高校進学で島を離れる「15の春」 沖縄の小規模離島で涙の卒業式 

 沖縄本島南部や周辺離島の中学校で9日、卒業式が開かれた。高校のない小規模離島の生徒にとって、高校進学のために親元、そしてふるさとを離れる「十五の春」。卒業生は、涙交じりに仲間に感謝を伝え、新天地での夢を語った。

■粟国の3人 家族や友へ惜別

抱え切れないほどの花束や菓子を手にする粟国中学校3年の(左から)玉寄龍樹さん、新城もあさん、濱川あさひさん=9日、粟国村の同校

 【粟国】粟国小中学校(平仲健校長)の卒業式が9日、同校で開かれ、小学6年生2人と中学3年生3人が学びやを巣立った。粟国島は高校がないため那覇市内の高校へ進学する中学生3人は、家族や仲間への思いを語り、涙ぐむ場面もあった。

 転校生が来て4人になった時期もあったが、中学を卒業した3人は幼小中と共に成長。そのうちの一人、新城もあさんは「バドミントン部ではキャプテンとして苦しい練習を乗り越え、県大会出場という目標を達成できた」と晴れやかな表情だった。

 玉寄龍樹さんは「いつも一緒だった家族は一番の心の支え。父と母はいつも自分のことは後回しで僕のことを考えてくれた」。濱川あさひさんは「幼稚園から一緒にいる時間が長くて嫌になるときもあったが、中3になり、やっぱり私のことを分かってくれるのは2人だなと思う」と言葉を詰まらせた。

 小1から中3までが手をつないでGReeeeNの「遥か」を合唱した。

 会場には卒業生のきょうだいや親戚も訪れ、終了後にお菓子やバルーンを贈っていた。(宮本真理通信員)

■阿嘉の2人 未来見つめ

在校生や先生、保護者に囲まれ笑顔の卒業生=9日、座間味村立阿嘉小中学校

 【阿嘉島=座間味】座間味村立阿嘉小中学校(神里吉竹校長)では、小学生3人と中学生2人が卒業した。中学卒業生の木舩滉生(きぶねこうせい)さんは、保護者や地域の人、先生に9年間の感謝を述べ、「進学先の那覇商業高校情報処理科で専門知識をしっかりと学びたい。将来はその知識を生かした仕事に就きたい」と抱負を語った。

 4月から沖縄本島の中学校に進学する石川生来(いくる)さんは、阿嘉島での日々を級友たちと振り返り、「中学では大好きな野球を頑張る。甲子園に出場する」と力強く宣言した。卒業式には地域の人も多く参加し、温かく卒業生を見送った。(渡慶次那津子通信員)

■南大東の11人 感謝いっぱい

南大東中学校を卒業した卒業生と父母ら=9日、南大東村・同中学校

 【南大東】南大東中学校(仲間一史校長)の卒業式が9日、同校体育館であり、11人が卒業した。全員が島を離れることになる卒業生は、教師や家族、島民に感謝し、卒業証書を受け取った。涙を流す保護者の姿もあった。

 卒業生代表としてあいさつした、池田七星(ななせ)さん(15)は「この島に生まれ、この校舎で仲間たちと過ごした15年間は本当に幸せだった」と語った。

 仲間校長は「島に誇りを持ち続け、それぞれの夢に向かって羽ばたいてほしい」とエールを送った。(沖山茂通信員)

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