Bimi(廣野凌大)、俳優の道へ進んだ音楽少年が「音楽で2.5次元舞台に恩返ししたい」という想いを抱くまでの軌跡【1万字超インタビュー】

パンク、ラウド、HIPHOP、J-POP、演歌、R&B……1つの枠にとらわれないジャンルレスで独特な世界観の音楽、自身のルーツから培ったスキルとキャリアから培った表現力による圧倒的な存在感。それらを兼ね備えるのは、2023年10月にメジャーデビューを果たしたアーティスト・Bimiだ。

そんな彼の本名は廣野凌大。ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン(財前光役)、舞台『鋼の錬金術師』(エドワード・エルリック役)など数々の話題作に出演。中でも、彼の存在を知らしめたのは「『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage」の波羅夷空却役だろう。たしかなラップスキルと芝居に大きな注目を集めた。

幼少期から両親の影響で洋楽や歌謡曲などジャンル問わず音楽に触れ、「モテたい」を原動力に小学6年生でギターを独学、中高はバンドを組んでGreen DayやONE OK ROCKを演奏。誰がどう聞いても“音楽”で築き上げられた人生だ。「ずっと音楽の道を目指していた」という話にも納得がいく。

しかし、彼が最初に進んだのは“俳優”の道だった。そこには“葛藤”と“妥協”があった。そして、すべてのエンタメが止まった“コロナ禍”をきっかけに再び音楽の道へと進み始めたBimiが今目指すのは、「役者の仲間たちとアーティストの仲間たちの架け橋になること」だ。

アーティスト・Bimiを築き上げた音楽のルーツとアーティストに至るまでの軌跡に迫るとともに、2024年3月13日リリースのBimiの自己紹介となる1st EP『心色相環』の楽曲解説、音楽業と俳優業の両立から思い描く2.5次元カルチャーの未来について、彼の今を詰め込んだ1万字超えのインタビューをお届けする。

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「モテたい」を原動力に小6から始めた音楽、『ヒプステ』空却役が人生の転機に

――まずはじめに、Bimiさんの音楽のルーツをお聞きしていきたいなと。音楽を聴き始めたきっかけは覚えていらっしゃいますか?

Bimi:
音楽を聴いていた一番古い記憶は2歳とか3歳の頃。カセットテープで『ウルトラマン』のテーマソングや演歌を聴いていた淡い記憶があります。

また、SEX PISTOLS(セックス・ピストルズ)やGreen Day(グリーン・デイ)、レゲエのBOB MARLEY(ボブ・マーリー)など有名どころの曲が車の中で流れていましたね。

――『ウルトラマン』、演歌、SEX PISTOLS、BOB MARLEY……かなりジャンルレスですね。

Bimi:
いろんな曲を聴いていました。たくさん聴いていた中でもパンクスがすごく好きでした。当時は何を言っているのかは分からなかったけど、強烈なインパクトが残っています。頭を振って聴いていました(笑)。

特に鮮明に記憶に残っているのは、SEX PISTOLS(セックス・ピストルズ)の「Anarchy in the U.K」という曲。幼くて舌足らずだったため、歌詞は言えていなかったのですが、よく歌っていました。

小学生くらいになると、TSUTAYAに行っていろんなCDを借りて、ウォークマンに曲を入れて聴いていましたね。

――最初は聴くだけだった音楽を「自分でもやってみよう」と思ったのは、いつ頃だったのでしょう。

Bimi:
小学校6年生になって、「モテたいな」と思い始めた時期にギターを始めました。同学年の人たちは運動ができればモテていたので、俺はみんなと違うことをやってモテたいと思って。「じゃあ、ギターだな」と(笑)。

――ボーカルやほかの楽器もある中で、なぜギターを?

Bimi:
一番モテそうだったからです(笑)。歌も好きでしたけど、歌は誰でも歌えるけど、楽器は誰でもできるわけじゃないから、楽器ができた方がカッコいいなと。

とはいえ楽器も、ピアノは習っている友達がいるし、サックスとかの管楽器はちょっと大人っぽいし……一番鳴らしている姿が想像できるのはギターだったんですよね。「ずっと憧れてきたロックスターっぽくてカッコいいな」と思ったのでギターにしました。

――実際ギターを練習し始めてみて、どうでしたか?

