自民党議員が女性ダンサーに〝不適切行為〟 憂慮するダンス業界「お触りダメ」「モラルのないセクハラ」

和歌山市内で開催された自民党の若手議員らの懇親会で、会場に招いた複数の女性ダンサーに対して議員らが〝不適切〟とみられる行為に及んでいたことが明らかになり、物議を醸している。その一方で、女性ダンサーに対する理不尽な偏見の目も一部で起きているという。自身もベリーダンサーであるジャーナリストの深月ユリア氏が、今回の件を憂慮するダンス業界の関係者に見解を聞いた。

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複数の報道によると、昨年11月18日に自民党青年局近畿ブロックの有志による懇親会において、「下着姿のような」露出度の高い衣装をまとったダンサーが招かれ、参加者はダンサーに口移しでチップを渡したり、尻を触ったりなどの「破廉恥(はれんち)」な行動があったという。ダンサーを招いたのは 県連青年局長の川畑哲哉県議で、同氏いわく彼女たちは「世界的ダンサー」だというが、真偽は不明だ。

川畑県議が11日、離党届を提出した。その場にいた藤原崇(岩手3区)、中曽根康隆(群馬1区)両衆院議員が党青年局の役職をいずれも辞任している。

複数の報道によると、ダンスのジャンルについて、川畑氏は「モダンダンスとかゴーゴーダンスと認識している」というが、ある出席者は「タップダンサーが来ると聞いていた」という。ダンスのジャンルすら理解せず招致するは何とも適当な企画だ。

自民党和歌山県支部連合会に取材したところ、「(懇親会に)参加していないので見ていません。ダンサーのチームがどこかも分かりません。川畑がモダンダンスかゴーゴーダンスと言っているなら、そうではないでしょうか」。ストリッパーや宴会コンパニオンの可能性はないのか?「それはないです」。日本人か、外国人か。「日本人だと聞いています」「詳しくは川畑に聞かないと分かりかねます」。

「川畑哲哉事務所」に取材依頼しても、「事務所不在が続き、いつ帰るか不明」という対応で、現段階で回答がない。

このダンサーが何者なのか、インターネット上で様々な憶測が飛び交っていた。「世界的に活躍するベリーダンサーではないか」「有名なバーレスクチームではないか」という憶測や、一方、「ストリップダンサーではないか」「ダンサーでなく、性風俗サービスではないか」という噂まで出た。中にはセクシーなイメージのあるダンサーに対する誹謗中傷もあり、ダンス業界は怒り心頭だ。

東京都にあるスタジオ・ベリーダンスコミュニティの代表・ベリーダンス講師のモカ氏は「一部の報道で、ダンスのジャンルがベリーダンスではないかと憶測で書かれました。ベリーダンスが『いかがわしい』イメージで書かれると、格が落ちるので迷惑です」と怒り心頭。「ダンスは伝統芸能でありリスペクト持って観賞するもの。ダンサーを触るものではありません」。モカ氏は今回の報道のようなモラルのない客にセクハラされたことがあるという。「100回以上宴会場で踊ったことありますが、チップをもらう会場で『腰のベルトに入れてください』と言っても、お尻を触ったり、胸の谷間にチップを入れてくるお客さんはいますね。ダンサーはイベントの雰囲気を壊さない為に苦笑いで我慢するしかなくなります。本当は嫌だし、つらいですよ」

バーレスクダンサー・社交ダンサーの広岡有沙氏に取材したところ、「バーレスクダンサーではないか、という噂を立てられて困っています」。インターネット上では「バーレスクダンサーだとしたら、バーレスクを観に行きません」というコメントもあった。

広岡氏によると「バーレスクダンサーとして活動している演者たちにチップはいいとしても、お触りなど絶対してはならない。 ましてや、世界的に活躍するダンサーならプライドがあり、お触りなどさせないと思う。ダンスはエンターテイメントであり芸術です。このようなニュースが流れて、セクシーな衣装を着たダンサーたちが、みんなそんなことをしていると思われたらと懸念です」。その上で、川畑氏らに対して、「政治家ひどいな。女性、そして国民を舐めているとしか言えない」と怒り心頭だ。

筆者はベリーダンサーでもあるが、ショーでチップをもらうことはあっても、「ダンサーに触れない」のが基本ルールであり、ルールに反しわいせつ行為を行おうとする客がいて、常軌を逸脱した行為で注意喚起してもやめない場合はイベント主催者の判断で強制退場させることも可能になる。今件でダンスに対する有らぬ偏見が生じないことを願うばかりだ。

(ジャーナリスト・深月ユリア)

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