2023年流行グルメの結果発表と24年の食トレンド予測

2023年は、長引いた新型コロナウイルスの感染症法上の分類が第5類に移行。それが影響し、グルメトレンドだけでなく、ライフスタイルや働き方なども変化した年となった。本稿では、23年の流行グルメの調査結果と、24年のトレンド予測について解説していきたい。

コロナ禍のトレンドもある程度定着

23年流行グルメトレンドは、人々の活動が再び活発化したことが結果に大きな影響を与えた。その結果を解説する前に、コロナ禍の2020年~22年のトレンドを振り返りたい。
コロナ禍では、「おうち需要」「健康志向」が高まり流行グルメに影響を与えた。自宅で楽しめる高級食パンなどの「プチ贅沢グルメ」のほか、健康志向に対応した「ノンアルコール飲料」や、1回分の食事量を軽食程度に減らす「0.7食」などがランクインした。
これらのコロナ禍に流行したグルメは、一過性のものではなく、コロナが第5類に移行した今もある程度、定着している。

ワンハンドフードの人気が広がった背景

「2023年に流行ったと思うグルメ」のTOP10 出典:『HOT PEPPER』調べ

では、ここからはホットペッパーグルメ外食総研が発表した「2023年に流行ったと思うグルメ」のTOP10を紹介したい(調査実施時期:23年9月29日・30日)。

TOP10に入っているメニューを分析すると、二つの傾向があることが分かった。1つ目は、外で気軽に食べ歩きができる「ワンハンドフード」が多いことだ。前述したように、コロナが収束し、人々の活動が活発化したことが大きな影響を与えているのではないだろうか。

TOP10入りしたワンハンドフードを見ていくと、まずは1位を獲得した「10円パン」だ。これは、10円玉の形をした大きなパンで、その形状が面白いと話題になった。もとは韓国で話題となった「10ウォンパン」が起源のメニューで、中に入ったチーズが伸びる様子がSNSやYouTubeなどで“映える”と人気を後押しした。

その他にも、3位には「生ドーナッツ」、6位には「チュロス」など、食べ歩きに適したワンハンドフードが上位に入っている。

人々の外出機会が増えたことのほか、そもそもワンハンドフードは、片方の空いた手でスマホを使って撮影ができるため、SNS等で情報が拡散され、人気が広がりやすい傾向にある。

1位を獲得した「10円パン」

安定供給可能な原料「米」に注目集まる

二つ目の傾向は、「米系フード」であることだ。

2位には「おにぎり専門店」、5位には「ライスペーパー」、7位には「米粉フード」と、お米を使ったグルメが3つもランクインする結果となったのは23年の象徴的なトピックスだ。

昨今の円安やウクライナ情勢などの影響から、輸入小麦の価格が高騰した一方で、国内自給率が高く安定供給が見込めるお米を使った商品開発が進んだことが背景にある。また、米はグルテンフリーであることから、健康ブームの影響もある。

米粉を使ったメニューも、米粉パン、米粉パスタ、米粉クッキーなど多岐に広がりつつあり、昨今では、オリーブオイルやサラダオイルとともに、お米オイルも量販店に並ぶようになった。お米の産地にこだわった米粉オイルの食べ比べができる店も登場するなどなど、進化は止まらない。

ホットペッパーグルメ外食総研では別途、「お米」に対する調査も行っている(調査実施時期:22年9月22日・23日)。その結果、「コロナ禍前に比べて、おいしいお米を食べたいと思う気持ちに変化はあるか?」という質問に対し、気持ちが「増した」は32.0%、「減った」が2.2%、「変わらない」が65.9%と、気持ちが「増した」が「減った」を大きく上回る結果になった。

また、「今後お米を食べる機会をどうしたいか?」という質問では、「増やしたい」が18.0%、「減らしたい」が3.8%、「変えるつもりはない」が78.3%で、お米に対する需要が今後も増加すると想定される結果が出ている。

「増やしたい」(18.0%)と答えた人に理由を聞くと、「物価高のなか、国産米は比較的手ごろな値段だから」と答えた人が52.2%と半数を超えており、トレンドとなった理由を裏付ける結果が出ている。お米は本来、日本人の主食であるため、さらにお米を使った新たなメニューが生まれることに期待したいところだ。

24年の注目は日本食の“逆輸入”や「ストーリーテラー」のいる店

さて、2024年もすでにスタートを切っているが、今年はどんなグルメトレンドが生まれるのであろうか?

食に限らずではあるが、世界中のマーケットが目まぐるしく変化する昨今、SNSやテクノロジーの進化により情報流通のスピードも著しく加速している。消費者の生活様式が多様化するなか、ノンアルコールマーケットなど、食トレンドも同様に多様化していくだろう。

インバウンドが増加するなか、今年は訪日観光客の存在によって、海外でアレンジされ現地で人気となった日本食が、日本に“逆輸入”されるという動きが出てきそうだ。

そして、外食に特化すれば、やはり外食の価値は「人」である。食の魅力を伝える「ストーリーテラー」の存在は、食の価値を高める。たとえば、ソムリエやバーテンダー、バリスタなどの専門職のいる業態は、ファンを獲得していきそうだ。料理人や店主と会話ができるカウンター業態にも注目したい。1年後の24年流行グルメの発表も楽しみにして頂きたい。

【調査概要】
出典:『HOT PEPPER』調べ
調査期間:2023年9月29日~9月30日
調査方法:インターネットによるアンケート調査
調査対象:全国の20代・30代男女(株式会社マクロミルの登録モニター)
有効回答数:2075人(男性:1038人、女性:1037人)

【執筆者】

有木真理(リクルート『ホットペッパーグルメ外食総研』所長)

飲食チェーン店での勤務やフードコーディネータ、リクルートライフスタイル沖縄の代表取締役社長を経て、現職。東京と沖縄の2拠点生活を送りながら、現在は販促渉外部長も兼任。外食回数年間300回と、大の外食好きで、日本各地の外食事情に詳しく、立ち飲みから超高級店まで幅広いジャンルに精通。食を通じて「人」と「事」をつなぐ活動のオーガナイザーとしても活躍。沖縄スポーツ関連産業協会の理事も務めているため、食以外にも観光、スポーツにも関わっていることから外食だけでない視点での食トレンドを語ることができる。

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