歓喜のJ1昇格から3年での急落。どうした徳島ヴォルティス

FW柿谷曜一朗(左)MF島川俊郎(右)写真:Getty Images

2020シーズンの明治安田生命J2リーグを制し、2021シーズンにはクラブ史上2度目のJ1を戦っていた徳島ヴォルティスが危機を迎えている。2024シーズンのリーグ戦では、第3節終了時点でヴァンフォーレ甲府、鹿児島ユナイテッド、ブラウブリッツ秋田と戦い3連敗。開幕前に吉田達磨監督が「目標はJ1に上がること」と宣言していた徳島は、いったいどうしてしまったのだろうか。

ここでは、今冬の補強を経て迎えたリーグ開幕戦からルヴァン杯初戦まで、徳島が置かれている状況と課題について振り返る。


FWブラウンノア賢信(横浜F・マリノス所属時)写真:Getty Images

攻撃力アップで目指した昇格

昨季、42試合で挙げた得点は43。J2リーグ22チーム中17位と得点力不足に泣いた徳島は、今季に向けて攻撃力向上に取り組んだ。移籍市場ではJ3のアスルクラロ沼津で13得点を挙げたFWブラウンノア賢信を獲得。サイドバックにはDF柳澤亘、DF橋本健人を獲得しサイド攻撃の改善も促した。また、センターバックにはDFカイケ、ボランチにはMF島川俊郎を獲得するなど一定の戦力を確保。元々GKホセ・アウレリオ・スアレスやMF西谷和希、FW柿谷曜一朗などのタレントを抱えており、活用方法次第では確かにJ1昇格を目指せるはずだった。


MF島川俊郎(鳥栖所属時)写真:Getty Images

開幕と同時に直面した守備の課題

ところがいざシーズンを迎えてみると、新シーズンへの期待感は急激に失速する。第1節でいきなりヴァンフォーレ甲府に1-5で大敗。開幕前にAFCチャンピオンズリーグのラウンド16という高レベルの試合を2つこなした甲府と練度が違ったといえばそれまでだが、それにしても徳島は守備に課題を抱えていた。

組織的とはいえず、個々で懸命に守るものの連動性ある攻撃を受けると後手を踏んだ。DFラインと中盤の間には不自然な空間が出来ており、そのスペースに侵入されると後退するしかなく自ずとゴール前まで迫られることに。それを意識しペナルティエリア内を埋めると、今度はバイタルエリアにスペースが空いた。ボールを狙って奪えないために、鍛えてきたはずの攻撃を披露する機会も限られた。

ただし、決して常に後手を踏んでいるわけではない。第2節、第3節では先制点を奪い、試合の主導権を握る条件は満たしている。チャンスもそれなりに作れてはいる。それでも有効活用できず、後半に入ると徐々に失速。そして追い付かれると相手の流れを止められない。結果として、1-2という同じスコアで連敗し開幕戦からここまでリーグ唯一の3連敗を喫している。さらに、3月13日に開催されたYBCルヴァンカップ(ルヴァン杯)1stラウンド1回戦は、リーグ戦での悪い流れを止める大きなチャンスだったが徳島はこれもふいにしてしまう。


徳島ヴォルティス FW柿谷曜一朗 写真:Getty Images

J3長野にまさかの大敗

今年から大会方式が大幅に変わり、J1~J3の全60クラブが参加するルヴァン杯。徳島は1stラウンド1回戦でJ3の長野パルセイロと戦った。カップ戦ではあるが敗戦続きの徳島にとって、1つ勝利を手に入れ雰囲気を変える最適な場だった。徳島は直近のリーグ戦からメンバーを大幅に変更しながらも、DFカイケやFW柿谷らをスタメン起用し勝利を目指した。

しかし、メンバーを変更したこともあってか守備の改善はみられず。個々で守る背後を次々と突かれ、前半で3失点。さらに前半アディショナルタイムには懸命に得点を目指したFW坪井清志郎が相手選手の顔面を蹴ってしまいレッドカードの判定。故意ではなく必死にプレーした結果の不運だったが、10人になったことで勝利の可能性はさらに低下した。最終スコアは1-5。平日開催にも関わらず長野まで遠征した熱狂的な徳島サポーターが、前半終了後に横断幕を片付ける姿までみられた。

吉田達磨監督(ヴァンフォーレ甲府所属時) 写真:Getty Images

新たな哲学を求めて

前述のように徳島は2020シーズンにリカルド・ロドリゲス監督のもとJ2を制している。それ以降、成績が振るわなかったとはいえ、2017シーズン以降は常にスペイン監督のもとでボールを握り自分たちが主導権を持つ戦いを志向し続けてきた。それは「徳島ヴォルティスの哲学」として内外に根付きつつあった。

しかし、昨シーズン途中に吉田達磨監督が就任し、約7年続いたスペイン人監督の系譜は終了。低迷していたチームの立て直しを優先した結果、現監督は確かにチームを残留に導いた。その弊害として、これまで作り上げてきた哲学は崩れ去った。新たな哲学を作るべく2年目のシーズンに向けて期待された上積みは今のところ発揮されていない。「徳島とともに、最高の瞬間を」というスローガンばかりが虚しく響く。このままきっかけを待つのか、それともカンフル剤を打つのか。クラブに残された時間や選択肢はそれほど多くない。

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