社説:オスプレイ再開 もう、日本を飛ぶのか

 事故原因が明らかでないまま飛行再開へと突き進むことは、到底納得できない。

 米軍が輸送機オスプレイの飛行停止措置を解除した。きょう以降に再開するという。

 昨年11月に鹿児島県・屋久島沖で起きた8人死亡の墜落事故を受け、全世界で飛行を止めていた。防衛省が8日に米軍による解除を発表したばかりだ。沖縄など地元自治体からは説明に「納得できない」と批判の声が上がっている。再開はあまりに拙速ではないか。

 防衛省は、米軍の調査で事故の原因は「部品の不具合」と特定されたとし、「安全に再開できることが確認できた」とする。

 だが、不具合の部位がどこなのか、どのような状況だったのか、具体的な内容は米軍の事故調査が継続しているため、明らかにできないとしている。

 木原稔防衛相は「これまでにないレベルで詳細に報告を受けた。合理的であると納得している」と述べるが、安全の根拠が示されないのでは説得力に欠ける。詳細な報告を本当に受けたのか、検証すらできない。

 防衛省によると、事故機固有の不具合ではなく、ほかの機体でも発生する恐れがある。一方で、設計・構造に問題はなく、日米間のやりとりの結果、設計変更は不要と判断したという。

 異常探知システムによる点検や整備の頻度を上げるなどの安全対策を取るとするが、おざなりの感は否めない。

 オスプレイの墜落事故は、2022年に米国で5人が死亡。23年に3人が犠牲になったオーストラリアの事故は今も調査が続く。

 今回も米下院の委員会が、安全性と性能に懸念を表明した。徹底した原因究明がない限り、再発防止につながるまい。

 米国が26年の生産終了を打ち出す一方、米以外でオスプレイを使用するのは自衛隊だけである。

 南西地域の防衛力強化を掲げて陸自は17機の導入を予定する。うち14機は調達済みで千葉の木更津駐屯地に暫定配備している。移駐先とする佐賀空港のそばには、駐屯地を建設中だ。市街地の上空を飛行しており、基地周辺の問題にとどまらない。

 米側の言い分の「うのみ」を繰り返してきた対応も看過できない。日米地位協定を理由に米軍機事故への調査権がなく、これまでも短期間で運用再開を容認してきた。国民の不安や不信を拭うには毅然(きぜん)とした対応をとるべきだ。

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