「共に過ごしてくれてありがとう」誇り胸に学び舎巣立つ 福島県いわき市の中学校で卒業式と閉校式

卒業証書を受け取る白土さん

 福島県いわき市川前町の桶売、小白井の両中学校で13日、卒業式と閉校式が行われた。最後の卒業生を送り出し、地域住民が名残を惜しむ中で学校の歴史に幕を閉じた。川前地区では今月で川前、桶売、小白井の各小中学校が閉校となり、地区内から小中学校がなくなる。

■桶売中 幼なじみの2人が「別れのことば」

 1947(昭和22)年創立で77年の歴史があるいわき市の桶売中では、最後の卒業生となった酒井舜之(としゆき)さん(15)と長谷川翔太さん(15)の2人が巣立った。

 2人は保育所に通い始めた3歳のころからの幼なじみで、中学校卒業まで計13年間を同じ学び舎(や)で過ごした。中学校ではバドミントン部でダブルスのペアを組み、昨年は市中体連大会で3位と活躍。部活動や勉強、文化祭を通じて唯一無二の友情を育んだ。

 卒業式で鴫原靖宏校長が「桶売の人の優しさに包まれて生徒は成長した。人と人との出会いを大切にし、自分の可能性を伸ばしてほしい」と式辞。酒井さん、長谷川さんは2人そろって「別れのことば」を述べ、「共に過ごしてくれてありがとう」と互いに感謝した。

 「最後の卒業生としての責任は果たせた」と2人はこの1年を振り返る。進学する高校は分かれるが、2人ともバドミントンを続けるという。「練習を積んでレベルアップし、試合で対戦しよう」と約束した。

 卒業式に続き閉校式を行い、学校関係者や地域住民ら約170人が出席した。鴫原校長が「地域住民に支えられた桶売中の歴史は、桶売地区の歴史でもある。桶売中は閉校するが、地域の人がこの学校で学んだことや、学校を通じてできた人の輪が地域の人間関係として残り、地域創生の礎となる」と式辞。内田広之市長と猪狩光正閉校記念事業実行委員長があいさつした。卒業生の酒井さんと長谷川さんが別れを告げた。鴫原校長が鈴木路人市教委学校教育課長に校旗を返納し、学校の歴史に幕を閉じた。

■小白井中 140年の歴史に幕 唯一の卒業生、地域住民に見守られ、晴れの門出

 小白井中は卒業式と閉校式を行い、約140年の歴史に幕を閉じた。唯一の卒業生白土由香さん(15)が地域住民や歴代の卒業生に見守られながら晴れの門出を迎えた。

 吉沢勉校長が卒業証書を手渡し、「由香さんの優しさと笑顔が小さな学校を明るくしてくれた。健康を大切にこれからも励んでほしい」とエールを送った。服部樹理市教育長が告辞を述べた。

 白土さんは同級生と後輩がおらず、昨年に先輩を見送ってからは学校生活を一人で過ごした。周囲の支えのおかげでさみしいと感じる機会は少なかったという。白土さんは「みんなの孫のように接してもらった。毎日が楽しく、笑顔が絶えない学校生活だった」と振り返り、「感謝を忘れず、優しい人になりたい」と語った。

 小白井中は1885(明治18)年、桶売小の分校として創立し、これまで454人が巣立った。閉校式では、同じ校舎の小白井小・中の歩みを振り返り、集まった住民らが閉校を惜しんだ。子ども3人を通わせた遠藤冬子さん(61)は「住民の集まる場がなくなる」と悲しんだ。

(いわき版)

卒業式で「別れのことば」を述べる酒井さん(右)と長谷川さん
鈴木課長に桶売中の校旗を返納する鴫原校長(右)

© 株式会社福島民報社