メタボ新基準提案「女性の腹囲は90センチ→77センチ」と提唱した論文が話題、ネットで誤解広がる

 新潟大学の研究チームが8日、メタボリックシンドローム健診を受けた56万人の健診後のデータを大規模解析した結果、判定基準を改定したほうがよいことが分かったと論文で発表、話題になっている。現行の判定基準では本来高リスクと判定すべきだった人たちが大量にもれてしまうとして、各指標について具体的に改定案を示したものだ。しかし多くのメディアでは「提案された新メタボ基準では腹囲は男性83cm、女性77cm以上と厳しくなる」というニュアンスで報じられており、論文の結論の一部しか報じていないためネットでは誤解に基づいた批判コメントが多く上がっている。

腹囲の基準は一見厳しくなったが、しかし

 研究チームが発表した論文は、メタボ健診のデータと、診療報酬請求(レセプト)のデータを活用し、08年から16年にかけ健診を受けた18~74歳の約56万5千人のその後を追跡調査したもの。健診後、実際に心血管病を起こした人と起こさなかった人の測定値などを収集し、それぞれの指標について、将来発症するリスクが高い人を見分けるのに最も適切な値を探った。結果、リスクを7割程度発見できる適切な値として、腹囲については男性83cm、女性は77cmが適切だと分かったとしている。

 大手メディアでこの論文が報じられると、ネットでは「女性で77cmは大半の人が引っかかる」「身長無関係でその数値、どこまでの効果があるのか疑問」「身長や体組成も加味せず一律何cmって変」と疑問の声があふれた。至極もっっともな話で、腹囲の点だけ報じられれば違和感を覚える人は多数だろう。

 しかしこの論文は腹囲の基準値だけに触れているわけではない。論文を普通に最後まで読むと、腹囲以外にも男性、女性それぞれの基準値について「トリグリセリド値が130 mg/dl と 90mg/dl、HDL コレステロール値が 50 mg/dl と 65 mg/dl、血圧が 130/80 mmHgと 120/80 mmHg、空腹時血糖値が 100 mg/dl と 90 mg/dl」 であるべきとしっかり指摘している。

 さらに実は、もっと重要なことが論文には書いてある。「今回調べた結果、虚血性心疾患のリスク判定には腹囲の値は関係ないことが分かったので、今後必須にしなくてもよい」というのである。つまりメタボかどうかの判定には、もはや腹囲は必要ないというかなり重要な発見があったのだ。

 これまでの大手メディアの報道は論文を読み込んでおらず、女性に対する腹囲の値の変化が激しかったことだけを捉え、非常に表層的に報じていたことになる。論文の内容を正しく読めば、新潟大の研究チームが発表した内容は、今後のメタボ健診が、より精度を高めるために何を改善したら良いかを明確に指摘した良質な研究成果だったことが分かるはずだ。

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