fidata AS2徹底使いこなし!Amazon Musicの音質チェック&強化電源グレードアップ

ついにAmazon Musicに対応!fidataのストリーミング音質を徹底検証

fidataブランドから発売されたオーディオサーバー「HFAS2-X40」、通称“AS2”の売り上げが好調だという。同社はAS2を第二世代機と位置付けており、CPUから基板、電源まで内部構成を全面的に新規開発。さらにストリーミングサービスやroonに対応。USBポートも3系統に増やし各種デジタル出力も装備するなど、インターフェースも使い勝手も大きく向上している。

fidata オーディオサーバー「HFAS2-XS40」(1,320,000円/税込)

僕は昨年9月にこのAS2を体験し、音質と機能の両面で大変高く評価した。さらに、fidataといえば、Soundgenicと並び「ファームウェアアップデートによる機能拡張」が大きな魅力だが、このたび、アップデートにより待望となるAmazon Music Unlimitedの再生、そして国内ローンチが予告されているQobuzに正式対応したのは大きなニュースだ。

AS2の背面端子。S/PDIFやAES/EBU出力など、多様なDACとの組み合わせが実現できるよう進化している

そこで本記事では、AS2でAmazon Musicを試して、音質と使い勝手を厳しい視点で検証する。それに加えて、AS2は外部電源入力を持ち、サードバーティーのパワーサプライから電源供給ができるので、複数の製品を投入して試聴に挑んだ。

土方久明氏の自宅にて、fidataの最新アップデートを検証! スピーカーはパラダイムの「Persona B」を組み合わせ

ストリーミングでも「安定感のあるサウンド」を楽しめる

取材に先立ち、自宅2FのオーディオルームにAS2を設置した。AS2は、視覚的にも洗練されてオーディオラックと融合する。僕はfidataの初代機を複数台所有しているが、AS2の外観的差異はシャーシの高さがわずかに高くなったくらいで、電源ボタン以外何もないフロントパネルも前世代と共通。

左上が、今回使用するfidata「AS2」、DACにはEleven audioの「SagraDAC」を組み合わせ。アンプにはLINNのKLIMAX SOLOを使用した

しかし、AS2の中身はインテルのCPUが搭載されており、コンピューターとして、またオーディオ機器としても大幅に強化されている。まるで羊の皮を被った狼、いや、車で例えるならスーパーカーだ。ハンドルやアクセルの代わりは、スマホやタブレットにインストールするfidata Music Appである。

試聴ではAS2をネットワークトランスポートとして使用し、USB-DAC・イレブンオーディオ「Sagra DAC」とUSBケーブルで接続。LAN周りは、SOtMのネットワークスイッチ「sNH-10G」(同社のパワーサプライ、クロックで強化済み)とRJ-45の有線LANケーブルで接続した。

まずはAmazon Musicを聴こう。iPad Proに表示される「f」アイコンをタップして操作アプリを立ち上げ、トップ画面左上からMusic ServerをタップするとAmazon MusicとQobuzアイコンが表示された。自身が使い慣れたfidata Music Appの画面上に、2つのストリーミングサービスのメニューが表示される嬉しさ。

fidata Music Appの画面上に「Amazon Music」と「Qobuz」の双方が表示される

まずはAmazon Musicから。日本語での検索ができることがひとつの強みなので、検索ウインドに “ノラ・ジョーンズ”とカタカナで入力した。するとアーティスト、アルバム、楽曲のアイコンが表示され、他社の多くのアプリとは違い、アルバムアートが美しくタイル表示されるではないか!これはすごい。

“ノラ・ジョーンズ”と検索したところ。代表的なアルバムからプレイリストまで表示される

ここで大好きなアルバム「Come Away with Me [Remastered 2022]」をチョイスした。2002年に発売され20ヵ国でアルバム・チャート1位を獲得した彼女のデビュー作。2022年にマスタリング・エンジニアのテッド・ジェンセンの手でリマスターされたタイトルだが、こんなアルバムもAmazon Musicは96kHz/24bitのレゾリューションで聴けるのだ。