Bimi:
最初はずっと「ドレミファソラシド(メジャースケール)」を反復練習していたんですよ。

――コードの練習ではなく、「ドレミファソラシド」は珍しいですね。

Bimi:
珍しいですよね(笑)。コードが苦手だったので単弦弾きから始めました。独学だったこともあり、何から始めたらいいのかわからなくて、ピアノも最初は「ドレミファソラシド」から覚えるから、「とりあえずドレミファソラシドだろ!」と思ったんです(笑)。そこから「コードって何!?」「和音って何!?」「こうするとCでこれがDコードなのか……」と学んでいきました。

ずっと独学で練習をしていたこともあり、最初の1年くらいはまったく弾けなくて心が折れましたよ……。1回弾くのを辞めて、たまに触って、「弾けるようになってきたかも」と新しい技術を習得しようとするものの、「やっぱり弾けない!」を繰り返していました。

なので、ギターは10年近く弾いていますけど、上手くはないです。ギターソロくらいは弾けるものの、速弾きもできませんし……。

――まず、弾けることがすごいことですから……!

Bimi:
ベースやドラムも好きなので練習はしていましたけど、人に聴かせられるレベルではなくて。高校生の時にスタジオで遊んでいて、友達から教えてもらっていたくらいなので、基礎的なことならできるけど特殊なテクニックはできないんですよね。

あと、ピアノだけは絶対できない。唯一弾けるのが「きらきら星」。“ドドソソララソ”なら弾けますよ。片手ですけどね(笑)。

――両手で弾けるのかと思いきや片手(笑)。ギター、ベース、ドラムが弾けるということは、バンドもしていたんですか?

Bimi:
ギターを始めてからバンド文化に触れて、バンド沼にどっぷり浸かっていたのですが、「そういえば昔からGreen DayとかSEX PISTOLSを聴いていたな」と思い出して。改めて聴いてみると、ものすごく衝撃を受け、「かっこいいな……パンクをやりたいな」と中学生の時にコピーバンドを組んだんです。下手ながらギターをずっと弾いていました。

友達に「UVER(UVERworld)とワンオク(ONE OK ROCK)をやったらモテるぞ!」と言われたから、ワンオクやSiMの楽曲を演奏していました。モテることが原動力でギターをやっていたので(笑)。ほかにも、ホルモン(マキシマム ザ ホルモン)やcoldrainなどのラウドロックもすごく好きだったから演奏していました。

でも、ずっと弾いていたのはGreen Dayかな。ビリー・ジョー・アームストロングが大好きで、「同じように墨入れちゃおうかな」と考えてしまうほど(笑)。

実はオリジナル曲も作っていたのですが、恥ずかしくて1回も披露しませんでした。

――その当時からオリジナル曲を作っていたんですね。バンドは高校生になっても続けていたんですか?

Bimi:
続けていました。バレー部に所属していたのですが、バレーそっちのけでずっとギターを弾いていましたよ(笑)。

今一緒に曲を作っているMammonとは高校の同級生で、当時から一緒に音楽をやっていたんです。全くそんなことはないのに、「誰も俺らと仲良くしてくれねぇ……」と、2人でカッコつけていました(笑)。

――高校の同級生と今音楽をしているって青春の延長のようでグッときますね。

Bimi:
高校時代は階段で一緒にご飯を食べながら、俺はロックやパンクス、メタルなどが好きだったのでバンドサウンドの曲をMammonに教えて、Mammonはヒップホップが好きだったので俺にヒップホップの曲を教えてくれました。

もともとRIP SLYMEや湘南乃風などのJ-HIPHOPと呼ばれるライトな波乗りサウンドは聴いていたのですが、がっつり不良文化のヒップホップを聴いたことがなかったんですよね。それまではカッコつけて聴いていたけど、ルーツを辿って文化的な背景が見えてくると新鮮な気持ちになりました。

