「在職定時改定」って何? 年金額が増えるって本当?

在職老齢年金制度と在職定時改定の考え方

在職老齢年金は、60歳以上の労働者が働きながら受け取る年金について定めた制度です。一定の収入があると、部分的に、また全部の厚生年金の支給が停止されます。この制度は、1965年に導入されて以来、高齢者の就労状況や年金の支給条件などを考慮して、数回にわたる改正が行われてきました。

2020年の改正では、60代前半の特別支給の老齢厚生年金を対象にした支給停止基準が65歳以上のものと統一され、支給停止が緩和されたのです。この改正で、より多くの高齢者にとって働きやすい環境が整ったといえます。

年金制度は、その歴史を通じて幾度もの変遷を経てきました。1954年の厚生年金保険法全面改正時には、老齢年金は退職を条件としており、在職中の人には年金が支給されないという原則がありました。しかし、1965年の改正で65歳以上の在職者にも年金が支給されるようになり、その後も就労と年金受給のバランスを取るための改正が行われてきています。

特に注目すべきは、2020年の改正で導入された在職定時改定です。これは、65歳以上の人が在職中であっても年金額が毎年見直されるというもので、10月に年金額が改定されるようになりました。この改定により、高齢者が働き続けることで得られる収入が年金額に早期に反映され、経済的な基盤がさらに充実することになったのです。

このように、在職老齢年金制度と在職定時改定は、社会情勢を見据えて、高齢者が安心して働き続けられるように、また、その働きが経済的な支援につながるように設計され運営されています。

年金額の増額例

在職定時改定により、老齢厚生年金の受給額がどの程度増加するかは、勤務継続中の標準報酬に応じて異なります。この計算は、標準報酬月額に一定の係数を乗じ、その後加入期間を考慮して算出されます。具体的には「標準報酬月額」に0.005481を掛けて、さらに「老齢厚生年金額に反映される厚生年金保険加入期間の月数」を掛けることで概算が可能です。

例えば、65歳から70歳までの間に標準報酬月額が30万円の場合、年金受給額は年間で約1万9730円増え、5年間で合計約9万8700円の増額となります。このように、在職定時改定制度を利用することで、高齢期における収入の一部を年金として確保し、経済的な補強が期待できるのです。この制度は、特に65歳を超えても積極的に労働市場に参加し続ける人々にとって、年金受給額の増加という形での直接的な恩恵をもたらします。

在職定時改定で見込める受給額の向上

厚生年金制度に2020年に導入された在職定時改定は、65歳以上で働く人々にとって、改正以前には停止されていた年金受給額を増やせる有効な仕組みです。標準報酬月額に基づく計算により受給額の増額が見込めるため、経済的な安心感を得られます。この制度を上手に活用することで、より充実した高齢期を送ることが可能になるでしょう。

出典

日本年金機構 在職老齢年金の計算方法

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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