平野紫耀&神宮寺勇太&岸優太、1stシングルで歌う6つの“愛” Number_i『GOAT』全曲解説

Number_iが、3月6日に1stシングル『GOAT』をリリースした。「TOBE OFFICIAL STORE」にてCDパッケージとして販売されているほか、収録されている6曲すべてが各ストリーミングサービスで配信されている。

一作目ということで、グループとしての方向性や今後への期待を描きつつも、聴き手に寄り添う部分があると全曲を聴いて感じた。以前、平野紫耀が「音楽で幸せにしたいっていう気持ちが強い」と話していたこともあったが、何気ない日常のなかで彼らが近くにいることを感じられるように、曲を通してそばにいられるように――という想いも込められているのかもしれない。そして、どの曲でも“愛”もしくは“love”といった言葉が登場し、“さまざまな形での愛”が歌われているのも、Number_iというグループ名を掲げている彼ららしいと思う。全6曲に彼らは何を込め、歌にしたのか。全曲解説を通して、ひとつずつ紐解いていきたい。

■「GOAT」
1月1日にリリースされたデビュー曲。年が明けて、この曲を最初に聴いた時の衝撃はいまだに覚えている。時間にしてわずか2分38秒。コンパクトなショートチューンだが、目まぐるしく変化するビートやラップが、一度聴いただけでも強烈なインパクトを残す。岸優太が「クレイジーなキャラクターを演じた」と話していたように、それぞれが違う役になりきってレコーディングに臨んだのだろう、三者三様のボーカルは新鮮な聴き応えがある。尖ったサウンド、加えて歌詞からも自分たちが〈時代を背負う〉という、決意を歌った一曲だ。

■「Blow Your Cover」
決意の歌「GOAT」のあとに続くのが「Blow Your Cover」。デビュー曲の次という大事なポジションを担っており、「GOAT」とはまったくテイストの異なるミドルチューンだ。タイトルは訳すと“あなたの正体を暴く”という意味。意中の相手のことをもっと知りたいと思いながらも、近づくことに躊躇う切なさや儚さが、3人の息成分多めのウィスパーな声で表現されている。リキュールの甘い香りが漂うように、時折ドキッとしてしまうフレーズも散りばめられた大人な恋の楽曲で、知らなかった彼らのまた新しい一面が見えた気がする。

■「Is it me?」
まず、冒頭の岸の歌声に惹きつけられる。そして、〈Who’s that in your head?〉(あなたの頭のなかにいるのは誰?)〈Is it me?〉(それは僕?)という、燃え上がる恋を歌った情熱的なナンバー。全体を通してファンクなサウンド感と、どこか懐かしさも感じさせるようなキャッチーなメロディで、自然と身も心も踊らされる。サビは1番が岸、2番が神宮寺勇太、ラストは平野がメインで歌唱する構成で、それぞれの歌い方の違いを楽しめるのもこの曲の大きなポイントだろう。

■「Midnight City」
〈「然るべき時」っていつ?〉〈さすがに痛いほど分かってるつもりさ/どんだけ時間が大事かなんて〉――思い描く理想があっても、なかなかそこにたどりつけず、ただ時間だけが過ぎていく。嘆くような平野のボーカルから、そんな虚しさを感じることがあるのは自分だけではないのだろうと気づかされる。続く〈あぁこの街で/何回も夢を見て/だけど何回も見失ってほら〉という神宮寺のパート、1番サビ後の岸のフェイクも切なさを誘う。そこから、〈今は不毛に感じることばかりでも/無駄じゃないって〉と力のこもった神宮寺の低音ボイスや(先述のパートからの歌声の変化が素晴らしい)、サビの〈Gonna be alright〉=「なんだって大丈夫」「何もかもうまくいく」という言葉からは、何があっても屈しない強さを感じる。不安と期待が綯い交ぜになった心情を歌で繊細に表現できるのも、きっと過去の時間があったからこそ。3人の歌声が100点で響く。

■「FUJI」
「GOAT」の系譜に連なるHIPHOPナンバー。雄叫びのような歪んだギターで始まり、繰り広げられる3人のマイクリレーが鮮烈だ。〈I Know 愛 Revolution〉というフレーズが登場するが、〈ただ君が応援にくるマジすごいこと〉の歌詞からもわかるように、この歌の“愛”とはファンとの愛を指すのだろう。日本一高い山の名前をタイトルに掲げながらも、〈てっぺんの景色低い富士山〉と歌うあたりに、彼らが目指す場所の高さが伝わってくる。先の見えない獣道だからこそ、思いがけない素敵な景色に出会えることもある。想像を超える未来を私たちに見せてくれるような、Number_iの今後への期待も感じられる楽曲である。

■「Rain or Shine」
「Blow Your Cover」と同じ布陣で制作されたR&B調の楽曲。「Rain or Shine」は“晴れでも雨でも”――つまり、“どんな状況でも”という意味を持つ。サビではもうひとつ〈当たり前〉と〈特別〉という対になる言葉が登場しており、〈当たり前の日々を共に〉〈特別な日々を一緒に〉と続くことからも、いつでもそばにいるというメッセージが込められているように思う。平野、神宮寺、岸の優しい歌も相まって、淡々とした曲調のなかでも、あたたかみを感じられるナンバーである。〈時代を背負う〉という「GOAT」で幕を開けたこのシングルは、ともに進んでいく人たちの“日々”になっていくという約束めいた歌で締めくくられるのだ。

(文=かなざわまゆ)

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