イスラエル、ガザを支援物資で「あふれさせる」と表明 圧力高まるなか

パレスチナ自治区ガザ地区の人道危機をめぐり、イスラエルに対処を求める国際的な圧力が高まるなか、同国軍は13日、ガザを支援物資で「あふれさせる」つもりだと表明した。

ガザへの支援物資の搬入については、国連が13日、北部に3週間ぶりに物資を届けるため、新たな陸路を使用したと明らかにした。

その後、イスラエル軍のダニエル・ハガリ報道官は記者団に、イスラエルが別のルートも開通させ、さらなる支援物資の車列を通行させる可能性を示唆した。

その際、「私たちは人道支援で(中略)一帯をあふれさせようとしている」と述べた。

イスラエル軍によると、食料を積んだトラック6台が12日夜、イスラエル南部とガザとの境界沿いにある96番ゲートを通ってガザに入った。

ハガリ報道官は、さらなる運搬車両が続くと説明。空からの投下や海路での輸送に加え、他の境界地点を通っての物資輸送も行われるだろうと述べた。

また、支援物資が公平かつ効率的に配られるための取り組みが必要だとし、新たな搬入分は通常の方法では配られないと述べた。イスラエルは支援物資がイスラム組織ハマスの手に渡ることを懸念している。

ハガリ氏は、「私たちは学習、改善、さまざまな変更をし、搬入方法のルーティンをつくるのではなく、多様な方法を編み出している」と述べた。

4人に1人が飢餓の手前

国連によると、ガザでは少なくとも57万6000人のパレスチナ人が飢餓の一歩手前の状態にある。これはガザ全人口の4分の1に当たる。

食料不足は北部で特に深刻で、支援機関なども数カ月間、アクセスに苦労している状況だという。

ガザ保健当局によると、栄養不良や脱水症状が原因でガザの病院で死亡した人は27人に上っており、うち23人は子どもだという。

ガザの現状について、欧州連合(EU)は、飢餓が戦争の武器として使われていると指摘。ジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表は、支援物資の搬入を防ぐ目的で陸路が意図的に封鎖されていると述べた。

国連は、「継続する戦闘、イスラエルの砲撃、不安定な情勢、検問所の頻繁な閉鎖、アクセスの制約」が、安全で効率的な支援活動を妨げているとしている。

ガザ北部に届けられる支援物資のほとんどは現在、イスラエルが管理するケレム・シャローム検問所と、エジプトが管理するガザ南部ラファの検問所を経由している。

そのラファにある食料配給センターについて、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNWRA)は13日、イスラエル軍が攻撃し、職員1人を殺害、22人にけがを負わせたと発表した。

ガザ保健当局は、この攻撃で5人が殺害されたと発表。一方、イスラエル軍は、「正確な攻撃」によってハマス司令官1人を殺したと発表した。

船で食料200トンが到着予定

支援物資の輸送をめぐっては、空路と海路の利用がこのところ増えている。

ガザの海岸には14日朝、食料200トンを積んだはしけを引くスペインの船が到着の予定。

米軍はガザ海岸で仮設桟橋の建設を進めており、完成すれば1日最大200万食の食料配給が可能になると期待されている。

ただ、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は、キプロスからガザへの海路は、より多くの支援物資を届けられる陸路の代替にはなり得ないと述べた。

こうしたなか、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ラファでの軍事作戦を進めると宣言している。

イスラエルとハマスの停戦や人質交換をめぐっては、アメリカ、カタール、エジプトが数週間にわたって協議をしてきたが、実現する兆しは見えていない。

(英語記事 Israel says it is trying to 'flood' Gaza with aid)

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