女性が罹患しやすい「乳がん」 涙で発見する研究進む 社会実装に向け奔走する神戸大学認定ベンチャー

乳がんを「涙」で発見できる技術 研究者に聞いた

女性が最も罹患しやすいがん「乳がん」。それを“涙”で発見するという新たな検出法が注目を浴びている。研究を行うのは神戸大学認定ベンチャーの『株式会社TearExo』(神戸市灘区)。代表取締役の堀川諒さんに話を聞いた。

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【拡大画像】検査のための涙を採取する「シルマー試験紙」

最近、がん細胞から放出される「エクソソーム」という物質が、がんの悪性化や転移に深く関わっていることが明らかとなった。体中のあらゆる細胞から分泌されているというエクソソームは涙の中にも含まれているため、乳がん細胞から放出されたエクソソームを見つけることでがんを早期発見する技術を、堀川さんは研究している。涙は「シルマー試験紙」に吸わせて採取する。

様々な検査を行うために使う体液は、血液や尿が主流だった。「これまで、涙での検査はほとんど行われてきていませんでした。しかし、涙は血液がろ過され流れてきているもの。血液に含まれる成分の一部は涙にも入っているのです。採取時に痛みがない点にも着目しました。また、尿や唾液などに比べて涙は抵抗感のない体液だと感じていることから、検査のハードルを下げることができると期待しています」と堀川さん。

「涙での検査は、もともと神戸大学の竹内先生が研究されてきた技術でした。これをビジネス化して社会に持っていくときに、いろんな方にお話しさせてもらうと、『ぜひやってみたい』と言っていただけます。やっぱり“涙での検査”は皆様に使っていただきやすいと感じています」(堀川さん)

乳がん検診では主に乳房専用のレントゲン検査・マンモグラフィが行われ、この検査を受けることで生存率を伸ばすことができるとのエビデンスもある。「確立された方法として非常に素晴らしい検査ですが、痛いという声を多く聞きます。また、仕事を休んでいかないといけない、予約を取るのが面倒など、検査を病院でしなければならないがゆえのハードルがあると感じています。それを解消するための最初の第一歩として、この検査キットを使っていただければ」と堀川さんは語った。

現在は、社会実装を目指して研究開発を行っている段階。2025年大阪・関西万博の出店候補企業として選ばれていることから、万博のタイミングでは社会実装できるよう、一丸となって研究開発を進めているという。堀川さんは、「涙一滴で検査ができることで、病気から来る心配や恐れから皆さんを解放することができるのではないかと思っています。その世界の実現に向けて、引き続き頑張っていきますので応援していただけるとうれしいです」と呼び掛けた。

※ラジオ関西『こうべしんきん三上公也の企業訪問』2024年2月27日放送回より

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