『となりのナースエイド』ラスト30秒のどんでん返し 澪と大河が選んだそれぞれの道

ドラマ『となりのナースエイド』(日本テレビ系)が3月13日に最終回を迎えた。「許すとは前に進むこと」をメッセージにしながら、ラスト30秒には“裏の裏”が待ち受ける最後の最後までどんでん返しが続く作品となった。

本作の最大の謎だった澪(川栄李奈)の姉・唯(成海璃子)を殺した犯人が、火神(古田新太)だということが明らかになった前回。シムネスに侵されていた火神はそのまま帰らぬ人に。自身の姉を殺した火神のオペに立ち会えるわけもなく、澪は仕事を休んだ末に、星嶺医大を辞めることを決断。母・早苗(小野ゆり子)の許可を得ないまま小夜子(永瀬ゆずな)の手術をした大河(高杉真宙)は、マスコミによるバッシングが追い討ちをかけ、1カ月の謹慎をくらうことになる。

そんな2人をキャンプに誘ったのが、晴美(水野美紀)、夏芽(吉住)、相馬(矢本悠馬)の3人。そこには小夜子と早苗の姿も。無理心中を図った早苗に手を取られ、小夜子は背中から刺さった枝が肝臓を貫き、腹部から出血。大河と澪は、キャンプ先近くの病院でオペを決行せざるを得なくなる(超展開すぎるが、過去には半グレの手術もやっていたことを考慮すると、そういうものと飲み込める)。

描かれるのは澪がPTSDを克服し、外科医として復帰する姿。そこには「おまえはナースエイドとして患者に寄り添うことで、どの医者よりも患者を救いたいという強い思いを手に入れたんだ」という大河の強い説得があった。

育児放棄という母親として許されない行為をした早苗に、「私はママを許してあげるよ」と娘の小夜子が優しく投げかける。許すとは何か。澪の問いかけに、大河は「許すとは前に進むことだ」と教える。

澪にとっての許す相手とは、唯を殺した火神。そんな折に、唯が生前に新聞記者として執筆していた火神の業績についての記事が公開になる。唯の上司の話では、彼女は火神を尊敬していたというのだ。唯は火神のことを恨んでいたのではなく、父・晃(和田聰宏)の夢を形にしてくれたと感謝していたのだと。これまでは唯のシリアスな面が前に出ていたが、澪の記憶に蘇ってくるのは、自分以上に前向きバカだった姉の明るい一面。考え方、捉え方が変わるというのは、それぞれの「裏の顔」を描いてきた本作のテーマをさらに覆す、気持ちの良い表の顔と言える。

研究自体に罪はない。澪はナースエイドを続けながら、外科医としてオームス開発にも携わる道を進んでいくことを決めた。玲香(瀧本美織)とともに、澪はオームスのトレーニングを重ねていく。一方で、大河は星嶺医大を辞め、再び海外に渡ることに。そこでも腫瘍が瞬く間に増大していくシムネスの恐ろしさに直面していた。回想としてインサートされるのは、唯が亡くなる直前に火神へと問いかける場面。「教えてください。なぜ、父は火神細胞を公表しなかったんですか? もしかして、火神細胞がシムネス……」と、火神が唯の口を封じるかのようにして回想は幕を閉じ、大河が「シムネスは進化している」と口にする。まさに裏の裏。真実が再びベールに包まれたところで物語は幕を閉じるのだ。

最終回の放送を受けて、『となりのナースエイド』の原作者である知念実希人はSNSにて、「というわけで、原作者の私はとりあえず、続編の小説を書きます!」「また、川栄李奈さん演じる澪と、高杉真宙さん演じる大河にいつか会えますように」「ご期待ください!」と綴っている。唯が辿り着いていた火神細胞とシムネスの真実についてはその続編で明らかになるのだろう。その先には、きっとドラマとしても。澪と大河のイチャイチャの続きもそうだが、前向きバカなナースエイドとして患者に笑顔で寄り添う澪にまた会いたい。
(文=渡辺彰浩)

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