人々に安全を提供したいのであれば、地球にも安全を提供しなくてはならない――サステナビリティへのボルボの責任

Day2 プレナリー

不動奈緒美・ボルボ・カー・ジャパン 代表取締役社長

スウェーデン南西部・イェーテボリに本社を置くボルボは1927年に2人の若者が創業した。以来、連綿と続く設計思想の根幹にあるのは「安全」だ。人の安全だけではなく地球の安全、つまり地球のサステナビリティにもボルボは目を向けている。

冒頭、スクリーンには、「クルマは人によって運転され、使用される。したがって、ボルボの設計の基本は常に安全でなければならない。」とする、ボルボ創業者が残した言葉が映し出された。不動奈緒美氏は「その言葉の通り、ボルボは常に人を中心に考え、安全性を重視してきた」と話し始め、その例として、今ではどの車にも使用されている3点式シートベルトを挙げた。3点式シートベルトはボルボが1959年に初めて開発したもので、その安全性を普及させるために、特許を無償公開することを決めたのだという。

「安全」だけではなくボルボは「環境」にも早くから取り組んできた。それを象徴する資料として、不動氏は1990年5月17日付日本経済新聞の全面広告を示した。新聞1ページを使ってボルボが大書したのは、「私たちの製品は、公害と、騒音と、廃棄物を生みだしています」とするコピーだ。つまり、ボルボは「もう何十年も前から私たちがやっていることが環境破壊につながっている事実を認識し、環境問題への責任を果たしていかなければいけないと思い続けていた」。

そのように強調した上で、不動氏は「もし本当に私達が人々に安全を提供したいのであれば、人々が住むこの地球にも安全を提供しなければいけない。地球全体のCO2排出量の9%が自動車だと推定されているからこそ、私達はこの気候変動に対して解決策を提示し実現しなければならない」と述べた。

2040年までにクライメート・ニュートラルな企業になる

具体的には、「2040年までにクライメート・ニュートラルな企業になる」「2030年までに100%電気自動車ブランドになる」と2021年の時点で宣言している。電気自動車についてはまずは2020年代半ばに50%にすることを目標にしているが、実績値は2021年が4%、22年が11%、23年が16%であり、さらにピッチを上げる必要がある。その鍵となるのが、スウェーデンの新興バッテリーメーカー、ノースボルト社と共同で建設するバッテリー工場だ。

不動氏は「実は電気自動車に使うバッテリーの製造過程における電力消費が問題になっている」と説明し、新工場では電力のすべてを再生可能エネルギーで賄い、年約50万台分のボルボ車用バッテリーを生産する計画を明らかにした。操業開始は来年、2025年だ。

SB国際会議2024東京・丸の内の会期中、東京国際フォーラムの会場に展示された最新EVモデル、EX30。ボルボ全車の中で最小のカーボンフットプリントを実現している

そのような流れの中で生まれたボルボの新型電気自動車、EX30について、不動氏はリサイクルアルミニウム25%、リサイクルスチール17%、リサイクルプラスチック17%といった数字を示しながら、「これまでのボルボ全車の中で最もカーボンフットプリントが小さく、最もリサイクル素材の利用率が高いモデルだ」と解説した。スクリーンに映し出されたEX30は、ボルボのイメージを残しながらも洗練された近未来的フォルムで、説明文には「サステナビリティを開発の初期段階から追求したボルボ初のモデル」とある。

ボルボの2023年の販売台数は世界で70万台で、売上は約5兆6000億円だった。不動氏は、「自動車メーカーとして70万台はあまり大きな数字ではないが、ボルボにとっては史上最高の販売台数だった。小さな会社だが、コツコツと実績を積み上げている」と笑顔で語り、最後、「私たちボルボは、安全を、人々だけではなく、この地球にも届けることを宣言している」と胸を張ってセッションを終えた。(依光隆明)

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