デビュー31年目を迎えた市川由紀乃が新曲『ノクターン』をリリース 「相手をまっすぐ見つめる女性像は、10代、20代では実感を込めて歌えなかっただろうなと思います」

昨年、充実の30周年イヤーを完走した歌手・市川由紀乃が、新曲『ノクターン』をリリースする。制作は日本レコード大賞優秀作品賞を受賞した前作『花わずらい』の作家陣が再結集。モダンで洗練されつつも味わい深い世界観で、現代演歌の最前線を切り開く。インタビューでは多忙を極めた30周年の中でホッと一息ついた過ごし方や、お笑い好きな一面から生まれたキャラクター・トラック野郎☆ゆき五郎への意外なほど熱い思い、そして歌手・市川由紀乃“ソノサキ”について語ってもらった。


──タイトルからも市川さんの新しい歌世界を予感させる新曲『ノクターン』、まずは歌ってみていかがでしたか?

前作『花わずらい』と同じ先生方が再び集まってくださって、今回もいわゆる“演歌”とはちょっと違った味わいの曲になりました。前作はどちらかというと激しい感情が歌われていましたが、今回は静かな激情とでも言うのでしょうか、リズムが変化していく中に、女性の強さと弱さがゆらゆらと見え隠れする曲です。私自身、こういった歌詞の世界が大好きなので、自分の気持ちもスッと入っていけましたし、最初から最後まで感情が途切れることなく歌えました。

──「30周年を超えたからこそこの曲に出会えた」ということでしょうか。

デビューから20代いっぱいまで師事した市川昭介先生は、「耐える、忍ぶ、追いかける」そんな昔ながらの演歌の女性像をたくさん描いてくださいました。それは間違いなく、歌手・市川由紀乃の土台になっています。市川先生亡き後は、幸耕平先生がまた新たな歌の世界に私を導いてくださいました。『ノクターン』の歌詞にあるような相手をまっすぐ見つめる女性像も、10代、20代では実感を込めて歌えなかっただろうなと思います。

──衣装についても教えてください。前作はモダンで洗練された楽曲の世界観に合わせた、大きな花のヘッドドレスや黒レースをあしらった着物でしたが、今回はどんなこだわりを込められましたか?

実は楽曲が完成する前に衣装を用意する必要がありまして、幸先生に「この曲を色にたとえるとしたら?」と伺ったら、「紫かな」とおっしゃいました。その後、歌詞が完成して松井五郎先生とお話ししたところ、「この歌詞は青から赤へ変化する女性の気持ちを書いた」とおっしゃって。

──まさに紫!

そうです! そのお話を伺った瞬間、自分の中でじわじわ感動が込み上げてきました。衣装の仕上がりとしては、前作に続いて今回も和と洋の融合をテーマに、帯締めにはレザーのベルトを使っています。半衿にビーズがあしらわれていて、私もいろいろな着物を着てきましたが、こんなのがあるんだ! とびっくりしました。この半衿がなかなか重くて首にググッとのしかかりますが(笑)、その分、気合いも入ります。“チーム由紀乃”が一丸となって、市川由紀乃の世界を作ってくださっていることを、衣装からもひしひしと感じました。

──カップリングの『夢じゃさみしい夜もある』は、これまで市川さんのオリジナルにはなかった、可愛らしいメロディが新鮮です。

たしかにこんな可愛いメロディ、私で大丈夫かな? と思いました(笑)。「市川由紀乃の歌でほのぼのできる楽曲があってもいいじゃないか」というのが、先生方のお考えだったようです。幸先生と松井先生によると、イメージは島倉千代子さんの『愛のさざなみ』。これからの市川由紀乃の歌手像を築いていく上で、島倉さんのような幅のある歌手になってもらいたいという思いをこの歌に込められたそうです。

──島倉千代子さんといえば、市川さんが2019年の初座長公演でテーマにされた大先輩ですね。

はい。島倉さんの楽曲は昭和の流行歌と言いますか、演歌とも歌謡曲とも言い切れない味わいがあります。また最近、若い方や海外の方が昭和の日本の歌にとても注目してくださっています。編曲の佐藤和豊先生から、そうした懐かしさと現代性の融合を意識されたと伺いました。これからのコンサートで、また1つ大切に歌いたい楽曲に出会えたと感じています。

──表題曲、カップリングともに未来志向の楽曲ということですね。ところで昨年の30周年を迎えられる少し前から、“ソノサキ”というワードを付けたリサイタルやアルバムが多かったですが、どんな思いを込められたのでしょうか?

