庄内海岸林で2023年に確認された松くい虫被害が過去最悪だったことを受け、ドローンを活用して防除剤を散布する手法を学ぶ研修会が14日、県内で初めて酒田市で開かれた。地上からの散布や無人ヘリを使った従来の方法よりも静音性に優れて効率も上がるという。庄内沿岸部では鶴岡市が24年度から導入する方針で、新たな松の保全方法として期待される。
研修会は防除対策の専門家でつくる日本松保護士会(沖浜宗彦会長)が主催し、同市の飯森山公園もくもく館で開かれた。同会によると、防除剤散布はこれまで、陸上からか、無人ヘリを使って行われてきた。ドローンによる薬剤散布は茨城県で20~22年度に実証事業が行われ、景勝地・三保松原(静岡県)で実際に使用した例もある。
同会の斎藤次男参与が講師を務めた。ドローンは無人ヘリよりも静かで小回りが利き、市街地に近接する場所でも使いやすいこと、陸上での作業に比べて松の上部まで広範囲に散布できることなどを説明。実際に散布で使うことが想定される農業用ドローンのデモ飛行も行われた。
県内の松保護士や東北森林管理局庄内森林管理署、県庄内総合支庁、沿岸3市町の担当者ら約40人が参加した。
24年度の導入を予定している鶴岡市は市議会3月定例会に散布委託料20万円を含む一般会計当初予算案を提出している。同市農山漁村振興課の富樫雅史技師は「安全性も含めて地域に説明していきたい」と語った。
松くい虫による被害は、樹皮を食べる「マツノマダラカミキリ」に寄生する「マツノザイセンチュウ」(線虫)が木の中に入り、増殖して発生する。県と庄内森林管理署の集計によると2023年の被害本数は国有林と民有林で計12万9035本、体積換算で5万5644立方メートルで本数、体積とも過去最悪だった。