905~86年)が設計した県庁舎(57年築、岡山市北区内山下)の大規模改修が21日に完了する見通しと明らかにした。震度6強の耐震性能をはじめとした防災力の強化とともに前川建築の魅力発信に向け、総事業費157億円を投じたビッグプロジェクトが完成する。

 大規模改修は今後50年の使用を想定し、2017年度から7カ年の重点事業として実施した。南海トラフ巨大地震に耐えられるよう金属製の筋交いやパネルによる補強を100カ所以上に施し、72時間にわたって電力供給を維持できる非常用発電施設を新設した。

 前川建築の魅力発信では1階県民室の一角にギャラリーを設けて写真パネルで文化的価値を紹介したり、庁舎の創建時からある旧地下金庫への金属製らせん階段を公開展示したりする。かつてあった中庭も再整備し、オリジナルデザインにこだわった。

 工事完了の見通しは13日の県議会特別委員会で報告。玄関前の回廊に備え付けた16色のLED(発光ダイオード)を活用し、新たにライトアップイベントを行う方針も示した。

 戦後の近代建築を巡っては、故丹下健三氏(1913~2005年)設計の香川県庁舎が22年に庁舎建築では初めて国重要文化財に選ばれるなど価値を見直す動きが強まっている。県は岡山市内にある前川設計の県天神山文化プラザ(同市北区天神町)、林原美術館(同丸の内)を含めて一体的にPRしていく方針だ。

 近代建築研究の第一人者である松隈洋神奈川大教授は「岡山県庁は前川が手がけた庁舎の中でも最大規模で、文化的価値に光を当てた今回の改修は全国的に見ても非常に意義が大きい。『県民の家』との設計趣旨の通り、多くの人に開かれた運用を期待したい」としている。

大規模改修で再整備された岡山県庁の中庭。前川建築の特徴を間近で眺められる

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