この30年間、時には壁にぶつかったこともありましたが、「歌が好き」という思いだけは変わらずに来ました。だから私はずっと未来まで歌い続けたい。そんな思いを表現するにあたって、“コノサキ”だとちょっと近い未来のような感じがしませんか? それよりも“ソノサキ”のほうが、まだ見ぬ未来へのワクワクが感じられるので、この言葉にはこだわっています。「まだまだ攻めていきますよ」という意味合いを感じ取っていただけたらうれしいですね。

──昨年11月にはカバーアルバム『唄女V~ソノサキヘ』をリリース。こちらは30周年特設サイトに寄せられたリクエストから選曲されたとのことですが、ファンのみなさんからのリクエストをご覧になって、どんなことを感じましたか?

吉幾三さんの『情炎』は亡くなった兄が大好きだった1曲で、そうした背景を知ってリクエストしてくださった方も多かったようです。また、意外だったのが天童よしみさんの『道頓堀人情』のリクエストがとても多かったこと。私のオリジナルには、いわゆる人生の応援歌はないのですが、だからこそ聞いてみたいというお声を多くいただきました。自分で選曲したら歌うことがなさそうな楽曲も多かったですし、そういう意味でもファンのみなさんと一緒に『うたいびと(唄女)』シリーズを作ることができたのは本当に幸せでした。

──“ソノサキ”に描いている夢はありますか?

いつか海外公演をしてみたいという夢はずっとあります。昨年のリサイタルではみなさんがよく知っている曲を新しいアレンジで届けるという試みをしたのですが、その国で好まれるアレンジに挑戦してみるなど、海外だからこそできることもあるような気がしています。最近は台湾などで日本の演歌、歌謡曲がとても人気だと聞いていますし、ぜひ現地で歌ってみたいです。

──海外といえば、2018年に「ハワイ日系移民150周年記念 美空ひばり音楽祭」に出演されていますね。

はい。美空ひばりさんの歌が、今なおたくさんの方に愛されていることを実感した舞台でした。また、海外の方はお着物をとても喜んでくださるので、歌はもちろん、衣装などでも和の文化をお伝えできたらうれしいなと思っています。

──この4月からはコンサートツアー「ソノサキノハジ真利」が始まります。本名の”真利”をタイトルに入れたのはなぜですか?

「30周年を区切りではなく新たな始まりの一歩にしたいね」とスタッフさんと話しているときに、“ソノサキノハジマリ”というタイトルが決まったのですが、「“ハジマリ”だったら本名を入れちゃえば?」ということで、このタイトルになりました。

──由紀乃さんと真利さんの違うところを教えていただけますか?

市川由紀乃は私だけではなく、チーム由紀乃みんなで作り上げている歌手。そういう意味では、本名の松村真利のようにパジャマやジャージでスッピンというわけにもいきませんし(笑)、やはりお仕事スイッチが入りますね。ただ、これからはそんな真利の側面をわかってもらうのもいいかもしれないという気持ちもあります。ありのままの自分というのでしょうか? 「これも私です」というところを少しずつ出していけたらいいなと思っています。

──コンサートの見どころを教えてください。

昨年10月のリサイタルで、“トラック野郎☆ゆき五郎”というコーナーが好評だったのですが、この“ゆき五郎”というキャラクターを今後レギュラー化していく予定です。私はもともとお笑いが大好きで、コンサートでも何かしらみなさんに笑っていただける要素を盛り込みたいとずっと思っていたんです。私自身、“ゆき五郎”になるとテンションがめちゃくちゃ上がってしまって、トークもほぼアドリブ。お客さんとの掛け合いが本当に楽しいです。なんなら“ゆき五郎”のソロリサイタルをやってみたいくらい(笑)。いいド演歌、聞かせますよ(笑)。

