犯罪被害者支援-内容に差、行政も力を 県内自治体6割以上で条例制定へ

 全国的に各自治体で犯罪被害者支援条例の制定が進んでいる。県内では既に16市町村で整備されており、本年度末までに全市町村の6割以上で制定される見込みだ。ただ、犯罪被害者への見舞金や給付金の有無など、被害者を支える内容には違いもある。やまがた被害者支援センター(寒河江浩二理事長)など、民間のサポートも手厚くなる中、行政からの支援のさらなる充実が求められている。

 県の犯罪被害者支援条例は2010年3月施行と、全国で3番目に早かったが、市町村の動きは遅かった。突然、犯罪や事故などに巻き込まれた被害者やその家族は、普段通りの生活や仕事ができなくなるだけでなく、心身に影響が残ることもある。「誰でも被害者の立場になる可能性はある」と同センターの担当者は話す。資金面も含めた行政の支援は欠かせない。昨年6月現在で制定済みは、南陽や山形、朝日など5市3町だった。その後、県警やセンターの働きかけもあり、米沢、金山、真室川の各市町でも制定された。3月定例会で条例に関する議案を上程し、可決したのは酒田市など5市町村で、現在審議中の自治体を含めると本年度内に6割の自治体で整う見通しだ。

 ただ、制定した自治体でも、独自の見舞金や経済的支援など、内容には違いがある。山形、新庄、長井の各市などでは、亡くなった被害者の遺族や、大けがをした被害者本人に10万円から数十万円の見舞金を支給している。一方、導入を見送った自治体の担当者は「実際に被害者から求められたケースがなく、予算化しにくいのが現状だ」と明かす。

 同センターの関係者は「付き添いや相談対応はボランティアでもできるが、経済的な支援などは行政に力を発揮してもらいたい」と指摘する。内容に差異はあっても、自治体が支援する根拠となる条例の整備が進むことは、被害者支援の取り組みでは大きな希望の一つ。被害者の要望に応える内容に充実させるとともに、同センターなどは残る4割の自治体でも条例を整備するよう要望している。

犯罪被害者支援条例 2021年3月に政府が策定した第4次犯罪被害者等基本計画で、各自治体での条例制定を求めている。条例を整備することで被害者が切れ目なく支援を受けられるようにし、相談窓口の一本化や被害者への見舞金支給、生活資金や転居の支援など、サポート態勢の充実が図られることが期待される。

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