バンドをきっかけに「音楽には背景が大事なんだ」「俺たちが音楽でぶつける想いはこれかもしれない」と気づきました。

――学生時代からそこまで音楽が好きだと音楽の道へ進もうとする人の方が多いと思うのですが、Bimiさんは役者の道に進んでいますよね。それはなぜだったのでしょう。

Bimi:
最初から音楽の道には行きたかったんですよ。学生時代はずっとバンドを組んでいて、ライブハウスでライブをしていましたけど、なかなか芽が出ずにくすぶっていて。

その時に、今の事務所に入りました。事務所の人に「売れるならまずはこっちの道に進んでみたらどう?」と言われたのが役者のオーディションで、受けてみたら受かったという。それで役者の道に進み、「将来的に有名になって、音楽に携われればいいかな」くらいに思っていました。

だけど、どうしても音楽がやりたくて、タイミングをうかがっていたんですね。そこにちょうどコロナ禍が来たんです。役者をしている間は距離を置いていたギターをコロナ禍で弾き始め、作曲を学び……改めて音楽に触れたことで、やりたい欲が爆発して音楽活動を始めました。

――音楽が出来なかったことに対する憤りみたいなものもあったのでしょうか?

Bimi:
ずっとありましたよ。役者としてミュージカルの舞台に立つこともあり、音楽に携われてはいるけど、俺がやりたいような下品で熱があって人間の汚いところをさらけ出す音楽ではないなと。悶々としていました。だから、コロナ禍で仕事がなくなったので、役者を辞めるか1回悩んだんですよ。

そんな時、「どうにでもなれ!」「受からなかったら役者を辞めよう」と受けたのが『ヒプステ(『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage)』の(波羅夷)空却役でした。ありがたいことに受からせていただいて、役者として引き戻されると同時に自分の人生が変わりましたね。

『ヒプステ』で音楽と芝居をやってみたら、「音楽と俳優活動って密接だったな」と気づくことができたんです。だから、『ヒプステ』は全力で取り組んで、終わったタイミングで本格的に音楽活動をスタートさせました。

――コロナ禍に対してネガティブなイメージが多い中、Bimiさんにとっては得るものが多かった期間だったんですね。

Bimi:
自分と向き合える期間だったから、結果的にコロナ禍で仕事を休めて良かったなと思っています。正直に言ってしまうと、俳優の仕事を少し舐めていたんですよね。

でも、向き合ってみると、言葉の立て方やセリフの言い方1つで自然に相手に伝える技術が芝居には必要だと気づいて。俳優としては打撃を受けたけど、自分と向き合う時間ができたことでちゃんと技術を培わないといけないと自覚が芽生えたので、ちゃらんぽらんになる前に強制的に仕事が取り上げられてよかったと思っています。

同時に、失った空白の期間を早く取り戻さないといけないとも感じています。

Zebrahead、Heaven And Hell、たま、ZORN、ホルモン…すべてが今のBimiを築き上げている

――幼少期から学生時代までいろんな音楽に触れてきていたと思うのですが、特に印象に残っている、または今のBimiをつくり上げたアーティストや楽曲があれば教えてください。

Bimi:
いろいろあるから悩むな……。まずは、中学生の時にラウドロックが好きになってハマったZebrahead(ゼブラヘッド)。下品なことをやりきる潔さがめちゃめちゃ好きで、歌詞のオゲレツな感じをBimiにも取り入れています。

アーティストや楽曲ではないけど、ラウドロックではずっとシャウトをしていたので、Bimiの楽曲でも活かされています。

あとは、高校生の時に1番衝撃を受けた、Heaven And Hell(ヘブン・アンド・ヘル)の「Die Young」ですね。

好きすぎて自分でも「Die young」というレクイエムを作りました。

リンキン(Linkin Park)の「Given Up」も好きです。メロディとフェイント、ギターのリフ。「Die Young」もそうですが、簡単なコードなのに、エモい気分になれる。ちょっとワクワクする何かがあるんです。

