「オールカントリーやS&P500だけ」はもったいない!? 日本株投資も効率的に取り入れるべき“納得の理由”

去る2024年2月22日、ついに、日経平均株価がバブル期の1989年につけた史上最高値を更新した。

生成AIブームに沸く米国の株式市場で「マグニフィセント・セブン」(アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、テスラ)の一端を担う半導体大手エヌビディアの好決算が日本時間の22日早朝に発表されたことを受け、国内株式市場でも、東京エレクトロンを筆頭に関連銘柄が相場全体を押し上げた。

株価水準の妥当性に対する指摘や、過熱感を警戒する向きもあるが、長期の資産形成を前提とするなら、ここは素直に、投資対象として日本株を見直す良い機会と捉えれば良いのではないだろうか。そこで今回は、これまでとは少し異なった角度から日本株ファンドの取り入れ方について解説したい。

本連載を通じて筆者はたびたび、日本株の、とりわけアクティブファンドに投資する意義や魅力について言及してきた。というのも、米国ほど株式市場にすべての情報が織り込まれていない日本では、アクティブマネジャーが超過収益を獲得する余地が十分残されており、事実としてTOPIX(東証株価指数)を恒常的に上回る優良なアクティブファンドが多数存在するためだ。

また、これはインデックス、アクティブに関係なく、投資家自身が直接的な為替リスクを負わなくとも、投資先の企業が為替リスクを負ってくれるという点も、日本株に投資する魅力の1つと言える。過去数年の急速な円安進行により、「S&P500」や「オールカントリー」などの外国株式インデックスファンドは、リターンの約半分を為替差益で稼ぐ「追い風参考記録」状態にあった。為替変動も重要なリターンの源泉であり、外貨建て投資の醍醐味(だいごみ)ではあるのだが、株式市場の実力と混同しないよう注意してほしい。実際に、2023年の年間騰落率を現地通貨ベースで比較すると、日経平均株価(28.2%)は、全世界株価指数(22.2%)もS&P500指数(24.2%)も上回っていた。

日本の半導体関連企業に投資すれば世界的な生成AIの流れに乗れる

そもそも、「日本の企業=日本でビジネスを行っている企業」と自動的に脳内変換していないだろうか。「長い目で見ると日本は国力が低下していくから……」と、日本株を投資対象から除外していたのだとしたら、今こそその考えを改めるタイミングだろう。

冒頭で触れた東京エレクトロンをはじめ、昨今の株高をけん引してきた日本の半導体関連企業は、「海外で稼ぐ」企業の典型例である。海外売上高比率が60~80%超と高く、東京エレクトロンに至っては売上の実に9割を海外が占める。つまり、日本企業に投資することで、世界的な生成AIの大きな流れに乗ることもできるのだ。

日経平均株価の最高値更新と時をほぼ同じくして、米ゴールドマン・サックスが、日本の株式市場をけん引する7つの有力銘柄を「Seven Samurai(7人の侍)」と名付けて公表したが、このうち4銘柄を占めたのも半導体関連企業(製造装置メーカー)であった。

●米ゴールドマン・サックス選定の「7人の侍」

※筆者作成

この4銘柄は日経平均株価に採用されているので、インデックスファンドを通じて間接的に投資することもできる。また、東京エレクトロンは本連載でも度々取り上げてきた「One国内株オープン」(アセットマネジメントOne)や、「コモンズ30ファンド」(コモンズ投信)をはじめ、好成績を収めている多数のアクティブファンドに組み入れられている。

上記の4銘柄以外にも、信越化学工業、ルネサスエレクトロニクス、ニデック、キーエンス、ロームと、半導体製造に関連する日本企業は実に多岐にわたる。

半導体製造の過程はとても複雑でかつ多くの企業が関わっているのだが、日本企業が特に強みを持っているのが、製造装置と素材(ウエハー)の分野である。ちなみに、冒頭で触れた米エヌビディアは、画像半導体の設計で随一の技術を誇り、また、熊本・菊陽町の工場設置が話題の台湾TSMCは、半導体の受注生産で世界一のシェアを持つ。つまり、一口に「半導体」と言っても、各社の専門性も関わり方も異なるのである。

最近は、米国上場の主要な半導体関連30銘柄で構成される「SOX指数」(「フィラデルフィア半導体指数」ともいう)への連動を目指すインデックスファンドがじわりじわりと人気を集めているが、日本の半導体関連企業が多く含まれる下記のような投資信託やETFとの組み合わせを検討しても良いだろう。

・情報エレクトロニクスファンド(野村アセットマネジメント)

・フィデリティ・テクノロジー厳選株式ファンド(フィデリティ投信)
・ジャパン半導体株式ファンド(日興アセットマネジメント)
・半導体関連 日本株式戦略ファンド(三井住友トラスト・アセットマネジメント)
・日本ニューテクノロジー・オープン(SBI岡三アセットマネジメント)
・グローバルX 半導体関連 ― 日本株式 ETF (Global X Japan)

※すべて新NISA成長投資枠適格

以上の通り、今回は昨今の株式市場をけん引している半導体関連企業を例にとって日本株投資を考えてみたが、近年は、半導体以外の分野でも、業種に関係なく企業買収などを通じてグローバル展開する企業が増えている。

既に全世界株式やS&P500のインデックスファンドを保有、または積み立てているなら、将来性が期待できる分野や業種を絞り、日本株を取り入れるというのも1つの方法としておすすめしたい。

篠田 尚子/楽天証券資産づくり研究所 副所長 兼 ファンドアナリスト

慶應義塾大学卒業後、国内銀行を経て2006年ロイター・ジャパン入社。傘下の投資信託評価機関リッパーにて、投信業界の分析レポート執筆、評価分析などの業務に従事。2013年、楽天証券経済研究所入所。日本には数少ないファンドアナリストとして、評価分析業務の他、資産形成セミナーの講師も務めるなど投資教育にも積極的に取り組む。近著に『【2024年新制度対応版】NISA&iDeCo完全ガイド』(SBクリエイティブ)。

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