──市川由紀乃を差し置いて(笑)。

「それじゃあちょっと」というなら、1部・ゆき五郎、2部・市川由紀乃と2部構成で(笑)、市川由紀乃は真面目に歌います。歌というのは切なさとか悲しさなどいろいろな感情を喚起させるものですが、人を笑わせるってすごく難しいことだと実感しつつ、それでも笑いを届けられたらどんなに幸せだろうと思って取り組んでいます。先日、コンサートツアーのゲネプロを終えまして、ゆき五郎もかなり完成度が上がっていますので、みなさんに頭を空っぽにして笑っていただけるよう頑張りたいですね。

──昨年の30周年イヤーは本当に忙しかったと思いますが、“真利さん”に戻れる時間はありましたか?

休みがほとんどなかった分、とにかくスキマ時間でも楽しみたい自分がいて、アクティブに予定を詰め込みましたね。映画や舞台を観に行ったり、ほんの1時間だけでも学生時代の友だちと会ったり、1人でラーメンを食べに行ったり。カウンターでズルズルと麺を啜って大満足でした(笑)。

──市川さんがカウンターにいたらびっくりしてしまいます。

いえいえ、ぜんぜん気づかれないですよ。やっぱりラーメン屋さんはカウンターがいいですよね。お店では店員さんのお仕事を見るのが好きです。トッピングの卵やほうれん草をちゃんと温めてから載せてくれるラーメン屋さんは、やっぱりいいなと。冷たいままだとスープが冷めちゃいますから(笑)。そんな様子をジーッと観察して、丁寧なお仕事をされるラーメン屋さんには、けっこうな頻度で行きたくなります。

──そんなパワーチャージをしながら30周年を完走されました。ご自身へのご褒美は?

まだこれからです。昨年は母と一緒の時間がなかなか取れなかったので、2人でのんびり旅行に行きたいですね。どこがいいかなといろいろ計画中ですが、やっぱり京都や奈良——そして吉本新喜劇で思いっきり笑って、“コナモン”をお腹いっぱい食べて。そんな時間を作りたいと思っています。

──31年目の今年も、コンサートツアーはもとより『三波春夫生誕100年特別企画 三波春夫メモリアルコンサート』や『松平健芸能生活50周年記念公演』出演など充実の活動が控えています。

どちらもとても楽しみです。松平健さんは本当にお変わりがなくて、50周年を迎えられてさらにイキイキされています。私も子どもの頃から『暴れん坊将軍』を観ていたので、なんだか夢のようですね。まだ構成が決まっていないのですが、私も『マツケンサンバII』を踊らせてもらえるのかな?(笑) もちろん舞台袖で見せていただくだけでも幸せですが、もし踊れたら、リズム感がないなりに頑張りたいです。

──それでは『ノクターン』を携えて走り出した2024年、ファンのみなさんにメッセージをいただけますか?

これからの歌人生でまた1つ大切な、そして新しい幕開けとなる1曲が完成しました。これからもどんどん新しい挑戦をしていきたいですし、みなさんにもぜひそんな歌手・市川由紀乃を見守っていただけたら幸せです。そのためにもお互い健康で、元気に日々を過ごして参りましょう! コンサートでお会いできることを楽しみにしています。

市川由紀乃『ノクターン』ミュージックビデオ

市川由紀乃『ノクターン』

2024年3月6日(水)発売

品番:KICM-31128
価格:¥1,500(税込)

【収録曲】

1.ノクターン(作詞:松井五郎/作曲:幸 耕平/編曲:佐藤和豊)
2.夢じゃさみしい夜もある(作詞:松井五郎/作曲:幸 耕平/編曲:佐藤和豊)
3.ノクターン(オリジナル・カラオケ)
4.ノクターン(一般用カラオケ・半音下げ)
5.夢じゃさみしい夜もある(オリジナル・カラオケ)
6.夢じゃさみしい夜もある(一般用カラオケ・半音下げ)

市川由紀乃コンサート ソノサキノハジ真利

2024年3月6日(水)15時開演

会場:大宮ソニックシティ 大ホール
さいたま市大宮区桜木町1丁目7-5

料金:
S席¥6,000
A席¥5,000
(全席指定/税込)

※その他の公演情報はオフィシャルHPをご覧ください。

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