ミヤマキリシマを増やそう 雲仙の国立公園指定100年へ 雑草除去や観光を組み込んだツアー 初の体験会

ミヤマキリシマの生育を妨げる低木や下草を刈る参加者=雲仙市国見町

 雲仙地区の国立公園指定100周年に向け、ミヤマキリシマを増やそう-。雲仙市の環境保全団体などは、ミヤマキリシマの生育を妨げる低木や雑草除去と観光を組み込んだツアーを新年度中にスタートする。指定90周年を迎える16日を前に、初の体験会が11日、同市国見町の田代原(たしろばる)であり、県内外の登山愛好家や住民ら約30人以上が参加した。
 体験会はNPO法人奥雲仙の自然を守る会、熊本市のアウトドア専門店、島原半島観光連盟、環境省雲仙自然保護官事務所主催。
 ミヤマキリシマはツツジの一種。直径1~2センチの濃淡鮮やかなピンクや白などの花が毎年5月ごろ咲く。田代原では同法人が年20~30回、保全活動をしているが現状維持がやっと。そこで、ツアーを環境保全と観光を結び付けた「エコツーリズム」として商品化。インバウンド(訪日客)も含め幅広い年齢層を対象にしている。
 この日の参加者は、田代原にある同法人事務所でサツマイモの粉を練り、麺にした島原半島名物「ろくべえ」作りを体験し、ちらしずしなどとともに味わった。この後、同法人の山本哲也さん(32)が「雑草を食べる牛などの放牧が減って森が増え、1932(昭和7)年に880ヘクタールあった群落が、今では10~15ヘクタールになった」などと現状を説明した。

大正から昭和初期の絵はがき「野岳のつつじ及(および)ゴルフ場と矢岳」(ブライアン・バークガフニさん提供)

 参加者は田代原草原に移動し、病原菌を持ち込まないよう消毒用の消石灰を踏み締め入場。同法人の中田妙子代表(64)が「国有林、国立公園、国の特別名勝の指定があり許可なく活動できない」と語り、牛が食べないトゲのある低木や雑草の刈り方を指導。参加者は鎌などを手に体験した。
 熊本県合志市のピアノ講師、牧百合さん(60)は「趣味の登山で自然の恩恵を受けるので、恩返しできてうれしい。ミヤマキリシマはとてもきれいな花。保全に少しでも役立てれば」。中田代表は「多くの人に楽しみながら参加してもらい『自分がきれいにした』という達成感を味わってほしい」と語った。

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