アルバムジャケットも大画面で表示。このあたりの使い勝手はローカルファイル再生と同じ

そして読者の皆さんが一番気になるのは音質だろう。Amazon Musicも含め、ストリーミングサービスの音質については賛否両論あることは事実だ。しかしAS2で聴くノラ・ジョーンズのストリーミング音源は、一言で表現するなら “ハイレゾ再生そのものな安定感のあるサウンド”だ。

オープニングタイトル「ドント・ノー・ホワイ」は、聴感上のS/Nが良く、分解能、fレンジとも合格。オリジナルより少し音圧が上がって聴こえるところや、音場の高さ方向の拡張など、リマスターの特徴が表現できている。センター定位するノラ・ジョーンズの音像はディテールが明瞭で、リー・アレキサンダーが演奏するベースの弦など微妙な楽器のニュアンス表現にも長ける。

ここで、自分が所有する同タイトルのハイレゾファイル(96kHz/24bit FLAC)をアプリのプレイリストに追加した。fidata Music Appは、ローカルの音源ファイルとAmazon Musicの楽曲を当たり前のようにひとつのプレイリスト上に並べることができる。タップひとつで切り替えることができるのだ。

ストリーミングの音源とローカルファイル音源をひとつのプレイリストでそのまま再生できる

そして音質についてだが、僕の家の環境では、Amazon Musicとファイル再生を比べると、ほぼ変わらない。

ラファエル・クーベリック/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 「ドヴォルザーク:交響曲 第9番<新世界より>」(96kHz/24bit)も好印象だ。クーベリックはチェコ共和国の生まれ。チェコを亡命後の1990年、42年ぶりに祖国を訪れスメタナの「わが祖国」の記念碑な演奏を行ったことで知られる名指揮者だ。オリジナルタイトルが発売されたのは1974年。楽曲冒頭からトッティへの進行はダイナミックレンジの広さと抑揚への追従力に長け、アコースティック楽器かつ演奏者の数が多い交響曲の壮大さをありのままに伝えるのは、ハイレゾフォーマットの良さだ。

“新世界”でも検索

邦楽はどうだろうか?YOASOBI「勇者」は聴感上fレンジDレンジともワイドで透明感とディテール表現に長け、エレクトリックシンセサイザーのサウンドに酔いしれる。全帯域を癖なく表現するSagra DACの特徴がよく出ており、迫力ある表現を左右する低音楽器の立体感とローレンジの伸びもある。

YOASOBI「勇者」の再生画面

つまりAS2は、fidataのフィロソフィーである、組み合わせるコンポーネントの個性をより伸ばすアキュレートなサウンドをストリーミングサービスの音でも表現しているのだ。

それにしてもAmazon Musicの予想以上の音の良さに感心したが、実はAS2はストリーミングの音声データ処理に工夫があるという。Amazon Musicのデータ転送方式(コンテナ)は、ネットワーク環境に応じて再生品質を変えられるよう、複数のビットレートを含んだMPEG-DASH方式が採用されている(アダプティブビットレートストリーミング)。通常は、再生の安定性を優先してビットレートの低いものから再生を始め、環境が安定するのに従ってハイグレードなものに変更される。YouTubeなどで、冒頭は画質が良くないが徐々に綺麗になっていく、という体験をしたことがある方もいるだろうが、Amazon Musicについてもそのような処理がなされているのだ。

しかし、アイ・オー・データ機器は日本の家庭向け回線が光ファイバーなど高速回線が主流であることを考慮して、楽曲の冒頭から最高のビットレートで再生されるように設計されている。「出だしの印象」で音が悪い、と思われないための工夫だという。ただしその代わり、ギャップレス再生には現時点で対応できないという。

強化電源でグレードアップ!好みの音質を探る楽しみも

ここからは もうひとつのテーマ、電源の強化をテストする。高剛性のフルメタル筐体を採用するAS2を背面から見ると、右側にある3ピンの電源インレット端子の隣に、丸型の2ピン端子が搭載されていることに気がつく。その端子を利用し、12Vを出力できるサードパーティ製パワーサプライを利用できるのだ。

