福島県、熱中症対策強化へ 避暑施設全県に500カ所 新年度 情報共有体制構築も

 近年の記録的猛暑を受け福島県は新年度、県内全域の商業施設や公共施設に避暑施設を設け、県民が気軽に涼める場所を確保するなど熱中症対策を強化する。熱中症リスクが特に高まる日の前日に国が出す「熱中症アラート」を県民に早く、確実に伝えるための情報共有体制も構築する。こうした県の取り組みは環境省のモデル事業に採択され、全国の先進例になり得る。昨夏に県内初の40度台を記録。熱中症による搬送者数も過去最多となるなど暑さからの県民保護は急務となっている。

 避暑施設の設置先は冷房が完備され、椅子などのある休憩スペースを対象とする。「ふくしま涼み処」と名付け、公共施設の他、地域住民が買い物や外出の際に気軽に立ち寄れるようスーパーやコンビニ、ドラッグストアなどへの設置を見込んでいる。暑さが本格化する前の6月から登録を始める。最新の設置状況は県のホームページなどを通じて周知する。

 県によると、県内では現在11市町村が約300カ所に暑さを避ける同様のスペースを確保している。県は今後も見込まれる猛暑に備え、県内全域に拡大する必要性があると判断した。県内で500カ所以上の登録を目指し、市町村などと既に調整を進めている。全県で営業展開している企業の店舗や事業所からも協力を得たい考えで、さらなる拡大を見込んでいる。

 熱中症の危険性が特に高まった際に注意を促す「熱中症アラート」の伝達体制も整える。59市町村や各業界団体、企業などでつくる「ふくしまカーボンニュートラル実現会議」などの枠組みを用い、官民一体で猛暑への備えを強める。県はアラートが出た場合、実現会議の構成機関にメーリングリストで情報を共有。市町村や団体、企業から県民や会員事業所、従業員への確実な情報伝達に努めてもらい、熱中症の抑制を図る。

 県内では昨夏、県内の観測史上初めて40度台を伊達市梁川町で記録。熱中症アラートは前年度の約10倍となる19回発表され、熱中症搬送者数が過去最多の1840人となるなど多くの影響が出た。

 4月施行の改正気候変動適応法に基づき、熱中症対策は地方公共団体の役割と位置付けられる。県環境共生課の担当者は「猛暑から県民の健康を守るため、市町村や県内企業と連携し、万全な対策につなげる」としている。

 環境省のモデル事業には、社会福祉協議会との連携を図る楢葉町の取り組みなど、県の事業を含め全国から9件が採択された。

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