ハルカス・元球場前・古墳群・ブドウ園を狭軌で疾走→橿原神宮へ 近鉄最古の路線「南大阪線」魅力探訪

近鉄南大阪線の準急・河内長野行に乗車

◆鉄アナ・羽川英樹「行ってきました!」

大正期に近鉄の前身である大阪鉄道が全通させた「南大阪線」は、『大阪阿部野橋』と『橿原神宮前』の約40キロメートルを結んでおり、近鉄では少数派の狭軌の路線です。あの思い出の球場前を通り、世界文化遺産の古墳群の間を縫うように走り、中間駅では車両の増解結風景などにも出会えるなど沿線は見どころいっぱいなんです。

【動画】鉄アナが取材レポート! 近鉄最古の路線「南大阪線」の『大阪阿部野橋』~『橿原神宮前』を行く

起点の『大阪阿部野橋』は、今月10周年を迎えた高さ300メートルのあべのハルカスの1階にホームがあり、近鉄全駅で一番の乗降客数を誇ります。6つあるホームからは吉野線に直通する特急なども発車していきます。今回はまず4両編成の準急・河内長野行に乗り込みます。

次の駅『河堀口』は(こぼれぐち)と読みますが、他にも南大阪線には『布忍』(ぬのせ)、『土師ノ里』(はじのさと)、『当麻寺』(たいまでら)、『浮孔』(うきあな)など、難読駅名がズラリと並んでいます。

大阪市内の駅を高架区間で通過して、大和川を渡ると地上に降りて松原市に入ります。最初の準急停車駅である『河内松原』には、『大阪阿部野橋』を出てから8駅を通過しますが、わずか9分で到着します。

次の停車駅は南大阪線の途中駅では最も利用客の多い『藤井寺』。ここは2005年まで、あの近鉄バファローズの本拠地・藤井寺球場があったところです。私も局アナ時代によく取材に行きましたが、強烈なヤジが印象的でした。また当時の近鉄のエース・鈴木啓示投手が300勝を達成したのも、この球場でした。現在、この場所には四天王寺小学校と四天王寺東中学校・高校が建ち、その一角に球場跡の記念碑が建っています。

『藤井寺』を出てすぐの踏切では珍しいシーンに出会うことができます。なんと沢田八幡神社の境内の中を電車が通りすぎていくのです。このあたりは古墳がたくさんあり、それを避けて迂回するにはこのルートしかなかったとのこと。

そして次の『土師ノ里』(はじのさと)の駅の真ん前には鍋塚古墳がこんもりとたたずんでいるではありませんか。他にもこの駅周辺には仁徳天皇陵に次ぐ全長425メートルの「応神天皇陵」をはじめ、4~5世紀にできた仲津山古墳や三ツ塚古墳など数多くの古墳が点在し、世界文化遺産の「古市百舌鳥古墳群」を形成しています。

かつて玉手山遊園があった『道明寺』からは、近鉄で最も古い歴史をもつ道明寺線が『柏原』までの2.2キロメートルを結んでいます。

『古市』は羽曳野市の中心駅。南大阪線の中間拠点であり、乗務員の交代もこの駅で行われます。そしてこの駅では朝夕を中心に実施される車両の増解結風景が有名なんです。この駅を境に乗降客数に大きな差が生じるため、2両が4両や6両になるなどのシーンをホームで見ることができます。駅員の誘導のもと、わずか20秒ほどで素早く増解結作業が行われていきます。

ここで河内長野行・準急とお別れして、橿原神宮前行の区間急行に乗り換えます。『駒ヶ谷』あたりからは景色が変わり、あちこちにブドウ園が目に入り始めます。奈良県に入り標高517メートルの二上山は、雄岳と雌岳が美しい姿を見せてくれます。

このあと特急停車駅で御所線を分岐する『尺土』や『高田市』を経て、終点『橿原神宮前』には『大阪阿部野橋』から約40分で到着。吉野・西大寺・京都方面はお乗り換えです。名建築家・村野東吾の設計による歴史と風格をもつコンコースが出迎えてくれ、この駅では標準軌の橿原線から京都に向かう特急や、桜の季節は大人気の狭軌の吉野線の特急・青の交響曲(シンフォニー)にも出会うことができます。

そして駅から10分ほど歩いたところ、畝傍山のふもとに初代・神武天皇が祀られる橿原神宮が鎮座します。高さ10メートルの木造鳥居から300メートル続く参道を歩くと、外拝殿の横の畳14畳分の大きな絵馬が目に飛び込んできます。境内はまさに日本の歴史・文化の発祥地という神々しさに包まれていました。

近鉄の中でも最も古い歴史をもつ南大阪線沿線は見どころがいっぱい。桜の吉野と絡めてぜひ春に訪れてみてください。(羽川英樹)

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