EVよりも安い?BYDがガソリン車の価格戦を巻き起こす

BYDがガソリン車の価格戦を巻き起こしている。写真は秦PLUS DM-i。

中国の電気自動車(EV)最大手BYD(比亜迪)の秦PLUS DM-iが2023年2月10日に正規価格の9万9800元(約200万円)で発売され、「EVはICE(内燃機関)と同価格」の第1弾が打たれ、BYDの値下げイヤーが始まった。

「EVはICEと同価格」とは、同クラスのガソリン車の価格でより良い体験のハイブリッドモデルの車を購入できるということだ。これまでハイブリッド車の販売価格はガソリン車より高い傾向があった。

BYDは秦PLUS DM-iの販売価格を初めてAクラスのガソリン車と同じ範囲に引き下げ、「EVはICEと同価格」を実現した。秦PLUS DM-iのライバルとなる主力モデルには東風日産のシルフィ(軒逸)、上汽フォルクスワーゲンのラヴィーダ(朗逸)、一汽トヨタのカローラなどがある。

値下げを受け、秦PLUS DM-iの2023年の販売台数は前年比63%増の30万台となった。一方で、シルフィの販売台数は同クラスで依然としてトップではあるが、22年の42万台から38万台に減少した。

Aクラス車市場は中国で最も販売台数が多く、ガソリン車が主体の市場でもある。23年の中国のAクラス車の販売台数は958万台で、うち新エネ車は226万台、新エネ車のシェアは23.59%で、業界平均水準の35.7%よりも低い。

新エネ車以外のAクラス車のシェアはほぼ外資系ガソリン車が占めている。シルフィは38万台、ラヴィーダは35万台、カローラは18万台を販売した。

業界リーダーのBYDが新エネ車のシェアを高めるにはどこから拡大できるか。それは必然的にガソリン車市場で特に外資系メーカーからシェアを奪う必要がある。

BYDは24年2月19日に秦 PLUS DM-iの栄耀エディションを発売した。販売価格は7万9800元(約160万円)から。昨年のチャンピオンエディションから2万元(約40万円)引き下げ、「EVはICEよりも安い」というスローガンを掲げた。「EVはICEよりも安い」とは、新エネ車の販売価格がガソリン車よりも低いことを意味する。

新型の秦PLUSプラグインハイブリッドが発売された日、五菱「星光」、長安「啓源A05」、吉利「帝豪L Hi・P」、北京現代「新エラントラ」などの競合車種もすぐに値下げを発表した。

テスラは1日、「3月末までにModel 3/Yを最大で3万4600元(約70万円)値下げする」と発表した。

小鵬汽車は3日、「3月31日までに小鵬G6の全モデルを期間限定で2万元(約40万円)値下げし、販売価格を18万9900円(約380万円)からとする。小鵬P7iの鵬翼性能エディションを最大で5万元(約100万円)値下げし、販売価格を20万3900元(約408万円)からとする」と発表した。

23年の「EVはICEと同価格」から24年の「EVはICEよりも安い」に至るまで、BYDの継続的な値下げは競合相手に打撃を与え続けている。これはシルフィ、ラヴィーダ、カローラなどの伝統的な外資系ガソリン車だけでなく、損失の泥沼にあえぐ新エネ車ブランドにも巨大な生存圧力をかけている。

中国自動車協会の陳士華(チェン・シーホア)副秘書長は、「新エネ車市場が23年と同じくらい激しく争うならば、24年には多くの新エネ車企業の経営が難しくなるだろう」と述べた。

高合汽車は春節明けに6カ月の操業停止を発表した。24年に倒産する初の新エネ車メーカーになるかもしれない。

これは新エネルギー産業の優勝劣敗を加速させ、24年の中国の新エネ車市場が平穏ではないことを意味する。(編集/CL)

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