「なんでいつも私ばっかり…」遠方の家族の面倒を押し付けられた「長女の嘆き」

ファイナンシャルプランナーの筆者のもとに、50代の女性が相談に来られました。遠方に住む父の介護問題で悩んでいるとのこと。「長女というだけで、介護を押し付けられるのって変じゃないですか?」という彼女に、どのような葛藤があったのでしょうか。

<相談者プロフィール>

●相談者:佐々木満子さん(52歳・仮名)

・会社員
・大阪在住
・夫とふたり暮らし
・年収420万円(手取り23.3万円/月・ボーナス46.6万円/年)

●父:藤田満さん(79歳・仮名)
・無職
・茨城県在住
・ひとり暮らし

●妹:高橋洋子さん(49歳・仮名)
・専業主婦
・千葉県在住
・夫、子どもと3人家族

久々に帰省するも、文句ばかりの父

夫の転勤に伴い茨城県から大阪に引っ越した満子さん。なかなか実家に帰れず、実家でひとり暮らしをしている父のことが気になっていました。3年前に母を亡くし、ちゃんと食事や生活ができているか心配だったのです。

まとまった休みが取れたある日。夫と2人で久しぶりに実家を訪ねたところ、父は喜ぶどころかまさかの“文句の嵐”。

「洋子はときどき帰ってくるのに満子は来ない」

「仕事がある? そんなことは知らん!」

「そもそも女の仕事は子どもを産んで育てること。働かせている夫が悪い!」

と、いまだに昭和の価値観そのまんま。足を悪くし家事に苦労していたことも、不満がたまる一因になっていたようです。

「今は共働きが当たり前でしょ!」とカチンときた満子さんでしたが、たしかに2年も帰らなかった自分も悪い。「これからはときどき顔を見せるから」と約束して、大阪に戻りました。

始まった父親からの電話攻撃

その帰省がきっかけとなったのか、翌朝から父の電話攻撃が始まりました。

話の内容は「ごみの分別ってなんだ?」「回覧板はどこにまわす?」「町会費の集金がくるらしい」など、ささいなこと。時間を気にせず携帯にかけてくるので、仕事中も気が休まりません。

また、介護保険の申請を手伝ってほしいらしく、「いつになったら帰ってくるんだ!」と怒られることも度々です。

「これは大変なことになったぞ!」

父親に何が起こっているのか分からないまま、急きょ仕事を休んで実家に帰ることにしました。

勝手に決まった「キーパーソン」。親の介護は長女の仕事?

数日実家で過ごして分かったのは、ご近所さんの優しさでした。回覧板やごみの収集など、身の回りのこまごまとしたことを、足の悪い父に代わり厚意で手伝ってくれていたようです。

ただ、いつまでも甘えているわけにもいきません。父が満子さんに電話攻撃をした理由もそこにありました。

そうであればと、今後必要になりそうなことはメモに残し、介護認定のための訪問調査に同席。地域包括支援センターにも足を運び、地域のサポートが使えるように道筋をつけました。

「これでしばらく、電話がかかってくることはない」

そう思いこんでいた直後に、今度はケアマネジャーから急ぎの連絡が相次ぐようになったのです。

介護の現場では、ケアプランの作成や緊急時の対応、治療方針の決定など家族の意見を聞くことが増えています。ただ、家族それぞれの想いが違うと医療者側も困ります。そこで家族の代表者となるキーパーソンを決め、何かあるとその人に連絡を取るようになってきました。

満さん家族の場合、長女であり訪問調査にも同席した満子さんが適任ではないか。ケアマネジャーの助言もあって、父が本人に相談もないままキーパーソンを決定。どうりで連絡が来るはずです。

「長女だからって、なんでいつも私ばっかり……」

嘆く満子さんでしたが、夫から「このままでは君が先に倒れるよ」と言われたことが転機に。満子さんの負担軽減についてできることを探っていきます。

●遠方の実家への帰省は思った以上にお金がかかるもの。満子さんの負担を見える化し、負担を減らすための3つの対策を考えました。後編【50代女性「長距離介護」で月収の3割が吹き飛ぶ厳しい現実…負担減に向けたFPからの「3つの提案」】で詳説します。

辻本 由香/つじもとFP事務所代表・一般社団法人WINK理事

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、相続手続カウンセラー、50代からのくらし(医・職・住)と資産を守るファイナンシャルプランナー。おひとりさま・おふたりさま×特有の課題・お金の問題の事例などが得意分野。企業の会計や大手金融機関での営業を経て、2015年に、保険や金融商品を販売しないFP事務所を開業。個別相談の他、企業・病院・大学などでの講演も行っている。

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