――洋楽に多大な影響を受けているとは思うのですが、邦楽でも影響を受けている楽曲はあるのでしょうか。

Bimi:
もちろんたくさんありますよ。パッと出てくるのは、たま。7分くらいある「満月小唄」という曲が好きです。歌詞に文学的なエロさを感じます。

ラッパーだったらZORN(ゾーン)がすごく好きです。ライムスキームが日本のトップクラスで半端ない。あまりにもすごいところがたくさんあって、伝えきれないです(笑)。

ほかにも、ホルモンの「恋のメガラバ」「ブラック¥パワーGメンスパイ」もめっちゃ好きです。レッチリ(Red Hot Chili Peppers)も好きなのですが、ベースの上ちゃん(上原 太)がレッチリ大好きじゃないですか。なので、ホルモンの楽曲のベースのスラップをずっと真似していました(笑)。

幼少期に昭和歌謡曲や演歌など様々なジャンルの曲を聴いてきたので、すべてのジャンルをミクチャ―などでBimiの楽曲に取り入れています。

日本語の使い方や色気のある言葉回しを学んだ、“電子辞書”の存在

――Bimiとして活動をスタートしてから、すべての楽曲の作詞作曲に携わっていますよね。中学時代にもオリジナル楽曲を作っていたとのことですが、ずっとご自身で楽曲を作っていたんですか?

Bimi:
作っていました。一部の友達に聴かせることはあっても、心のどこかで「黒歴史になるんだろうな」と思っていたので、基本は隠していました。この前、ギターケースの中に昔書いたリリックノートを見つけたのですが、恥ずかしすぎて燃やしましたからね(笑)。

――ええ、燃やすなんてもったいない!(笑)リリックノートを書いていたということですが、ボキャブラリーを培うためにしていたことはありますか?

Bimi:
学生の頃、授業中に電子辞書をずっと見ていました。勉強が好きではなかったので、手元にあるものでどう遊ぶかを考えていたんですよ(笑)。「こういう言葉はあるのかな」と頭に思い浮かんだ言葉を電子辞書で適当に調べて遊んでいました。

また、電子辞書で検索したら出てくる短編の文学作品は一通り読みました。内容はほとんど覚えていませんけど、日本語の使い方や色気のある言葉回しは勉強になりましたね。

ゲームも好きなので、中二病のような難しい言葉を使うゲームキャラのセリフとかを覚えていました。例えば、『ドラクエ(ドラゴンクエスト)』の<へんじがないただのしかばねのようだ>とか(笑)。「しかばねってなんだろう?」と電子辞書で調べて、「ああ、そういうことか」と言葉の意味を知る、みたいなことをしていました。そこから電子辞書で調べる癖がついたのかも。

――今は楽曲を作る際、歌詞先行ですか? それともメロディ先行?

Bimi:
メロ先ですね。トラックメーカーがいるので、一緒にテーマ、キー、BPMを決めてから、トラックを作ってもらって、それを聴いてイメージを湧かせながら歌詞を書いています。

例えば、『心色相環』の「インベーダーインバイト」は、「テーマが宇宙人」「宇宙っぽい雰囲気がある80年代ディスコ」「BPMは遅め」と決め、返ってきたトラックをもとに、「この音を追加してください」「ここは端折ってください」と要望を入れつつ、仮の歌詞を乗せていきました。

「こういう感じはどうですか?」「この要素はここに入れよう」と何回かラリーして作り上げています。

――歌詞を手掛ける上でこだわっていること、意識していることがあったらお聞きしたいです。

Bimi:
等身大でいられたらダサさすらカッコよく感じられると思っているので、自分の身の丈にあった言葉で歌詞を書こうと考えています。自分の中から出てきたリアルな言葉をそのまま書いているだけですね。

思うまま1回ずらーっと歌詞を書き出して、歌って、RECして……それを聴いて、「ここは違うアプローチの方がカッコいいな」と思った部分は、同じ意味だけど違う言い回しの言葉にして歌詞を組み立てています。

あとは、語感と言葉の意味にこだわっていますね。聴き心地が良くて、「どういう意味なんだろう」と歌詞を調べてみると「こいつ頭いいな……」と思ってもらえるような言葉選びはいつも意識しています。

――1st EP『心色相環』を聴いて感じたのですが、Bimiさんは言葉の中でも日本語がすごく好きなのかなと。そこについてはいかがですか?

