英郵便局スキャンダル、不当な有罪覆す法案を提出 補償制度も

イギリス政府は13日、イギリスで多数の郵便局長らが不当に有罪判決を受けたスキャンダルについて、被害者救済に向けた新法案を提出した。

この法案が可決されれば、7月末までにイングランドとウェールズの被害者の大半の冤罪(えんざい)が晴れると期待されている。

この事件では、1999年から2015年にかけて、900人以上の郵便局長が横領や不正経理の無実の罪で訴追された。窓口の現金とシステム上の記録額が合わなかったためだが、実際の原因は、富士通がイギリスで郵政窓口業務を担当する会社「ポスト・オフィス」に納入した会計システム「ホライゾン」の欠陥だった。

冤罪により、地域の郵便局の窓口業務を担っていた人々が、不足額を埋め合わせるために借金したり、横領罪で収監されたりした。

しかし、「イギリス史上最大の冤罪」と呼ばれるこの事件で、これまでに有罪判決が取り消されたのはわずか93人にとどまっている。また、多くの被害者が20年以上、補償を待っている。

法案では、冤罪の有罪判決を受けた被害者に、正式に請求しなくても60万ポンド(約1億1300万円)で和解するオプションが提供される。

また、有罪判決は受けていなくても「ホライゾン」が原因と思われる損失を自己資金から補填(ほてん)していた郵便局長には、「強力な」金銭的救済が提供される。

政府によると、こうした人々は「ホライズン不足金制度」を通じ、7万5000ポンドの固定額を補償として受け取る権利を得る。

すでにこれより低額で和解した郵便局長については、今回の法案の水準まで補償金が上乗せされる。あるいは、上限がない通常の仕組みで、補償金請求の査定を受けることも可能だ。

政府は、新たな「ホライゾン有罪判決救済制度」について、「できるだけ早く」申請受付を開始すると述べた。

この新制度はビジネス貿易省の管轄となる。

ケヴィン・ホーリンレイク郵便担当相は、内閣は不当な扱いを受けた郵便局長が「できるだけ早く」救済を受けることを望んでいると述べた。

下院でホリンレイク氏は、多くの郵便局長の人生がスキャンダルによって台無しにされたと述べた。

そのうえで、この法律の導入が、正義を求めて長年闘ってきた郵便局長たちにとって「トンネルの終わりの光」となることを望むと述べた。

政府はこれまでに、こうした救済措置で、本来は有罪の一部の人が無罪とされる可能性について、「それは致し方のない代償」だと述べていた。

一方、スコットランドのアンジェラ・コンスタンス司法相は、今回の法案がイングランドとウェールズにしか適用されないのは「非常に残念」だと述べた。コンスタンス氏は、イギリス全土に適用される法律を求めているが、もし実現しないならば、スコットランド政府は独自の法律を導入することになると話した。

(英語記事 https://www.bbc.com/news/business-68548438

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