松任本所16日閉所 金沢総合車両所

閉所に向けて後片付けの作業が進む金沢総合車両所松任本所=白山市内

  ●北陸線支え89年

 北陸新幹線敦賀開業に伴い、在来線の整備基地「金沢総合車両所松任本所」(白山市)が16日閉所する。JR松任駅北口近くで、1935(昭和10)年から北陸を走る車両の検査を一手に担ってきた。国鉄全盛期の北陸線を支え、松任のにぎわいの中心としても親しまれた車両所が89年の歴史に幕を下ろす。

  ●一家3人勤務の竹林さん「地域の誇り、再生願う」

 「家族の思い出がたくさん詰まった工場や。本当にさみしくなるね」。父と姉、弟の家族3人が松任本所に勤務した竹林光外支(みつとし)さん(74)=同市徳丸町=はしみじみと語った。

 父と弟は定年まで塗装業務をこなし、姉は工場の診療所で看護師として働いた。竹林さんが子どもの頃は敷地内にあった大浴場へ家族で通い、母に頼まれた食品などのお使いは物資部に行って買った。

 「食堂での映画鑑賞会で見た『力道山物語』は今でもはっきり覚えています」と竹林さん。竹林さん一家のように松任本所に代々勤める家は多く、地域の誇りだったという。

 松任本所の跡地活用は決まっておらず、市は地元団体による検討委員会を設置し、JR西日本と協議を進めることにしている。竹林さんは「松任の顔といえる一等地であり、地元に活気を生む場所として再生してほしい」と願った。

  ●従業員は白山、金沢総合車両所に転勤

 JR西によると、松任本所の従業員は、北陸新幹線白山総合車両所や日常検査を行う金沢総合車両所(金沢市乙丸町)に転勤する。

 新幹線延伸後、JR北陸線金沢以西の経営はIRいしかわ鉄道が引き継ぐ。IRの車両は日常点検が金沢総合車両所、大規模点検がJR西の吹田工場(大阪府)でそれぞれ行われる。

© 株式会社北國新聞社