Bimi:
俺、英語ができないから、英語をやるとフェイクになっちゃうじゃないですか(笑)。それもあって、『心色相環』の楽曲は日本語が中心の歌詞になっていたのですが、4月放送のドラマ『Solliev0』のために書いた「Safe Haven」は英語詞の曲です。

さすがに不安だったので、「文法的に合っているのか」「こっちの表現の方が良いのか」など監修を入れてもらいました(笑)。英詞を書く時は、今後も監修を入れてもらおうと思っています。

次ページ▼「Bimiの自己紹介にしたかった」1st EP『心色相環』各楽曲解説

Bimiの喜怒哀楽と人生を描いた1st EP『心色相環』「人生に彩りが生まれたら嬉しい」

――ここからは、1st EP『心色相環』に収録されている楽曲の推しポイントを教えてください。

Bimi:
「博徒街道」はサブテーマに「喜」を置いているので、自分自身が一番喜ぶ“ギャンブル” “胸”について綴っています(笑)。

あと、鳥山明先生が好きでドクター・マシリトが出てきた時に「天才だな……」と思ったので、ドクター・マシリトを執刀医に見立てて、<ドクターマシリト サイボーグ状態 好機は斬り込む 即座に頂戴>という歌詞を書いたんですよ。自分でもこの歌詞はいいなと思っています(笑)。

――Bimiさんの好きなものが歌詞に詰まっているということですね。続く2曲目の「怒鈍器」。力強く、めちゃめちゃカッコいい楽曲だと思いました。

Bimi:
サブテーマは「怒」なので、すべてに対する無茶苦茶な怒りと、その怒りへ自然でぶん殴る=“ネイチャー殴り”について書いた曲です。鋭利な刃物で攻撃すれば血は出るけど血が出るって痛みを逃がしているということだと思うので、鈍器で殴って内出血させて痛みを留まらせるというイメージですね。そのネイチャー殴りを<Channel Discovery>と表現している部分は、自分で書いている歌詞だけどすごく好き。

また、<溜まりに溜まってるんなら抜いてスッキリしな>という詞は、いろんな意味の“抜く”が込められたいい感じのラップに仕上げることができたなと。難しいラップスキルをどんどん詰め込んでいきました。

――『ヒプステ』の空却役もですが、ラップスキルは「さすが」の一言に尽きます。

Bimi:
役者をして滑舌が良くなったんですよね、もともとラップは好きでやっていましたけど、そこに役者で培った発声が加わったので、歌唱は無敵になりました。最近、普通の会話やセリフの方が噛みますもん(笑)。

――ラップよりセリフの方がゆっくりなのに(笑)。では、先ほども少しお話していた3曲目の「インベーダーインバイト」。宇宙人がテーマということですが、こちらの推しポイントは?

Bimi:
「インベーダーインバイト」は、コンビニバイトをしている宇宙人について書いた曲です。半年くらいで辞めたけど、以前コンビニでバイトをしたことがあったんですよ。その時、疲れながら商品を乱雑に投げる人、死んだ目の人など可哀そうな人たちを見て、「何がお前をそうさせているんだ……」「そんなに嫌なことがあるなら逃げてもいいのに」と思っていました。

逃走本能はあるのに、その本能に従わないで向き合う生き物って人間だけじゃないですか。そういう、しがらみに縛られていることが人間の美しさでもあるし、哀しさでもある。それを歌いたいと思ったと同時に、同じ人間の俺が歌うと説教がましくなるし、「お前に何が分かる」と反感を買うだろうと。