電源コネクタの左隣に12Vdcと記載のある端子を装備。ここから強化電源の接続が行える

誤解しないでほしいのは、そもそもAS2の電源回路のクオリティは決して悪くない。スイッチング電源から供給された電源をリニアレギュレータ回路により降圧することで、スイッチングノイズを除去する電源回路が入っている。これは第一世代の最上位モデル「XS20」にも搭載しており、音質アップに貢献した回路だ。

その上での話だが、ユーザーは自己責任においてさらに電源の高品位化にチャレンジできる。実はこの機能を活かしたところ、確実な音質向上効果が狙えて、音調のコントロールもできることが判明した。

今回は同社が正式に推奨する2メーカーのパワーサプライと組み合わせる。ひとつは東京・秋葉原のPCオーディオショップ、オリオスペックの「canarino DC power supply 12V」。もうひとつは香港・エディスクリエーションの「LPS “JAPAN STANDARD MODEL”」である。ちなみに、接続に必要な専用ケーブルについてはいずれもオリオスペックで発売している。

まずは、オリオスペックの「canarino DC power supply 12V」から。複合共振型スイッチング方式を採用するダイトロン社製スイッチング電源を搭載し、従来比で約1/10の出力ノイズレベルを達成した。

オリオスペック「canarino DC power supply 12V」(176,000円/税込)

この組み合わせでの音質は、一聴して聴感上のノイズフロアが下がり、低音域から高音域までの微小レベルの明瞭度が上がる。帯域バランスについては若干スッキリ傾向となり、ノラ・ジョーンズのボーカルはより立体的で、伴奏するピアノの倍音が美しい。クーベリックのサウンドステージのデプスは深く奥行きが出てくる。

次は、エディスクリエーションの「LPS “JAPAN STANDARD MODEL”」。高品位なネットワークスイッチや光アイソレートBOXを発売する人気のブランドであるが、個人的にかなりインパクトのある結果となった。大きく躍動感と迫力が増してグイグイと音が出てくる。ノラ・ジョーンズはピアノタッチがより立ち上がり、ボーカルの力感が出るし、クーベリックはオーケストラの壮大さが大きく増す。

EDISCREATION「LPS JPSM」(148,500円/税込)

クラシックやマルチトラック録音された現代ポップスはcanarino DC power supply 12Vと相性が良さそうで、ジャズやロック好きには良い意味でのアナログ的な元気の良い音に変化するLPS “JAPAN STANDARD MODEL”を推薦したい。

ローンチが待ち遠しい!QobuzとAmazonの音質差も先行でチェック!

今回の目的であるAmazon Musicのクオリティチェックについては、音質的な不安がなく満足できる結果となった。最後におまけとして、今年サービスインが予定されているQobuzの音をノラ・ジョーンズとクーベリックでチェックしてみた。音調とディテール表現は若干違い、Qobuzはよりハイファイ傾向の音、Amazon Musicは歪みのないまろやかな音がする。ストリーミングサービスの違いに加えて、ファイル形式による違いも存在するため、どちらが優れているとは現時点で一概には言えないが、さまざまな聴き比べが実現できるのは今から楽しみだ。

そして、ここで改めて感じたのは、アプリが素晴らしい。いうまでもなく、Qobuzの音源もプレイリストに追加して、ローカルファイル、Amazon、Qobuzとワンタップで聴き比べができる。fidata Music Appの快適な操作感のおかげで、ハイレゾからストリーミングまで全ての音楽ソースを、機材の操作性に惑わされることなく再生でき、音楽に集中できたことを最大限評価したい。

AS2を使えば、パソコン等では実現できない複雑な設定や機材構築から解放され、ベストな音質を自身のオーディオシステムから出すことができる。ハードウェアとソフトウェアの両面から、使い勝手の完成度を高めてきた事実に注目だ。一人のオーディオファイルとしてfidataの開発チームに拍手を!

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