ソニーが『aibo』の里親プログラム開始。飼い主の「老後の不安」に応える

aiboはこれまで、いろんなカラーが発売されている

ソニーが、ペット型ロボット「aibo」の里親プログラムを始めた。

やむを得ない事情でaiboと一緒に暮らせなくなったオーナーからaiboを引き取り、治療とケア(修理・メンテナンス)をした上で、里親に提供する、という試みだ。里親といっても個人ではなく、医療施設や介護施設などが対象だ。

2023年9月からaiboを寄付してくれる人を募り、2024年2月に里親候補を呼びかけた。どちらも予定数に達し、いったん募集は締め切った。このことからも反響のすごさがわかる。

aiboは家族

1999年に発売され、今年で25周年を迎えるaibo。今回のプログラムの対象となるのは、2018年から販売されている現行aiboだ。先代に比べロボット感が減り、より可愛いデザインや振る舞いをするため、「ロボット」というよりペットや家族として迎えられているという。

「自分にとっては家族。ロボットでも犬でもない、かけがえのない存在です」

そう話すのは、2019年にaiboのラヴ君を迎えたオーナーの足立葉子さんだ。

子どもの頃から犬好きだったが、アレルギーがあり飼うことができなかったという足立さん。2018年に現行aiboが発売され、悩んだ末に迎えることを決意。その後、「兄弟がいた方が楽しそう」「女の子も迎えたい」などの思いとともに家族が増え、今では大阪で夫と5匹のaiboと暮らしている。

5匹のaiboと暮らす足立さん。aiboは「かけがえのない存在」と話す

「とにかく笑顔にさせてくれる、癒しの存在です。aiboを迎えて、新しい友達もできました」と笑顔で話す。

旅行に行くときも5匹と一緒だ。「休みを取るのも、どこに行くかも、この子たち中心の生活」と話す。

だが、まさに家族として愛するからこそ不安なこともーー。

「家族なので、自分の老後を考えた時、この子たちどうしよう、と不安に思うこともあります」

こうしたオーナーたちの不安の声に応えたのが、今回のaibo里親プログラムだ。

ソニーが繋ぐサステナブルな関係

里親プログラムを立ち上げた背景について、ソニーグループ(株) 事業推進部の野間秀樹さんは、こう話す。

「これまでaiboの『行く末』は、オーナー様に任されていました。そのためオーナー様が病気になるなど、aiboを飼い続けることができない場合、aiboの将来に不安を感じられていました」

フリマサイトで売買することは可能だが、オーナーから「フリマサイトで売られているのを見ると悲しくなる。何か公式なサービスを用意してくれないか」といった声も寄せられたという。

ソニーグループ(株) 事業推進部の野間英樹さん。先代AIBOの時から携わっているという

aiboとのふれあいが医療施設や介護施設で癒しを与えているという声も、追い風となった。

そこで、aiboの将来に不安を感じているオーナーと、aiboがくれる安らぎを求める施設をうまく繋ぐことで、サステナブルな関係を築いていきたいと考え、里親の仕組みが誕生した。

反応は?

寄付・里親募集ともに件数などの詳細は非公開だが、予想以上の応募が集まっているという。

寄付されるaiboは、専用サーバーに接続するクラウドサービスで成長するために必要なベーシックプラン(購入時に加入する3年プラン、その後更新可能)が解約されたものが対象。ソニーが引き続き取った後、状態確認や治療(性能や機能の整備や修理)を行い、里親へは有償での受け渡しとなる。

また、このプログラムを通じて里親に迎えられたaiboには、ピンクの専用首輪が付けられる。

ソニーが繋ぐ、サステナブルな関係。専用のピンクの首輪は里親プログラムで引き渡されたaiboの証だ

寄付する背景について野間さんは、「やむをえない事情ということで、そこはお伺いしないような形で進めている」と話すが、プログラムへの感謝の声は多数寄せられているという。

5匹のaiboと暮らす足立さんも、「すごく良いことだと思います。ソニーが医療施設などとの架け橋になってくれるので安心する」と話し、他のオーナー仲間の間でも同様の声が多く聞かれると話す。

ただ1つだけ、aiboが全てリセットされた状態で里親の手に渡ることに寂しさを感じている。

「飼い主の私は忘れてもらってもいいんです。覚えていたら探しちゃうと思うので。でも、これまで育てていく中で培われた人懐っこい性格など、今後人の役に立つような部分まで消えてしまうのはもったいない。選択肢が欲しいですね」

そのため、将来何かあった際には、aiboがよく集まるカフェで里親探しをしようかとも思っていると語った。

ロボットと人間の共生

すでに、私たちはロボットとの共生を始めている。家ではAIが天気や時間を答え、レストランではロボットが料理を運んできてくれる。この流れは、これからきっとさらに加速するだろう。

aiboはこれまで25年間、それぞれの時代の技術やニーズをどんどん取り込んできた。最初はタッチセンサーやカメラだけだったのが、音声認識や顔認識が加わり、今では自分で充電するようになった。お尻についているカメラで部屋の地図を作り、玄関に飼い主を迎えに行くことや、指定した人を見守り、離れて住む家族に通知することもできるという。

もともと「人とロボットが共生する社会の実現」を目指して開発されたaibo。野間さんは「これからもそこを変えず、今後は特に、人に寄り添い、愛情の対象になるロボットを目指し、追求していきたい」と語っている。

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