そこで語り手を宇宙人に見立てて、「なんでそんなに哀しい想いをしなければいけないの?」という疑問をぶつけました。哀しみを背負いながらも、「そんなに苦しいなら、今日くらいは楽しいことをしよう」と伝えた曲です。

――サブテーマは「哀」なのに、メロディやサウンドには遊び心があって、すごく面白さを感じました。

Bimi:
哀しい時に「哀しい」と言える人って少ないじゃないですか。ネガティブな感情の押し付けって他人にとっては不快だから。

一方で、哀しみを我慢している時ほど哀しそうに見えるんですよね。そういう哀愁漂う感じを狙いたかった。「そういう哀しみを実は背負っているんだよな?」と寄り添うような曲にしたかったんです。

――ここまでの3曲もバラエティに富んでいますが、4曲目の「ミツ蜂」は和テイストな曲調でまた違ったカッコよさがありますね。

Bimi:
「ミツ蜂」は“ミツバチ”、“宗教”、“ライブハウス”の3つを掛け合わせた楽曲です。

「ミツ蜂」を含めて3曲連続リリースしたんですよね。最初の2曲「babel」「インベーダーインバイト」は「Bimiらしさがなくなったんじゃないか」「メジャーデビューしたから変わってしまったのではないか」と思われるような曲にして、3曲目の「ミツ蜂」で「お待たせ! Bimiサウンドが返ってきたよ!」としたくて。

――「待ってました」感を演出したんですね。

Bimi:
そうなんです。それで3曲目を作る時に、「EDM調でラップがあって踊れるBimi感マシマシの曲」とDJ dipに注文しました。

届いたトラックを聴いて、最初の“てんてててんてん”が警告音のようで、頭の中に黒と黄色の「WARNING」マークが浮かんできたから、「蜂だ!」と思ったんですよ(笑)。

じゃあ、どの蜂について書こうかと考えた時に、「スズメバチだと1人でも強いからアメリカやヨーロッパのイメージだな」「集団になって大きなスズメバチに立ち向かうミツバチの方が日本人っぽいな」と“ミツバチ”をモチーフに詞を書きました。また、そういう集団心理で誤魔化されてしまうところが“宗教”みたいだと思ったんです。

そして、アーティストという甘い蜜に誘われてたくさんの人が群がる宗教のような空間が“ライブハウス”だなと。<断然外より中は危険度高みなBee>の詞にもあるように、「ミツ蜂」の“ミツ”はライブハウスの密な空間という意味も込めています。

――なるほど。だから「蜜蜂」ではなく「ミツ蜂」なんですね。

Bimi:
そうなんです。「蜂蜜の蜜」「甘い蜜で釣られる人たち=宗教勧誘」「ライブハウスの密」という3つのミツで「ミツ蜂」です。

<フェロモン“美”が君刺す>の美は“Bee=蜂”、<一時の顛末 与 快楽美貌 喰う淫靡 はにかむ>の喰う淫靡は“クイーンビー=女王蜂”、はにかむは“蜂の巣の8角形=ハニーカム”といろいろ考えてリリックを書きました。サブテーマの「楽」も“音楽”や“快楽”など、“楽しい”以外の様々な“楽”が込められています。

――「楽しい」の意味だけではないのが面白い。そして、次の曲が「babel」。メジャーデビューの楽曲ですよね。

Bimi:
こっぱずかしくなるくらい、自分のこれまでの人生を全部載せた曲ですね。今までの自分の人生を曲の中に置いておきたくて、25年しか生きていない若造が思った今の音楽、人との対話で感じたこと、全部と向き合いました。

これから先、「なんでこの人はいろんな曲を書くんだろう」と思われた時に、バベルの塔みたいにどれだけ言語化しても伝わらない、分かり合えないこともあると思うんですよ。だけど、目には見えない感情的、精神的な部分で繋がれたらいいなと。DNAの2重螺旋構造のようなイメージで書いた曲です。

