長瀬智也のリメイク版も懐かしい『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』は永遠のヤケクソ終活ロードムービー!超不器用な男たちが勇気をくれる名作

『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』© CINEPOOL/DREFA&TELLUX MÜNCHEN

永遠のロードムービー『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』

『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』と聞いて、まずボブ・ディランの名曲「天国への扉」(1973年リリース)を想起する人と、1997年公開のドイツ映画を思い出す人に分かれるだろう。「天国への扉」はサム・ペキンパー監督の『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』(1973年)のために作られた曲で、ディランは同作に出演もしている。言わずもがな、数々のアーティストにカバーされてきた超・名曲だ。

そして映画『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』は、ここ日本にも非常にファンの多い名作。タランティーノ映画を思わせる黒服たちの冗長なやり取りから始まり、軽快なロックが流れるオープニングクレジットで主人公2人の両極端なキャラ紹介を済ませてしまうなど、サクサクと小気味よく展開していくので1時間半があっという間だ。

難病を告知され末期病棟に入院したマーティンとルディ。性格は凸凹な2人だが、「海を見たことがない」というルディに対しマーティンは「いま天国では海の壮大な美しさを語り合ってる」と言い、病院を抜け出してアグレッシブなヤケクソ道中へ旅立つことに。

いわゆる「死ぬまでにしたい云々」みたいな滑り出しで、まずは駐車場に停めてあったクラシックなベンツを拝借するが、そのトランクには大金が積んであり……。

長瀬智也が主演! 日本版リメイクも話題に

ドイツ映画の新たなムーブメントとして「ポスト・ニュー・ジャーマン・シネマ」なんて呼ばれた作品のひとつでもある本作。長瀬智也主演で『ヘブンズ・ドア』(2009年)としてリメイクもされたので、映画ファンでなくともうっすらと存在はご存知だろう(なぜか年の差男女コンビに改変されているが、ホストを演じるニノが良すぎるので必見)。

ノワール風味のアクションでテーマは重めだが、コメディ要素もふんだんで後味良く鑑賞することができるのも、本作が世界的にヒットした理由のひとつだろう。

主演の一人ティル・シュヴァイガーは本作で世界的な俳優となり、翌年にはチョウ・ユンファのハリウッド進出第1作『リプレイスメント・キラー』(1998年:アントワーン・フークアの監督デビュー作)に参加。その後もスタローン主演のレース映画『ドリヴン』(2001年)や、タランティーン監督の『イングロリアス・バスターズ』(2009年)などにメインキャストとして出演し、そのギラギラした存在感で広く知られている。

おマヌケなギャングを演じるモーリッツ・ブライブトロイは、最近でも『カット/オフ』(2018年)など本国ヒット作にも出演しているので顔を覚えている人も多いだろう。そしてなんといっても、ギャングのボスを演じるルトガー・ハウアー。当時かなりのスター俳優だったが「ギャラは気にしない」と言い、カメオ的にではあるが快く出演してくれたそうだ。

本作は終始シリアスになりすぎないよう、ときにベタベタな、ときにナンセンスなギャグで強引にサスペンスの隙間を埋めていく。ティル・シュヴァイガーの仏頂面ともう一人の主人公を演じるヤン・ヨーゼフ・リーファースのナヨさが好バランスで、ご都合的な展開もストレスを感じさせない。ちょっと心が弱っているときに観ると吹っ切れるというか、不思議と勇気を与えてくれる名作だ。

『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年3月放送

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