とはいえ、「自分語りみたいで嫌だな」と思っているから、実はライブで1回も披露していなくて。今歌うのは、自分のことを押し付けているみたいでカッコ悪い。いつか来るであろう区切りのタイミング、グッとくるエモいタイミングで披露するのを狙っています。

――いろんな想いが詰まったメジャーデビュー曲「babel」に続き、EPの最後にはインディーズ時代から披露していたライブの人気曲「輪」のリミックスバージョンとなる「輪 -味変-」が収録されています。

Bimi:
ずっと応援してくれているリスナーに向けて、「インディーズ時代の曲も捨てないよ!」という意思表示に、「味変」というサブタイトルでインディーズ時代のリミックスをやっていこうと思っていたんです。中でも、「輪」はライブですごく盛り上がる曲だったので、第1弾としてリミックスしました。

俺の中で『心色相環』は、「博徒街道」から「babel」までの5曲で1つのアルバムとして完成していて、「輪 -味変-」はボーナストラックだと捉えています!

――そもそも『心色相環』に喜怒哀楽というテーマ性を込めたのは、どういう意味があったんですか?

Bimi:
自己紹介にしたかったんですよね。「初めまして! メジャーデビューしました。調子に乗っているBimiです! いろんな曲が作れます」という意味を込めたくて、バラエティを出せるテーマ性を考えました。

その中で、“喜怒哀楽”という人間を形成する感情をテーマにしたいなと。加えて自分の人生を歌おうと「babel」を作ったんです。この5曲が揃った時に、EPタイトルの『心色相環』と決めました。

喜怒哀楽って感情が4つしかないという単純なことではなく、すべての感情が表裏一体じゃないですか。喜びの感情が100%のこともあれば、喜びの中に哀しみが数%混じっていることもある。人間の感情ってまるで色相環の輪のようだと思ったんですよ。

とはいえ、ただ「色相環」だと感情という意味は伝わらない。「それなら心の色相環=『心色相環』だ!」「語呂もいいし、覚えやすいだろう」と。

――発想が素晴らしい。そんな『心色相環』をリスナーの皆さんにはどう聴いてほしいと思いますか?

Bimi:
音楽は人生の娯楽だから楽しい気分になってほしいし、Bimiの自己紹介だから仲間みたいな気持ちで「こういう人間もいるんだな」という感覚で聴いてほしいです。Bimiの人生を娯楽の一部として楽しんでもらって、聴いてくれた人の人生に彩りを与える存在になれたらいいなと思っています。

そして、EPを聴いて「ライブに遊びに行こうかな」と思ってもらえたら、ライブに来た人には「お酒が美味しい!」「あの人ちょっと好きかも、カッコいいかも!」と思ってもらえたら嬉しいです(笑)。

ライブで「お酒が美味しい」「体を振って楽しい」と思う感覚は、言語が生まれる前からある感情じゃないですか。そんな楽しい感情を言葉以外で引き出すための表現方法が音楽だから、『心色相環』に触れて人生に彩りが生まれたら嬉しい。信者になって欲しいわけでも、キャーキャー言われたいわけでもなく、気軽にライブに来てくれればそれでいいと思っています。

――音楽を始めた時の原動力である「モテたい」という気持ちは今もあるのでしょうか。

Bimi:
今はそこを超えたんですよね。「モテるなら音楽じゃないんだな」と悟りました。悟ってからは音楽はモテるためのツールではなく、自分を形成してきたもの、好きなものだと気づいた。だから今は、売れたい気持ちもありつつ、「刺さる人にだけ刺さればいい」と思っています。

「アーティストとして実力をつけて、2.5次元カルチャーとの架け橋になりたい」

――これから本格的に音楽活動を始動させていくと思うのですが、今Bimiさんが目指しているアーティスト像とは?

Bimi:
俺みたいな偏屈なやつらが認めてくれるような説得力を持つアーティストになりたいと思っています。説得力を持つことによって、これからの活動に仲間を引き入れやすいと思うんです。

同時に、2.5次元の舞台や役者には恩があるから、音楽で恩を返していきたくて。自分が売れていれば売れているほど、2.5次元舞台というものがカルチャーとしても商業としても大きくなるから。大きくなれば、もう少し海外にも誇れるようになるのかなと。だからまずは、自分の実力を上げて、説得力を身につけて、役者の仲間たちとアーティストの仲間たちの架け橋になれたらいいなと考えています。

昨年(2023年)に開催した『Bimi Fes』では、俳優仲間に来てもらって、チケットは仲間たちの方が売ってくれて、仲間目当てで足を運んでくれる人がたくさんいた。完全に俺がおんぶにだっこ状態だったんですよ。感謝と同時に、「ちゃんと売れて、有名になって、この恩は必ず返すから」と焦りもありつつ、思っています。

――「役者仲間とアーティスト仲間との架け橋になりたい」とのことですが、今俳優業とアーティスト業を両立している中で「両者が還元し合っているな」と感じることはありますか?

Bimi:
音楽への感情移入の仕方、ステージでの立ち振る舞いなど、技術的なことは俳優業から培われたと思っています。でも、それに頼って音楽が偽物になってしまうのは避けたくて。嘘をつかない今の等身大の自分でカッコよくいたいんですよね。

――相互的に実力を補っていくのではなく、それぞれの道で実力をつけていきたいというのとでしょうか。

Bimi:
それが1番いいなと考えています。どちらの実力にも頼らずにいたい。だけど、俳優とアーティストの垣根は無くしていきたいですね。

さっきの話とも繋がるけど、俺が音楽で実力をつけたら、もっと男性も2.5次元舞台を見に来てくれるかもしれないじゃないですか。そうやって敷居を広げることが、舞台や演技に対する俺なりの恩返しだと思っています。

そんなことファンは求めていないかもしれないけど、区切りがない方が楽しいんじゃないかって。それで万が一マナーが悪くなったら、俺たち役者側が「今までファンでいてくれたみんなを尊重しながら戦うよ」って言います。ファンを大切にしながら、いろんな人と一緒に末永くやっていきたい。そういう恩返しをしていきたいです。

――等身大の想いを語っていただき、ありがとうございました。最後に、Bimiさんにとって「音楽」とは?

Bimi:
モテるためのツールです!(笑) モテたい!!

――あれ!? 結局、最初に戻ってきた!(笑)

Bimi:
あはははは(笑)。

(執筆:羽賀こはく、取材&編集:阿部裕華、撮影:鬼澤礼門)

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Major 1st EP「心色相環」リリース概要

2024年3月13日(水)発売

【通常盤CD Only】
KICS-4135 / 定価:¥2,750(税抜価格 \2,500)
CD封入特典:ロゴステッカー通常Ver.(初回製造分のみ)
〈収録曲〉
M1. 博徒街道
M2. 怒鈍器
M3. インベーダーインバイト
M4. ミツ蜂
M5. babel
M6. 輪 -味変-

【ELR Store限定盤CD+Blu-ray】
NKZC-52~53 / 価格:\8,250(税抜価格 \7,500)
CD封入特典:ポスター風ブックレット+ロゴステッカー限定Ver.(初回製造分のみ)
〈Disc1(CD)収録曲〉
通常盤と同内容の6曲入りCD
〈Disc2(Blu-ray)収録内容〉
・Bimi Fes turn 1 本編より9曲
M1. Question (feat. ARIMATSU)
M2. LOVE
M3. Die young
M4. weapons
M5. inner child
M6. beast
M7. selfy
M8. babel
M9. 輪
・Behind the Scene 「babel」Music Video #03

Bimi プロフィール

Bimi(ビミ)
1998年4月28日生まれ

Bimi オフィシャルサイト: https://bimi-official.com/
Bimi 公式X(旧:Twitter): https://twitter.com/ise_ise_oysy
Bimi Instagram: https://www.instagram.com/bimi_official_dcc
Bimi 公式YouTubeチャンネル: https://www.youtube.com/c/Bimi_official_DCC

© 株式会社マレ